相続人に未成年者がいたら特別代理人の選任が必要な場合も

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相続では、相続人が成年に達しているケースが多くなりますが、交通事故など不慮の事故で親が亡くなった場合には、未成年の子供が相続人となるケースがあります。

その他にも、相続人となるべき親がすでに亡くなっており、代襲相続によって、その子供が相続人となるケースもあります。

このように法定相続人に未成年者が含まれているケースというのは、比較的よく起こる事例といえます。この場合、問題となるのが、未成年者は法律行為ができないことです。

ここでは、相続人が未成年者であった場合になぜ特別代理人が必要なのか、特別代理人の職務、選任の申立てなどについてご説明いたします。

1.相続では未成年者に法定代理人が必要に

未成年者は、民法第5条で規定されているとおり、通常1人では法律行為ができません。

1-1.未成年者が法律行為を行うには法定代理人が必要

民法第5条
1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

行為者が意図した法律効果(権利関係の変動)の発生を目的とした行為のことを、法律行為と呼んでいます。売買契約などがそれに当たります。

未成年者が法律行為をするためには、その保護者である法定代理人の同意を必要とします

また、同意なく未成年者が行った行為は、取り消すことができます。未成年者はまだ判断能力が不十分であるため、その行為に一定の制限をかけて未成年者も守る必要があるからです。

ただし、贈与を受けたり、債務を免除されたりなど、未成年者にとって損にならない行為は、法定代理人の同意を必要としません。

また、未成年者であっても結婚をしている場合には成年に達しているとみなされ、代理人は不要になります(※)。

※ ただし、2022年4月1日の民法改正の施行によって、成人となる年齢が18歳に引き下げられるため、この制度も削除されることになります。

1-2.相続でも未成年者には法定代理人が必要になる

さて、本題ですが、遺産分割によって財産を取得することや相続放棄も法律行為の一種です。

遺産分割協議は、相続人の間で進められますが、判断能力が不十分な未成年者では、不利な内容で合意させられる可能性もあります。
また、相続すれば、被相続人が持っていた権利・義務のすべてを受けつぐことになり、借金などの負債を負うことになれば、相続放棄や限定承認などといった法律行為をしなければなりません。

このように、未成年者は、自分だけでは相続における法律行為を1人ですることができません。そこで、法定代理人が代理する必要があります。

2.相続では親が未成年者を代理できないことも

通常、未成年者の法定代理人は親権を持つ親になります。しかし、相続では、親権を持つ親であっても、子供を代理できないケースが出てきます。

2-1.親と未成年の子の利益が相反しないケース

相続において、親権者である親が問題なく子供の代理人となることができるケースは、親は相続人とならず、子供だけが相続人となる場合です。

例えば、子供が1人いる夫婦のうち、夫が事故で死亡したとします。その後、その夫の父親が死亡した場合、代襲相続によって、子供は祖父の相続人となりますが、妻は義理の父親の相続人とはなりません。この場合、祖父の相続については、妻が子供の代理人となることは、利益相反に該当しません。

2-2.親と未成年の子の利益が相反するケース

一方、相続で、親と子供の利益相反が問題になるのは、子供と親の両方が相続人である場合、もしくは、複数の子供が相続人である場合です。

未成年の子供1人と母親が相続人となるケース

上述したケースで、夫の相続については、妻と子供の両者が相続人となります。したがって、この妻と子は利益相反関係にあり、妻は子供の代理人と利益が相反します。

複数の未成年の子供と母親が相続人となるケース

また、この夫婦に未成年の子供2人がいて、母親と子供2人が夫の相続人となった場合、母親は、いずれの子供の代理人となることもできません。それぞれの子供と母親はお互いに利益相反関係にあるからです。

2-3.複数の未成年の子供の利益が相反するケース

親権者と未成年の子の利益が相反するケースでははく、相続人となる未成年の子供たちの間で利益が対立するケースもあります。

2-1.の夫の父親が亡くなったケースで、母親に複数の未成年の子がいたとします。母親は、夫の父親の相続人とはなりませんから、代襲相続人となる子供1人の代理人となることはできます。しかし、2人以上の子供の代理人となると、未成年の子供間で利益相反の問題が発生します。

3.未成年者と親権者の利益相反には特別代理人

では、相続で親と未成年の子が、利益が相反する状態になった場合は、どうすればいいでしょうか?

3-1.利益相反には特別代理人の選任申し立て

上述したように親権者である父母とその未成年の子との利益が対立する場合は、父母は子供の代理人になることができません。その子の代理人となる特別代理人を選ぶよう、子供の住所地のある家庭裁判所に申し立てる必要があります。

民法第826条
1 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

なお、相続における未成年者と親の利益相反について詳しくは、次の関連記事を是非ご一読ください。

「利益相反行為」とは、一方にとって利益となり、同時に他方にとっては不利益となる行為を指します。相続においては、親権者…[続きを読む]

3-2.相続における特別代理人の職務

特別代理人は、家庭裁判所の審判で決められた行為(書面に記載された行為)についてのみ代理権を行使することができます。
未成年者に代わって自由に遺産分割協議において交渉できるわけではなく、原則としては特別代理人選任の申立の際に提出された「遺産分割協議書案」に拘束されます

ただし、その遺産分割協議書案が未成年者にとって不利益となるものだった場合は、これに対応する善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)を負っていると解されています。すなわち、未成年者の権利を守るために、整然と主張する義務があります。

親族などを特別代理人に選任した後に、未成年者がその分割内容に納得できないとして、その親族に損害賠償請求をしたような事例もあります。

特別代理人は未成年者の権利を守るために重要な役割を果たす人ですから、相続に関する専門知識を有する弁護士を候補者として立てることをおすすめします。

法定相続人に未成年者がいて争いが起きそうな場合は、一度民法や相続に強い弁護士に相談してみると良いでしょう。

4.利益相反には特別代理人の選任申し立て

次に、どのように特別代理人の選任申立てをするのかを説明します。

特別代理人の選任は、管轄裁判所に申立書と添付書類を提出して行います。

4-1.特別代理人の要件

特別代理人とは、未成年者に代わって遺産分割協議に参加する代理人です。

特別代理人となるのに特別に資格はありませんが、子と利害関係のない者に限ります。子と利害関係がなければ、叔父や叔母など血縁関係者でも特別代理人となることができます。従って、子と立場を同じくする共同相続人以外の成人であれば特に制限はありません

ただし、親族が特別代理人となる場合は、代理する未成年者と親密な関係にあるため他の相続人と争いになるケースなど、場合によっては、弁護士などの専門家に依頼したほうがいいことがあります。

申立人は特別代理人にしたい候補者を予め擁立することができますが、あくまでも最終的に選任するのは家庭裁判所となります。未成年者との関係や利害関係の有無などを考慮して、適格性が判断されたうえで選任されます。

4-2.申立人

親権者以外にも利害関係人が申立てを行うことができます。

4-3.申立先

特別代理人の選任申立ての管轄は、子の住所地を管轄する家庭裁判所となります。

4-4.費用

  • 子1人につき収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手数枚

が必要となります。

4-5.提出書類

特別代理人選任審判申立書

以下の裁判所のHPからダウンロードすることができます。記入例も同ページにあるので、参考にしてください。

参考外部サイト:裁判所「特別代理人選任の申立書(遺産分割協議)

4-6.添付書類

親権者または成年後見人関係書類
  • 戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案など)
  • 利害関係人からの申立ての場合は、利害関係を証する資料
  • 被相続人の遺産を明らかにする資料
    (不動産登記簿謄本及び固定資産評価証明書、預金残高証明書)
子の関係書類
  • 住民票または戸籍附票、戸籍謄本(全部事項証明書)
特別代理人候補者の関係書類
  • その者の住民票または戸籍附票

遺産分割協議について特別代理人の選任の申立てを行う場合は、遺産分割協議書案を提出しなければなりません。このとき、未成年者に不利な遺産分割で、合理的な理由が明確でない場合は、特別代理人の選任が認められないことがあります。もし、遺産分割協議書案が未成年者に不利なものであるなら、遺産分割協議書案などにその理由も明確に記載しておくといいでしょう。

また、原則として、遺産分割協議書は、遺産分割協議書案に従って作成しなければなりません。実質的には、遺産分割を遺産分割協議書案提出までに済ませておかなければならないことになります。

4-7.遺産分割協議における特別代理人の役割

申立の後、裁判所での審査を経て、特別代理人の選任の審判がなされます。

特別代理人の選任が無事終了したら、特別代理人が遺産分割協議に参加し、遺産分割協議書に未成年者の代わりに署名押印をし、遺産分割は終了します。

なお、特別代理人が選任されると特別代理人選任審判書が交付されますが、その審判書は、遺産分割協議後に相続不動産の登記をする際に、添付する書類となります。

まとめ

今回は、相続における特別代理人について解説しました。

相続における遺産分割などで、未成年の子供と共に相続人となる場合は、特別代理人の選任が必要となります。特別代理人の選任を行わずした利益相反行為の効果は、子に帰属しないということになってしまいます。

もし、相続について不安のある方は、是非一度、相続に強い弁護士などの専門家にご相談ください。

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