数次相続の仕組みと法定相続分|遺産分割協議中に相続人が死亡したら
被相続人の死亡による相続に関して遺産分割協議を行っている最中に、相続人の1人が死亡してしまうと、その相続人についての…[続きを読む]
被相続人の遺産分割協議が終わらぬ間に、相続人まで亡くなってしまい、相続が重なってしまう「数次相続」が発生することがあります。
そこで今回は、数次相続の遺産分割協議書の書き方について、ひな形つきで紹介します。
目次
数次相続とは、被相続人の遺産分割協議が完了する前に(一次相続)相続人が亡くなることで新たな相続が発生し(二次相続)、相続が2つ以上重なってしまっている状態を指します。
例えば、下のようなケースで、祖父が亡くなると、相続人となるのは父・叔母になります(一次相続)。次に遺産分割協議が終了しないうちに相続人である父が亡くなると(二次相続)、その相続人は母と子になるため、一次相続にあたる祖父の遺産分割協議には、叔母と共に、父の相続人として母と子が遺産分割協議に参加することになります。
一方で、二次相続の遺産分割協議は、通常通り、母と子が行うことになります。
上記の通り、一次相続の遺産分割協議には、遺産分割協議の最中に亡くなった方の相続人が参加することになります。
この時、一次相続の遺産分割協議書をどのように記載するのかが問題となります。
遺産分割協議書に決まった書式はありません。したがって、数次相続の遺産分割協議書にも定型の書式があるわけではありません。
ただし、被相続人と相続人の特定や、どの遺産を誰が取得することになったのかが、明らかにならなければなりません。
祖父山田太郎が亡くなり、遺産分割協議を経ないうちに、共同相続人の1人である山田太郎の長男山田一郎が亡くなってしまいました。そこで一次相続の遺産分割協議には、山田太郎の長女である木村花江と、山田一郎の相続人である妻山田君子と山田真一が出席して山田太郎の遺産分割について合意をすることができました。
最初に、この場合の一次相続における遺産分割協議書の書き方のサンプルを見ておきましょう。
遺産分割協議書 被相続人 山田太郎 (昭和×年×月×日生まれ) 相続人兼被相続人 山田一郎
生年月日 昭和×年×月×日 死亡年月日 令和×年×月×日 本籍地 神奈川県××市××丁目× 最後の住所地 東京都××区××丁目×番地× 被相続人山田太郎は令和×年×月×日に逝去し、その相続人である長男山田一郎は令和×年×月×日に逝去した。よって被相続人山田太郎の長女木村花江(以下「甲」という。)、被相続人の長男山田一郎の相続人山田君江(長男の妻)(以下「乙」という。)、同山田真一(長男の子)(以下「丙」という。)、の全員で遺産分割協議を行い、被相続人山田太郎の遺産につき、以下の通り分割することに合意した。
記 1.甲は、以下の遺産を取得する (1)土地 所在:東京都××区××丁目 (2)建物 所在:東京都××区××丁目 2.乙は、以下の遺産を取得する 預貯金 ○○銀行○○支店 3.丙は、以下の遺産を取得する 預貯金 △△銀行△△支店 上記協議の成立を証するために本書面×通を作成し、各署名捺印して各自1通保管する。 作成年月日 相続人(長女) 木村花江 (署名) 相続人兼相続人山田一郎の相続人(長男の妻)山田君子 (署名) 相続人兼相続人山田一郎の相続人(長男の子)山田真一 (署名) |
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数次相続の遺産分割協議書で気をつけたいポイントは、赤の点線で囲っている箇所です。
以下でそれぞれご説明します。
上記記載例を基に、数次相続の遺産分割協議書の書き方で注意すべきポイントを挙げてみます。
数次相続の遺産分割協議をまとめて遺産分割協議書に記載すべき内容は、次の通りです。
「二次相続の被相続人の情報」以外は、一般の遺産分割協議書とまったく変わりません。
まず、一次相続の被相続人の情報の下に、二次相続の被相続人の情報を記載します(三次相続以降もあればそれも記載します)。
二次相続の被相続人の肩書きは「相続人兼被相続人」となります。上記の事例では、「相続人兼被相続人 山田一郎」です。
被相続人の情報として遺産分割協議書に必要なものは、名前、生年月日、死亡年月日、本籍地、最後の住所地などです。
また、署名押印欄の相続人欄の肩書きも、相続人の立場が重複する場合・しない場合で異なります。
「一次相続の相続人としての地位」と「二次相続の相続人としての地位」が重複する場合は、「相続人兼△△△△の相続人(続柄) 〇〇〇〇」(※△△△△は二次相続の被相続人の名前、〇〇〇〇は相続人自身の名前を自署します)と書きます。
上記の事例では、それぞれ次の通りとなります。
相続が重複していない方については、そのまま「相続人(続柄) 〇〇〇〇(○○○○は相続人自身の名前を自署)」で問題ありません。
大事なのは、誰の、どういう立場の相続人なのかを明確にするということです。
数次相続であっても、遺産分割協議書の提出先は通常の相続の遺産分割協議書と変わりありません。
主な提出先は、以下の通りです。
数次相続の遺産分割協議書であっても、一般の遺産分割協議書と同様に必要になるのは、遺産分割協議に参加し、遺産分割協議書に署名押印した相続人の印鑑証明書です。
遺産分割協議に必要になる印鑑証明書について詳しくは、「遺産分割協議書には印鑑証明書が必要?有効期限・取得手順を解説」をご一読ください。
本記事では、数次相続の遺産分割協議書作成についてみてきました。
相続が複数回重なると、遺産分割でどこから手をつけてよいのか混乱してしまうのではないでしょうか。
もし、遺産分割協議の段階で話し合いが難航しているようであれば、早いうちから弁護士に相談することをおすすめします。第三者として客観的に話し合いをまとめながら、遺産分割協議書の作成まで代行してくれます。
数次相続を放置しておくと、どんどん権利関係も複雑になってしまいますから、そうなる前に専門家に相談してみてください。