遺言執行者は何ができる?|民法改正で拡大した権限

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遺言執行者は被相続人の遺言内容を実現するための手続きを行う人です。
平成30年7月の民法改正により、この遺言執行者の権限がより明確化されました。

本記事では、遺言執行者はどんなことをできる権限を持っているのか、相続人と対立した場合などもあわせて解説します。

1.遺言執行者=遺言内容の実現のために働く人

1-1.遺言執行者とは

遺言執行者とは、「遺言内容を実現するための手続きなどを担う人」のことです。

遺言執行者がいてもいなくても、通常は問題ありませんが、以下の場合は遺言執行者が必須です。

  • 子供を認知するとき
  • 相続人の廃除または廃除の取り消しを行うとき
  • 不動産の遺贈を受けたが相続人が不在、もしくは相続人が所有権移転登記に協力しない場合

ちなみに、遺言執行者の選任の方法は3つあります。
①遺言書での指定か、②遺言書で第三者に指定を委ねるか、③家庭裁判所に選任の申し立てを行うかです。未成年者や破産者でない限り、誰でもなる資格があります(民法1009条)。

遺言執行者の選び方やメリットについては以下の記事をお読みください。

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1-2.大まかな仕事の流れ

遺言執行者の仕事の流れは、以下のようになります。

  1. 就任通知書を作成し、各相続人に送る(1007条2項)※
  2. 被相続人の相続財産および相続人調査をする
  3. 財産目録を作成し、遺言書の写しとともに相続人送る
  4. 遺言内容の通りに相続の手続きを行う
  5. 任務を完了したら相続人に報告する

※ただし、もし通知しなかったとしても遺言執行の効力が失われるわけではありません。
なお、公正証書遺言の場合は遺言書の検認手続きがないため、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合と比較して特に通知の必要性が高いといえます。

遺言執行者がだいたいどんな流れで仕事をするか分かったところで、具体的に「どこまでできるのか」、権限を有しているのか解説していきます。

2.遺言執行者の権限の範囲

遺言執行者は遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利や義務を有しています(1012条1項)。

実際に持っている権利や義務の内容は、遺言書の内容によっても異なりますが、具体的に解説していきます。

2-1.遺言執行者の代表的な権限

遺贈

遺言書中で、被相続人が相続人に対して遺贈する旨を記しているとき、遺言執行者は受遺者(遺贈される側)に遺贈を受けるかどうか意思確認を行い、受ける場合には実際に遺贈の手続きを行います。

遺言執行者がいない場合には相続人でも遺贈の手続きが行えますが、いる場合には遺言執行者しか遺贈の履行はできません(後述します)。

相続の諸手続き

遺言執行者は、遺産相続で必要になる名義変更などの手続きも行います。

たとえば、不動産の所有権移転登記、貸金庫の開扉、有価証券の名義変更などが挙げられます。
条件付きですが預貯金の解約・払い戻しもできます。

相続人の廃除・廃除の取り消し

相続人の廃除や、廃除の取り消しも遺言執行者が家庭裁判所に申し立てます(民法893条)。

廃除とは、被相続人に対する著しい非行があったことなどを理由に、相続人から相続する権利を剥奪することです。
【関連記事】相続人の廃除を解説|廃除の方法、効果、裁判例、欠格との違い

子供の認知

被相続人が遺言書で子供の認知をすることがあります(民法781条2項)。

認知とは、婚姻関係のない女性との間の子供について、自分が父親であると正式に認めるための手続きです。
遺言執行者は、役所に戸籍を届け出ることになります(戸籍法64条)。

訴訟追行権

若干の争いはありますが、遺言執行者は、遺言の執行に関する訴訟の当事者になることができます。

例えば、相続人が遺言の無効等を主張する場合、遺言執行者を被告として訴えることになります(最判昭和31年9月18日)。
また、遺贈された人が所有権移転登記手続きを求める場合、遺言執行者のみが被告になります(最判昭和43年5月31日)。

その他

その他にも、遺産分割方法の指定、寄付行為、保険金の受取人変更など、遺言執行者は遺言の執行に必要な一切の行為に権限を持ちます。

ここでご説明したもののうち、廃除・廃除の取り消しと認知に関しては、相続人は行うことができず、遺言執行者にしか認められていないところなので特にご注意ください。

2-2.遺産分割について遺言執行者と相続人が対立したとき

遺言書のある遺産分割では、原則として遺言者である被相続人の意思を尊重し、遺言書通りに遺産分割を行わなくてはなりません。
しかし、相続人全員の同意があれば遺言と異なる遺産分割を行ってもよいことになっています。

ただし、遺言執行者がいる場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないと定められているため(民法1013条1項)、相続人全員の同意はあっても、遺言執行者がこれに反対している場合にどうなるかについては争いがありました(最判昭和62年4月23日など)。

この点については民法改正で「無効とする」と明記されたため(同条2項本文)、具体的なケースによっても異なりますが、遺言に反する相続財産の売却などは無効になります。

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第三者を保護する規定も追加

しかし、例えば相続人から不動産を購入したのに、購入者の知らない事情で取引が無効とされてしまっては、購入者が思わぬ不利益を受ける可能性があります。

そのため、相続人が遺言執行を妨げるような売却などを行い、それが無効になるとしても、事情を知らない取引相手には無効を主張できないとされています(民法1013条2項ただし書)。

この規定も、改正によって追加されたものです。
このように、民法改正によって、遺言執行者の権限の範囲についてはいろいろ変更が加わりました。

3.民法改正で広がった遺言執行者の権限

ここからは、遺言執行者の権限のうち、民法改正で変わったポイントをご説明します。

①遺言執行者の立場・行為の効力が明確化された

まず、それまで遺言執行者は相続の手続きを行う「相続人の代理人」でした。
しかし、民法改正によって、遺言内容を実現するための責任者として、遺言執行者の行為の効力が明確化されました。

遺言執行者の行為は、権限内で遺言執行者と示してすれば、相続人に対して直接に効力を生じます。
ただし、これによる実質的な変化はありません。

②遺贈の履行ができるようになった

また、前述の通り、遺贈を履行する権限が明文化されました(1012条2項)。
遺言執行者がいる場合は遺言執行者のみが遺贈を履行できます。

受遺者にとっては、遺贈履行の請求先が明確になったといえます。
遺言執行者がいるときには遺言執行者に、いないときには相続人を相手方に履行請求すればよいのです。

③所有権移転登記などができるようになった

「甲土地を長男に相続させる」などのように、特定の財産を一人または複数に相続させる旨の遺言を「特定財産承継遺言」といいます。
ほとんどの遺言書が特定財産承継遺言にあたるといってもよいでしょう。
【関連記事】特定財産承継遺言と相続させる旨の遺言|遺贈との違いや登記を解説

新民法で、特定財産承継遺言があった場合に、遺言執行者が相続登記を申請できることが明確化されました(1014条2項)。
登記以外にも、車であれば登録、動産であれば引き渡しなどを遺言執行者が行なえます。

④正式に預貯金の解約・払い戻しができるようになった

また、遺言執行者は、特定財産承継遺言の対象財産が預貯金の場合、解約や払い戻しができるようになりました(1014条3項)。

従来、預貯金の解約や払い戻しは、あくまで相続人各自が自分の相続分に応じて行うべきものであるという見解と、遺言執行者が代表して行ってもよいという見解に、議論が分かれていました。

とはいえ、実際の金融機関の手続きでは、遺言執行者の預貯金の解約・払い戻しは黙認されていたのですが、相続法改正によって、改めてその権限があることが明確化されたのです。

⑤復任権が与えられた

さらに、遺言執行者は、遺言者(被相続人)が遺言書で禁止していない限り、自己の責任で第三者に任務を任せることができます(1016条)。

それまでは「やむをえない事由」がない限り、遺言執行者が自分の仕事を第三者に任せることは認められていませんでした。

4.まとめ

本記事では、遺言執行者の権限について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

民法改正によって遺言執行者の権限は拡大・明確化されました。
遺言執行者に強い権限が認められているからこそ、あらかじめ被相続人の方が遺言書で適切な遺言執行者を指定しておくことが大切です。

管理能力や適性のみならず、相続人との関係性も考慮しながら選任しないと、後々相続人と対立し、トラブルに発展することは珍しくありません。
遺言執行者は権限が大きいだけに仕事が多く、親族などが務めるのは難しいことが多いです。

遺言の内容にもよりますが、弁護士に遺言執行者になってもらうことを検討してみましょう。

また、遺言執行者と相続人間のトラブルは、被相続人だけでなく、相続人の方にとっても避けたいところです。
遺言執行者の行動に納得がいかないときなど、少しでも不安のあるときは、まずは専門家に相談してみましょう。

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