親に遺言書を書いてもらうための王道テクニック

遺言書

 

遺産相続の際には、相続人の間で相続トラブルが起こることが多いです。これは、誰がどの遺産をもらうかという遺産分割協議において、意見が合わずにもめてしまうことが原因です。
そこで、予め遺言書によって、誰がどの遺産をもらうかを書いてもらっておけば、相続トラブルの大部分を回避することができます。

しかし、遺言を書いて欲しいというようなことは、たとえ相手が親であっても頼みにくいものですし、言っても聞いてくれない親もいます。
そこで、親などに遺言書を書いてもらうための方法をいくつかご紹介します。

なお、ここではあくまでも親に自由意思で遺言書を書いてもらうための、王道の方法を紹介しています。親に無理矢理、遺言書を書かせるのは禁物ですので、ご注意ください。

1.遺言書によって相続トラブルを避けられる

遺言書があると、効果的に相続トラブルを避けることができます。
遺産相続が起こるとき、トラブルが起こる原因の多くは遺産分割協議です。
遺産分割協議では、誰がどの遺産をもらうのかを話し合って決めなければなりませんが、このとき、相続人同士の意見が合わずにトラブルになることが多いのです。

たとえば、家を継ぐ長男は、自分が多くもらうべきだと言い張るかもしれません。長年親の介護をしてきた長女は、私こそが多くもらうべきだというかもしれません。
実家の不動産がある場合、長男は「家を守るべきだ」と言うかもしれませんが、家を出ている次男は「おいていても価値がないから、売却して現金で分けよう」というかもしれません。このように、遺産分割協議の場で相続トラブルが起こってしまったら、兄弟間でも骨肉の争いが繰り広げられて、もともと仲の良かった親族でも完全に縁が切れてしまうこともあります。

ここで、遺言書によって、はじめから誰がどの遺産を相続するのかや、遺産分割の方法を決めておけば、相続人らが遺産分割協議をする必要がなくなるので、相続トラブルを避けることができるのです。
たとえば、遺言者が、「実家の土地建物は長男に、投資目的で購入した不動産は次男に、その他の預貯金などのすべての財産は長女に相続させる」という遺言を残していて、それがだいたい公平な内容になっていたら、相続人らが遺産分割協議でトラブルになることは、通常ありません。

2.遺言書を書いてもらう方法

このように、遺産トラブルを避けるためにはとても効果的な遺言書ですが、被相続人である親などが、自分からは書いてくれないケースがあります。
親としては、いつかは書くべきだと思っていても、死ぬのはまだ遠い将来だから、今すぐには書かなくて良いと思っていることが多いです。

また、遺言書作成の手続き自体が面倒なので、先送りにしていることもあります。
しかし、どのような人でも、いつ何時何が起こってもおかしくないのですから、遺言書は早く作成してもらった方が安心です。

遺言書を書かない親に、早めに遺言書を書く気持ちになってもらう方法はないのでしょうか?
以下で、いくつかの方法をご紹介します。

2-1.遺言書がないと相続トラブルが起こることを説明する

まずは、親自身に、遺言書がないことのリスクを分かってもらうことが役立ちます。
遺言書を書かない親は、遺言書がないとどのような問題が起こるのかが実際にわかっていないことが多いです。

そこで、遺言書がない場合、具体的に子どもたちがどのような争いを繰り広げて、どのような悲惨な結果になる事例が多いのかについて、調べて親に説明しましょう。
遺産トラブルのケースを集めた本などを参考にして説明しても良いですし、ネットの情報などでもかまわないので、まずは遺産トラブルがあるということを親に分かってもらうことが大切です。

【参考】遺産相続トラブルが起こる9つの理由と対策方法

2-2.遺言書を書いて欲しいとストレートに依頼する

次に、子どもたちの立場から、ストレートに「遺言書を書いて欲しい」という希望を伝えることが役立つケースもあります。
遺言書を書かない親は、「遺言するかしないかなどは、自分の気持ち1つの問題であり、子どもたちはそのようなことには関心がない」と考えていることがあります。

子どもとしては、遺言というと死を連想させるので、何となく言い出しにくいということもあるでしょう。また、遺言書を書いて欲しいなどというと、遺産を狙っているように思われるのが嫌だと言うこともあります。
こうしたことから遺言や相続の問題は、普段の生活で話をしないことが多いので、お互いに気にはなっていても、親としては「気にしているのは自分だけ」だと思っていることがあるのです。

そこで、子どもの立場からも遺言がないことが気になっており、将来のために遺言書を作成してほしいという気持ちをはっきりと告げることにより、親もはじめて「子どもたちも気になっていたのか」ということがわかり、「それなら遺言書を作成しよう」、という気持ちになる事があります。

2-3.遺言書の作成手続きを手伝う

親が遺言書を作成しない場合、遺言書の作成手続きが面倒であると感じていたり、遺言書の作成方法がわからなかったりすることがあります。
遺言にはいくつかの種類があって、自筆証書遺言や公正証書遺言がよく利用されますが、そのうちどちらをどのように作って良いのかわからないケースも多いです。

そこで、子どもたちが遺言書の作成方法を調べて適切な方法を教えてあげて、作成を手伝ってあげるとスムーズに遺言書を作成できることがあります。
たとえば、公正証書遺言を作成するなら、遺言書の内容を考えて、公証人役場に申し込んで手続きをする必要がありますが、文案を一緒に考えてあげて、公証役場への申込をしてあげて、一緒に公証人役場に行ってあげるなどしたら、親も抵抗なく遺言書を作成出来ることが多いです。

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2-4.弁護士に相談に行く

親に遺言書を作成したもらいたい場合、弁護士に相談に行くことも効果的です。親が遺言書に関心を持っていても、実際には遺言書を書こうとしない場合、「専門家に一度話を聞いてみよう」と言って、法律事務所に相談の予約を入れます。

そこで、遺言書とはどのようなもので、作成するとどのようなメリットがあるのか、作成する方法などについて、弁護士からわかりやすく説明してもらいます。プロの口から説明を聞くことができれば、説明内容も非常にわかりやすく明確なので親も納得しやすいですし、子どもから直接遺言書作成を依頼されるよりも遺言書を作成しようかな、という気持ちになりやすいことがあります。
また、遺言書を作成することに決めたら、そのまま遺言書作成を弁護士に依頼することもできます。

2-5.自分も一緒に遺言書を書く

親に遺言書を書いて欲しいと言ったり、遺言書作成を手伝ってあげると言ったりしても、親が遺言書を書かないことがあります。「年寄り扱いするな」と言って怒り出す親もいるかもしれません。

このようなときには、「自分も一緒に遺言書を書く」と言ってみるのも1つの方法です。
遺言書は、年寄りだから書く、というものではありません。若い人でも遺言書を書いておいた方が何かと安心です。結婚して子どももいるような状態なら、生命保険に加入するのと同じように遺言書も書いておいた方が良いのです。

そこで、親に対し、子どもである自分も遺言書を作成するので、これを機会に一緒に遺言書を作成しようと言ってみましょう。
子どもが自分の分を作成するといっている場合には、親も「年寄り扱いされているから遺言書作成を促されている」とは感じにくいでしょう。
なんとなく「それなら一緒に作ってもいいかな」と考える親もいるはずです。
親のタイプによっては有効な方法ですし、自分の分の遺言書も作成出来るので一石二鳥の方法です。

2-6.親を驚かせる

親に遺言書を作成してもらうため、少し過激な方法をとる人がいます。いつまでも若い気持ちでいるために遺言書を書かない親を驚かせ、年をとったことを実感させて遺言書を書かせようとするのです。
そうすると、親は「自分が年をとったから変な音が聞こえるような気がするのだろうか?」などと考えることがあります。
また、知り合いや興信所などに依頼して、家の中をのぞいてもらって親に不信感を抱かせます。親が「誰かいるのではないか」と言ってきたら、やはり「誰もいないよ」と答えます。

このようにして、親が不安を感じたところに、「大丈夫?まだまだ元気だとは思うけれど、そろそろ遺言書でも書いておいたらどう?」などと言うと、親が年をとったことを実感して、遺言書を書こう、という気持ちになることがあるというのです。

少し過激な方法ですが、中にはこのような手段で親に遺言書を書いてもらう気持ちになってもらえるケースもあるので、場合によっては参考にしてみても良いでしょう。
ただし、あまりにも限度を超え過ぎて、親を怒らせないようにご注意ください。

3.遺言書を書いてもらう際の注意点

遺言書を書いてもらう際、注意点があります。
そもそも遺言するかしないか、どのような遺言書を作成するかの判断は、遺言者自身が行うべきものです。
無理矢理書かせた遺言書は無効ですし、親が遺言書を書く気持ちになったとしても、内容を無理矢理押しつけてはやはり無効になります。
遺言書を作成してもらう場合には、あくまで親自身が自然な流れで自然な気持ちで遺言書を作成出来るように、お手伝いをしてあげる、という気持ちですすめていくことが大切です。

なお、実際に遺言書を作成する際には、弁護士に相談することが非常に役立ちます。
弁護士に相談することによって遺言書作成をする気持ちになる事もありますし、それ以外のきっかけであっても、実際に遺言書を作成するためには弁護士の知恵を借りる方が、良い内容の遺言書を作成することが可能になります。
そこで、親が遺言書を作成してくれない悩みを抱えていたり、実際煮遺言書を作成しようとしていたりする場合には、一度相続問題に強い弁護士にアドバイスをもらうことをおすすめします。

まとめ

今回は、親が遺言書を書いてくれない場合に遺言書を書く気持ちになってもらう方法について解説しました。

遺言書があると、相続人らが遺産分割協議をしなくて良くなるので遺産トラブルを回避するために非常に有効ですが、親が自分から遺言書を書いてくれないことが多いです。このような場合、遺言書がなくて起こるトラブル事例を紹介したり、子どもとして遺言書を作成してほしい気持ちをストレートに伝えたり、弁護士に相談に行ったりすることが役立ちます。

遺言書作成を手伝ってあげたり、子どもが自分の遺言書を作成するので一緒に作ろう、と誘ったりする方法もあります。
遺言書を作成する際には、法律知識の豊富な弁護士の力を借りることが役立ちます。
今、親の遺言書の問題で悩みを抱えている方は、一度親も一緒に相続問題に強い弁護士に相談に行ってみると良いでしょう。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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