遺言執行者とは?選任するメリットと選び方・費用

遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは、遺言の内容を適切に実現すべき職務を行う人のことです。相続人の代表として、各種手続きの権限を有し、遺言執行者がいることで遺言の執行がスムーズに進みます。
では、遺言執行者はどのように選出し、誰になってもらうものなのか。何をしてもらうのか。報酬はいくら払えばよいのか。
この記事では、遺言を正確に実行する上で重要な存在である、遺言執行人について詳しく解説していきます。
目次
1.遺言執行者とは?概要と選任するメリット
遺言執行者とは、遺言の内容を適切に実現すべき職務を行う人のことです。
遺言の執行、と聞いても「何をやるの?」とピンと来ない方が多いと思いますが、多くは財産の分与・遺産分けに伴う各種手続き・届出です。
代表例を挙げるなら、不動産の登記です。
たとえば、遺言で「●●の土地はA子に、××の土地はB子に」などと記載があったとして、その登記手続を誰がやるのかという現実的な問題が生じます。煩雑な手続を嫌がっていつまでも放置されていたり、その間に相続人の誰かが勝手に処分してしまったり、ということが起こりえます。
こういう時、遺言執行者の選任が意味を持ちます。
遺言執行者がいることで、相続人が遺産を勝手に処分できなくなり、手続きも正確かつ迅速に完了できます。
遺言をスムーズに実行するという意味で、大きなメリットがあります。
2.遺言執行者の資格制限
では、誰が遺言執行者になれるのでしょうか?
遺言執行者になれない人
説明上、先に「なれない人」から紹介します。
民法は、遺言執行者の欠格事由として、未成年者や破産者をあげています(民法1009条)。
正確・着実・公正に遺言を執行することが期待できないからです。
遺言執行者になれる人
逆に、遺言執行者の資格等については、法律上それ以外の定めはありません。
つまり、未成年や破産者でなければ「誰でも遺言執行者になれる」ということです。
相続人の誰かでも、信頼できる第三者でもOKですし、数人選んでも構いません。
ただし、資格制限が少ないだけで、誰でも良いわけではありません。
誰を選ぶかは慎重に検討すべきです。
その説明のために、まずは遺言執行者が何をやるのか、その職務内容を見ていきましょう。
3.遺言執行者の職務
遺言執行者は、何ができるのでしょうか?
これについては、相続人と遺言執行者のどちらもができることと、遺言執行者にしかできないことがあります。
職務内容 | 遺言執行者 | 相続人 |
---|---|---|
遺贈 | 〇 | 〇 |
遺産分割方法の指定 | 〇 | 〇 |
寄付行為 | 〇 | 〇 |
子どもの認知 | 〇 | × |
相続人の廃除/取消 | 〇 | × |
たとえば遺言に「子の認知」や「相続人の排除」について書かれていた場合、これらは相続人では行えないので、遺言執行者を選任する必要があります。
4.遺言執行者の選任方法
遺言執行者を選任する方法は、以下の3通りがあります(民法1006条、1010条)。
- ①遺言で指定する
- ②「遺言執行者を指定する人」を指定する
- ③家庭裁判所に選任してもらう(選任の申立て)
①、②は遺言者(被相続人)、③は相続人などの利害関係人が出来る選任方法です。
① 遺言で指定する
遺言執行者は、遺言によって指定することができます。
たとえば長男を遺言執行者にしたい場合は、「長男〇〇を遺言執行者として指定する」などと記載しておけば、遺言執行者として選任できます。
②「遺言執行者を指定する人」を指定する
直接遺言執行者を指定せず、遺言執行者を指定すべき人を指定する方法もあります。自分では「誰を選ぶべきか分からない、決められない」という場合に、信頼できる第三者に判断を委ねる方法です。「指定すべき人」の資格制限は特になく、第三者でも構いません。
③ 家庭裁判所に選任の申立てをする
さらに、遺言によって遺言執行者を選任する方法が指定されていなかった場合や、指定されていても相続前に遺言執行者が死亡してしまった場合、就任を拒否した場合や解任された場合などには、相続人や利害関係者などが家庭裁判所に申立をして、遺言執行者を選任してもらうことができます。
5.誰を遺言執行者にすべきか
先にみたように、遺言執行者は基本的に誰でもなれます。親族でも知人でも構いません。
ただし、「遺言の着実かつスムーズな実行」という点から考えるならば、遺産相続問題に精通している人物に依頼すべきです。
特に、遺産相続問題に精通している弁護士であれば、煩雑な手続も間違いなく行ってもらえますし、万が一何かトラブルが起こった時にも、しっかり対応してもらえます。
当サイトでは、遺言執行者としての実務経験が豊富な弁護士も複数紹介しています。
下記ページからご確認ください。
6.費用、報酬の比較|信託銀行・弁護士・司法書士
専門家に依頼した場合にかかる費用(報酬)を説明します。
遺言執行者への就任を専門家に依頼する場合、信託銀行や弁護士、司法書士が多いので、以下で順番に費用相場を見ていきます。
専門家/機関 | 最低額 | 割合報酬 |
---|---|---|
信託銀行 | 105万~157万 | 相続財産の1%~3% |
弁護士 | 20万~120万 | 相続財産の1%~3% |
司法書士 | 30万 | 相続財産の1% |
銀行の報酬が基本的に高めになっており、司法書士が比較的低額です。
ただ、司法書士に依頼した場合、仮に後々法的トラブルが生じた場合、別途弁護士に対応しなければならなくなる、というリスクがあります。
最後まで着実に実行してもらえる専門家を選ぶ、という意味では、弁護士が最適です。
弁護士に遺言執行者への就任を依頼する場合には、その弁護士が遺産問題に強いかどうか、トラブル解決能力が高いかどうか、信頼できる人物/事務所かどうかを基準に決めると良いでしょう。
費用が高いからと言って良いサービスを受けられるとは限らないので、その点は注意が必要です。
まとめ
遺言執行者について解説しました。
遺言書を残すとき、遺言執行者を定めておくと、遺言内容を確実に実現できるので便利です。また、遺言執行者を定めておくと、子どもの認知や相続人の廃除、取消など遺言執行者にしかできないことも実現可能になります。
今、遺言書を作成しようと考えていたり、既に作成した遺言書について遺言執行者を定めたりしたい場合には、一度相続問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。