相続人が行方不明!遺産分割の進め方|不在者財産管理人の選任

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相続人が行方不明のとき

「母親の遺産分割をしたいが、兄弟の中で長男だけが何年も前に家出したきり音信不通…。」
「父親が遺言書で隠し子を認知したため、その人も含めて遺産分割協議をしなければならないが、その人の行方を知らない…。」

このように、遺産相続において、相続人にあたる人が行方不明であるケースがあります。
一部の相続人が行方不明だと、本人の意思を確かめようがないため、その他の相続人の相続も滞ってしまい、困りますよね。

本記事では、相続人が行方不明のときに、その他の相続人が遺産分割をどのように進めればよいのか、順を追って説明します。

1.遺産分割協議は全員が揃わないと行えない

前提として、遺産分割協議は全員が揃わないと行うことができません。
一部の相続人が欠けた状態で協議を行っても、その内容は無効になってしまいます。

そのため、遺産分割協議に入る前に、まずは誰が相続人になるのかを厳密に確認しておく必要があります。
いわゆる「相続人調査」ですが、この段階については以下の記事で詳しく解説しています。

「相続人調査」とは?相続人調査はなぜ必要なのか、どのような手続きを行うのか、相続人調査をやらないとどのようなことが起…[続きを読む]

それでは、相続人調査で判明した相続人のうち、一部の人が行方不明のときはどうしたらよいのでしょうか。

前述の通り、遺産分割協議は一部の人のみでは行えません。
相続人が行方不明だからといって、他の相続人たちがその人の相続分まで勝手に分け合うというようなことはできないのです。

したがって、相続人が行方不明のときは、以下の2ステップを踏むことになるでしょう。

【ステップ1】あらゆる手段を尽くして居場所を調査する

どうしても居場所がわからない・連絡がつかない場合の対処法として、
【ステップ2】不在者財産管理人の選任 または 【ステップ2の例外】失踪宣告

以下で順にご説明します。

【ステップ1】居場所を調査する

数日や数週間居場所が見つからない・音沙汰がないというだけでは、行方不明とまでは言えません。
まずはできる限り行方不明の相続人の居場所を突き止める努力をする必要があります。

居場所の調査

行方不明者の本籍地の市町村役場で、戸籍の附票を発行してもらいます。
戸籍の附票には、本人の本籍地と住所地が記載されていますので、手紙を出したり、家を訪問したりできるでしょう。

しかし、手紙を出しても返事が来ない、住所地には現在別の人が住んでいて本人の行方がわからないなどの可能性もあります。
戸籍の附票では解決できなかったときや、あるいは行方不明者の居場所の検討すら全くつかないときは、その他の手段を講じて探してみます。

探偵に依頼するのは高額な費用がかかりますし、警察は事件性がないと捜索してくれません。
基本的に他の相続人たちが自力で調査することになりますが、現実的にはあまり見つかる可能性は高くないでしょう。

昨今はSNSが普及しているので、FacebookやTwitter、Instagram内でアカウントを検索して特定したり、SNS上で呼びかけたりする方法もありますが、相手の顔が見えない・わからない分、虚偽の可能性もあるので、十分注意してください。

どうしても見つからないときには

どうしても行方不明者の相続人を見つけられない場合には、次にご説明する不在者財産管理人の選任を行うことになります。

※7年以上行方不明の場合には、失踪宣告という手があります(後述)。

【ステップ2】不在者財産管理人の選任

不在者財産管理人とは

不在者財産管理人とは、今回のように遺産分割協議で不在者がいる場合に、不在者の代理人として財産の保存や管理をする人のことです(民法25条)。

他の相続人にとっては、行方不明者がいることで遺産分割協議が始められなかったところを、不在者財産管理人を選任することで、ようやく始めることができるようになるのです。

なお、不在者財産管理人が遺産分割協議を行うためには、家庭裁判所の許可が必要になります(民法28条)。この際、遺産分割協議案を提出するのが通常です。

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不在者財産管理人を選任するには

選任の大まかな流れ

不在者財産管理人を選任する手続きは、概ね以下のような流れになります。

  1. 申立人が必要書類(後述)を集める
  2. 行方不明者の本来の住所地や居住地を管轄する家庭裁判所に提出し、選任の請求の申し立てを行う
  3. 家庭裁判所により審判を受ける

なお、選任される不在者財産管理人は候補者を推薦できます。
推薦できる候補者は、相続に利害関係のない被相続人の親族や、弁護士や司法書士などの専門家です。

条件

家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらうためには、2つほど条件もあります。

①一定期間不在(行方不明)であること

まず、不在者にあたる人が、一定期間、行方不明であることが必要です。
「一定期間」について、どのくらい音信不通であれば行方不明とみなしてよいかは明確には定められておらず、行方不明になった経緯・状況や家庭裁判所の判断によります。

少なくとも、数日や数週間連絡がつかないだけでは不在者とまではいえず、不在者財産管理人は選任してもらえません。
「あまり長期間待つのも…。」という場合は弁護士に相談してみましょう。

②所定の人が申し立てること

また、選任の請求については、利害関係者もしくは検察が申立人になる必要があります。
利害関係者とは、共同相続人や、行方不明者の配偶者・債権者などです。

申立て時の必要書類

申立ての時に必要な書類は以下のとおりです。

  • 申立て書
  • 行方不明者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 行方不明者の戸籍の附票
  • 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
  • 不在の事実を証する資料
  • 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
  • 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)

不在者財産管理人を選任した後の遺産分割

行方不明者の相続分は、原則、法定相続分を下回ってはいけない

不在者財産管理人を立てたことで晴れて遺産分割協議できるようになりますが、その際、原則として行方不明者の相続分を法定相続分より下回らせることはできません
行方不明者の利益を考慮してのことです。

たとえば被相続人の妻と、その息子2人の計3人が相続人で、長男が行方不明になり、不在者財産管理人を立てたとします。
このとき、「あんな親不孝な長男の相続分はほんの少しだけにして、妻と次男でほとんど半分こしてしまおう」というようなことは認めらないということです。

帰来時弁済型(きらいじべんさいがた)遺産分割の可能性も

また、行方不明者が後から帰ってくる可能性が低い場合は、「帰来時弁済型遺産分割」ができる可能性があります。

帰来者弁済型遺産分割とは、遺産分割の段階では行方不明者に財産を与えず、行方不明者が実際に帰ってきた場合に、他の相続人が過度に受け取った分を本人に返すという方法です。

帰来者弁済型遺産分割をする場合、以下のような要件を満たす必要があるといわれています。

  • 行方不明者が帰ってくる可能性が低い
  • 行方不明者が帰ってきたときに他の相続人が行方不明者に代償金を支払うだけの経済力がある
  • 行方不明者に直系卑属(子など)がいない

これらは、不在者財産管理人が遺産分割を行うことについて家庭裁判所の許可を得る際に、あわせて事情を説明し、許可を得られれば、帰来者弁済型遺産分割をすることができます。

【ステップ2の例外】失踪宣告(7年以上行方不明のときのみ)

一方、相続人が行方不明になってから7年以上経過している場合は、もはや失踪宣告をしてしまったほうがよいでしょう。

失踪宣告とは、あまりに長期間生死が分からない場合、その人の関係者が不利益を被ってしまうことから、遺体等がなくても法律上は死亡したものとみなす制度です(民法30条1項)。

厳密には、例えば海難事故などに遭った方の場合は1年で失踪宣告できます(民法30条2項)。

失踪宣告を出してもらうことで、行方不明者の相続人を相続人から正式に外し、その他の相続人たちで遺産分割することができます。
ただし、失踪宣告が出るとその人が亡くなったとみなされる以上、その人の相続も発生するため、「数次相続」等の状況になる可能性もある点にご注意ください。

被相続人の死亡による相続に関して遺産分割協議を行っている最中に、相続人の1人が死亡してしまった場合、その相続人につい…[続きを読む]

失踪宣告の流れ

失踪宣告の流れも、不在者財産管理人の選任と同様です。

  1. 申立人が必要書類(後述)を集める
  2. 行方不明者の本来の住所地や居住地を管轄する家庭裁判所に提出し、失踪宣告の申し立てを行う
  3. 家庭裁判所により審判を受ける

なお、行方不明者の住所地や居住地が分からない場合は、東京家庭裁判所に申し立てることになります。

必要書類

失踪宣告を申し立てるときの必要書類は以下のとおりです。

  • 家事審判申立書
  • 行方不明者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 行方不明者の戸籍の附票
  • 失踪を証する資料
  • 申立人の利害関係を証する資料

失踪者が後から見つかったら

稀に、7年以上行方不明で失踪宣告を受けたのに、後からふらっと失踪者が見つかることもあります。
失踪者が見つかった場合でも、当然に失踪宣告が無効になるわけではありませんが、失踪していた本人や利害関係人の請求があれば、家庭裁判所は失踪宣告を取り消します。

しかし、失踪宣告が取り消された場合でも、失踪者が生きていたことを知らないでした相続財産の処分は有効です。

2.行方不明者がいて相続税申告が間に合わないときは?

最後にご注意いただきたいのが、相続税申告を相続発生から10ヶ月以内に行わなくてはならない点です。

行方不明の相続人を探しても見つからず、不在者財産管理人の選任または失踪宣告の申し立てをして、審判を待ち、それからやっと遺産分割協議を始められたとします。
これでは、10ヶ月という期限には到底間に合わない、という場合も多いでしょう。

しかし、10ヶ月の相続税申告の期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税がかかってしまうなど、相続人全員が大きな不利益を被ってしまいます。

そのため、行方不明者がいて申告期限に間に合わない場合は、とりあえず法定相続分で計算して申告しましょう。
後日、不在者財産管理人を選任したり、行方不明者が見つかった場合は、更正の請求や修正申告を行います。

申告期限に間に合わないと受けられない特例

また、相続税については、配偶者控除や小規模宅地などの評価減といった相続税の節税にもなる特例が複数用意されていますが、これらは原則としては相続税の申告期限内に遺産分割が終了していないと適用されないことになっています。

遺産分割は未了だけどこれらの特例は受けたい、という場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税申告の際に提出しましょう。
この書類の中で、未分割の遺産について、なぜ分割が終わっていないかという事情や、今後の見込みなどを記載して提出することで、3年以内に遺産分割を完了させることで特例が受けられるようになります。

3.まとめ

本記事では、相続人の中に行方不明者がいる場合、どのように遺産分割を進めればよいかを解説しました。

行方不明者の戸籍の附票を取得して居場所を突き止めるなど、まずは他の相続人たちの努力が必要ですが、どうしても連絡がとれないという場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てましょう。
また、行方不明になってから7年以上経過するような場合には、失踪宣告の対象になる可能性があります。

行方不明の相続人がいると、遺産分割協議そのものが停滞してしまい、他の相続人の方にとっては非常に大変かと思います。
しかし、相続税申告など期限が設けられている相続手続きもありますから、ただ見つかるのを待ったり放置したりするのではなく、できるだけ積極的な行動が望まれます。

もし、「次は何をしたらよいかわからない」「自分だけでは不安だ」という場合には、ぜひ弁護士にご相談だけでもされてみることをおすすめします

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