死後認知の請求方法や時効、遺産分割の方法について

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婚姻していない男女の間に生まれた子どもは、そのままでは父親との間に法律上の親子関係を認めることができません。

法的な親子関係がなければ、養育費の請求など、子として当然に認められる権利も行使できません。そこで、子の側から親子関係を認めるよう父親に請求できる制度が認知です。

ところが、事案によっては、子が認知を求めようとしたら、既に父親が死亡していたというケースがあります。その場合に利用できるのが死後認知の制度です。

この記事では、死後認知について基礎的な知識を解説します。

1.死後認知ってどんなもの?

1-1.認知とは

民法上の親子関係のうち、母子関係は分娩の事実によって当然に成立すると理解されていますが(※)、父子関係は、当然、これと同じ扱いができませんから、父子の親子関係を認めるための何らかの法制度が必要となります。

最高裁昭和37年4月27日判決

そのひとつが、婚姻中の妻が懐胎した子を夫の子と推定することで父子関係の成立を認める嫡出推定制度です(民法772条)。

しかし、嫡出推定制度だけでは、婚姻していない男女の子は、父子関係を成立させることができません。

そこで、このような場合、父親のほうから自分の子どもと認めて父子関係を成立させたり、逆に子のほうから父親に対して父子関係を認めて父子関係を成立させるよう求めることが認められています。それが「認知」制度です。

認知には、父親のほうから子を認知する「任意認知」(779条)と、子のほうから父親に認知を求める「強制認知」(787条)があります。強制認知は裁判所に提訴して行うので、「裁判認知」とも呼ばれます。

1-2.死後認知とは

強制認知は、父の死亡後でも、死亡の日から3年以内である限り、裁判所に訴えることが認められています(787条但書)。これが「死後認知」です。

2.死後認知のやり方は?

死後認知の訴えは、子の住所地または父の最後の住所地の家庭裁判所に対して行います(人事訴訟法4条1項)。

本来、被告であるべき父は死亡しているので、これに代わり、検察官が被告となります(人事訴訟法42条1項)。

ただし、父の妻子など相続人がいる場合は、死後認知により相続人が増加する可能性があるなど、これらの者が死後認知訴訟の帰趨に大きな利害関係を有しているため、補助参加の機会を与えるために、裁判所から死後認知訴訟が起きていることを通知することとなっています(人事訴訟法28条、人事訴訟規則16条別表六)。

強制認知の訴えは、他の家事事件と同様に、調停前置主義がとられており、調停を申し立てることなく、いきなり訴えを提起しても、裁判所の職権で調停に付されることになります(家事事件手続法257条1項、2項本文)。

しかし、死後認知の場合は、父は死亡しており、検察官と話し合いをする余地はありませんから、調停に付することは相当でないもの(家事事件手続法257条2項但書)と判断され、調停を行う必要はないとするのが判例です(※)。

最高裁昭和36年6月20日判決

3.死後認知に必要な証拠って何がある?

死後認知が認められるためには、父子の血縁関係を立証しなくてはなりません。

現在では、DNA鑑定が利用でき、死亡した父の遺髪・遺骨を鑑定資料としたり、父の実子など親族のDNAと比較することで、死後認知の場面でも、生物学的な血縁関係を立証することが容易となりました。

しかし、故人の遺族がDNA鑑定に反対し、遺髪・遺骨の提出や、採血などによる鑑定資料の提出に協力しない場合が多々あります。

被疑者への犯罪捜査と異なり、DNA鑑定への協力を強制することはできませんから、このような場合は、DNA鑑定以外の証拠をもって血縁関係を立証するしかありません。

その場合は、次のような諸事情が考慮されることになります。

3-1.子の誕生日から逆算した懐胎可能期間中の父母の性交渉の可能性

例えば、出産日から逆算した通常の懐胎可能期間中は、父は海外に赴任しており、帰国した事実はなく、母が出国した事実もないという場合は、父子関係は否定に傾きます。

3-2.血液型の一致

例えば、父母がA型で、子がB型の場合は父子関係は否定に傾きます。

3-3.顔の容貌やその他の身体的特徴の一致

目鼻立ちや顔の骨格、耳垢のタイプ、指紋の形、手足の各指の長短など、生物として血縁を認める特徴の有無を判断資料とします。

3-4.父母及び子の交流関係

例えば、子の授業参観や運動会などに積極的に参加してきたり、冠婚葬祭などの親戚の集まりに子を参加させたりといった交流があるほど、父子関係は肯定に傾きます。

なお、父子関係を立証する責任は、原告である子の側にありますが、上記の諸要素を総合考慮したうえで、父子関係があっても矛盾しないと判断される場合には、原告の立証は一応、尽くされたと評価し、逆に父子関係を否定する側に反証を要求する運用がなされています(※)。

最高裁昭和31年9月13日判決

4.死後認知に時効ってあるの?

死後認知の提訴期間は、父の死後3年間と決められています(民法787条但書)。

しかし、これを厳格に貫くと、父の死を知ることができなかった子を救済する途が閉ざされてしまいます。

そこで、判例では、「父の死亡が客観的に明らかになった日から3年」と解釈して、子の保護を図っています(※)。

最高裁昭和57年3月19日判決

なお、被告である検察官は、過去の事実など知りませんから、死後認知の請求それ事態は棄却を主張して争うものの、原告である子が主張する事実ついては、「不知」つまり、知らないという答弁しかしません。実際に父子関係を否定して激しく争うのは、補助参加してきた遺族です。

5.死後認知が認められた場合の遺産分割は?

認知が認められると、子の出生時にさかのぼって父子関係が発生しますが(民法784条本文)、ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできないと定められています(民法784条但書)。

これは、既存の法律関係の安定を保護することが理由ですが、死後認知が認められたときに、既に父の遺産分割が終了している場合に、子が何らの相続もできないとするならば、あまりに子の保護に欠けます。

そこで、相続の場合には特則が定められています。この場合、遺産分割のやり直しを求めることはできませんが、認知された子は、他の共同相続人に対し、相続分に相当する金銭を請求できるものとされています(民法910条)。

5-1.被相続人の兄弟姉妹が相続人で死後認知が認められた場合

また、父が死亡して、その唯一の法定相続人であった弟が相続したが、その後、子の死後認知が認められたという場合、第1順位の血族相続人である子の登場によって、後順位の血族相続人にすぎない弟は相続権を失います。

この場合は、そもそも弟は相続人ではなかったのであり、遺産の取り戻しを認めないと、死後認知という制度を認めて子の保護を図った意味がありません。

そこで、この場合は、民法784条但書の適用も、910条の適用も認めるべきではなく、相続人ではなかった無権利者が遺産を取得している場合として、子が遺産を取り戻すことを認めるべきだが、その場合に子が行使する権利は相続回復請求権(民法884条)にあたると理解する学説が有力です(※)。

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※島津一郎他編「基本法コンメンタール相続(第5版)」(日本評論社)103頁

6.まとめ

死後認知を認めてもらうには、父子関係を立証する必要があり、たいていの場合、父の遺族が補助参加して徹底的に争うことになりますから、弁護士に依頼して対応してもらうことが必須の事件と言えます。親族問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

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