【図説】遺留分とは?遺留分の仕組みと割合を分かりやすく解説!
この記事では、遺留分について解説します。遺留分とは何か、だれにどのように認められる権利か、割合はどの程度かなどを図表…[続きを読む]
離婚後に再婚した場合に、前妻との間に子供がいると、相続の際に支障を来すことがあります。
前妻との子供は法律上も前夫が父親であり、相続権があるからです。再婚して新たな家族を築いている夫の相続が開始すると、ご家族にとって大きな問題になりかねません。
そこで、前妻の子に相続させない方法があるのかについて考えてみたいと思います。
離婚して婚姻関係が無くなれば、前妻も前夫も互いに法律上赤の他人となり、どちらが亡くなっても相続することはありません。
他方、前夫が離婚後再婚し、再婚相手との間に子供が生まれていたとしても、前妻との子は、離婚後も法律上の親子であることに変わりありません。
夫が亡くなれば、前妻と子供は、再婚した妻との間に生まれた子供と同じ第1順位の相続人となります。
前妻の子の法定相続分も、再婚した妻との間に生まれた子供と同じです。
例えば、夫の相続に際して、再婚した妻との間に子供が2人、前妻との子供が2人いれば、相続人の法定相続分は、再婚した妻が2分の1、残った2分の1を子供4人で均等に分割することになり、子供1人当たり8分の1ずつとなります。
ただし、法定相続分はあくまで参考であり、実際の遺言書や遺産分割協議では、法定相続分とは異なる割合で遺産を分割することが可能です。
前妻の子は、前夫の正式な法定相続人となります。したがって、前夫の相続については、前妻の子にも当然遺留分が認められます。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に法律で最低限保証された遺産の取得割合です。
前夫の相続で遺産を相続させない方法を考える際には、この遺留分という権利が障害となり得ます。
では次に、早速夫の相続の際に、前妻の子に遺産を相続させない方法について考えてみましょう。
前妻の子であっても前夫の相続権を有しており、遺産分割協議に参加する権利があります。もし、前妻の子を外して遺産分割協議を行えば、無効になってしまいます。
そこで、前妻の子に遺産を遺さないような遺産分割の指定をした遺言書を作成してもらうと、遺産分割協議の必要がなくなります。このとき、前妻の子に遺留分の放棄をしてもらえれば、前妻の子に一切遺産を相続させないことができます。
遺留分は、相続開始前であっても放棄が可能です。ただし、遺留分の放棄は、あくまで前妻の子の意思にかかっており、前妻の子が遺留分を放棄するメリットはありません。遺留分相当の遺産は、前妻の子が相続することは、覚悟しておく必要があります。
夫が現在の妻やその子供たちに資産をできるだけ生前に贈与をすれば、相続開始時には、相続財産を減らすことができます。前妻の子がいくら相続権を主張しても、生前贈与後によって減った遺産を分割をするだけです。
ただし、相続開始から10年以内に行われた法定相続人に対する生前贈与は、遺留分の対象となります。生前贈与をした側と受けた側双方が、遺留分を侵害していることを知りながら贈与を行った場合には、期間にかかわらず遺留分の対象となってしまいます。
また、年間110万円を超える贈与をすると、超えた部分が贈与税の課税対象となってしまいます。
贈与は、贈与者と受贈者との契約で成立します。契約は口頭でも成立しますが、万一税務署が調査に入った際に、契約書があれば贈与の事実を客観的に証明することができます。
被保険者が死亡して支払われる保険金は、受取人固有の財産となり、相続の対象ではなく、原則として遺留分の対象とはなりません。
そこで、夫が生前に生命保険に入り、受取人を現在の妻やその子供たちにすることも1つの方法です。
ただし、受取人が手にする保険金の額に、他の相続人との間に生ずる不公平が著しいと考えられる特段の事情がある場合には、特別受益となり、遺留分の対象となる可能性があります。
遺贈や死因贈与を使って、前妻の子以外の相続人に遺産を遺す方法もあります。
遺贈は、遺言書に記載することでできますが、死因贈与は、生前贈与と同様に贈与する側と贈与を受ける側の契約が必要になります。
また、これら遺贈や死因贈与も、遺留分の対象となるため、前妻の子から遺留分侵害額請求を受ける可能性はあります。
最後に前妻の子に相続放棄をしてもらう方法があります。前妻の子が相続放棄をすれば、最初からその相続については相続人ではないとみなされ、遺産を受け取ることはできません(民法939条)。
ただし、相続放棄は、相続開始前にすることができず、また、あくまで前妻の子自身の意思で行わなければなりません。
また、相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に行わなければなりません(民法915条1項)。
ここまでいくつかの方法をご紹介しましたが、前妻の子にまったく遺産を相続させないことを実現するのは難しいと言わざるを得ません。前妻の子にも、遺留分が認められているからです。
そこで、最後に前妻の子とのトラブル回避のための遺留分対策をご紹介しておきます。
最後に、前妻の子と相続手続きをする際に、発生しやすいトラブルを
被相続人の遺言書がなければ、相続人による協議によって遺産を分割しなければなりません。しかし、前述した通り、相続人全員が参加しなければ、遺産分割協議は無効になってしまいます。
しかし、夫の相続に際して、前妻の子に連絡を取ろうとしても、連絡先が分からないことがあります。そうした場合には、次のプロセスで前妻の子の住所を知ることができます。
相続手続きをする際には、亡くなった夫の出生から死亡までの戸籍が必要になることがあります。その際に、前妻や前妻の子の戸籍を確認し、最新の戸籍まで遡れば、現在の本籍に辿り着くことができます。現在の本籍地で戸籍の附票を取得すれば、前妻の子の住所が記載されているはずです。
もし、前妻の子宛に相続についての手紙を送付しても音信不通の場合には、相続に強い弁護士に相談してみましょう。もちろんこうした手続きが煩わしい場合にも、弁護士に依頼すれば、代理してもらうことも可能です。
前妻の子と連絡が取れたとしても、面倒に巻き込まれたくないといった理由から、遺産分割協議などの相続手続きに非協力的なことがあります。また、前妻の子が未成年者の場合には、前妻が法定代理人となりますが、前妻が相続手続きに非協力的なこともあります。
こうした場合には、相続に強い弁護士に依頼すると、交渉を代理してもらうこともできます。
前妻の子に相続させたくないからといって、遺産分割協議の際に、一部の遺産を隠したり、遺産の金額を低めに改竄することは現に慎んだほうがいいでしょう。
そうした行為が発覚すれば、隠された遺産や、遺産分割協議にかけられなかった金額について再度遺産分割協議をしなければなりません。
また、こうした行為が原因で不信感を持たれてしまえば、遺産分割調停に発展し兼ねません。
ここまでご紹介した通り、前妻の子がいる場合には、相続手続きの際にトラブルになる可能性があります。
相続に強い弁護士に依頼すれば、事前に対策を立て、交渉の代理をしてもらうことができます。
もし、前妻の子がおり、相続に不安を抱えている方がいらっしゃいましたら、早めに相談することをお勧めします。