相続放棄の有無を確認する方法とは?相続放棄申述照会について

遺産分割等を進めるに当たり、必要な事項として「相続人の確定作業」があります。
誰が相続人になるかを確定しないと、新たな相続人との間で再分割を行う必要が出てくるなど、協議の意味が薄れてしまうからです。
ここで相続人確定のために重要なのが「相続放棄した相続人がいるか否かの調査」です。
この記事では、相続放棄の申述の有無を照会する手続きについて解説していきます。遺産分割協議などを前に、相続人の範囲を確定させたい人は、ぜひ参考にしてください。
1.相続放棄とは
相続の放棄とは、法定相続人が家庭裁判所に相続の放棄を申述することにより、はじめから(相続開始時点から)相続人ではなかったという効果を生じさせる家庭裁判所での申述のことをいいます。実際には家庭裁判所に相続放棄の申述の申立てを行って、家庭裁判所から当該申述が受理されて初めて、上記の効果が生じます。
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なお、相続放棄の申述をした人は、相続放棄申述受理証明書(相続人が家庭裁判所において相続放棄の申述を行った旨の証明書)を発行してもらうことができますが、第三者に対する公示・公告はされません。
相続放棄申述受理証明書
事件番号 平成○○年(家)第○○○○号
申述人氏名 ○○○○
被相続人氏名 ○○○○
本 籍 ○○県○○市○○町○丁目○番地の○
最後の住所地 ○○県○○市○○町○丁目○番地の○
死亡年月日 平成○○年○月○日
申述を受理した日 平成○○年○月○日
上記のとおり証明する。
平成○○年○○月○○日
○○家庭裁判所
裁判所書記官 ○○○○ 印
2.相続放棄の有無を確認する方法
実は相続放棄の申述が例えば官報公告などの第三者への公示・公告がなされないからこそ、遺産分割等をしようとする相続人が独自に調査をする必要があるのです。
では、どういう方法があるのでしょうか、以下で検討していきます。
当該相続人への確認
まずは、相続放棄をしているかを確認すべき相続人が特定できているのであれば、その相続人に対し実際に相続放棄をしているかを確認する方法があります。
該当の相続人から相続放棄受理申述証明書の提示があれば、それで確認できたことになります。
しかしながら、相続人が多数の場合、また相続人自体の相続に関する認識が薄い場合には、信用のおける回答があるとは限りません。
家庭裁判所に申請する方法
確実な確認方法として、家庭裁判所に対し、ある相続人を指定して、相続放棄をしているかの確認を求める方法があります。
具体的には、ある相続人宛ての相続放棄受理申述証明書の交付の請求をします。
3.相続放棄受理申述証明書の交付の請求
申請できる人
家事事件手続法第47条第1項によりますと、「当事者又は利害関係を疎明した第三者」とあります。ここで、どのような場面で請求をするのかついて場合分けをする必要があります。
まず、遺産分割調停などが進行中の場合については、請求する相続人は、「当事者」にしますので、特に利害関係を家庭裁判所に示す必要はありません。
ただ、ある相続人が相続放棄をしていないことは、遺産分割調停の調停開始要件であり、家庭裁判所が職権で調査すべき事項となりますので、この場合に相続人が自ら請求をする必要がないのかもしれません。
他方、遺産分割調停などが進行中ではない場合については、請求する相続人は「第三者」に該当しますので、「利害関係を疎明」する必要があります。
提出書類
家庭裁判所所定の申請書を提出します。
次に、請求する相続人の身分証明書(運転免許証など)の写しが必要になります。
さらに疎明資料として
- 被相続人の除籍謄本
- 請求する相続人の戸籍謄本
が必要になります。
照会の費用
まず、相続放棄の申述を行ったとされる相続人の証明書1通について150円分の収入印紙が必要になります。
次に、住所及び宛先を記載した返信用封筒と返信用封筒に貼付する切手(普通郵便で相続受理証明書4通まで82円、5通以上は92円)を同封します。
照会期限
期限は特にありません。
申請が認められなかった場合
請求が認められなかった場合、不許可決定から1週間以内に即時抗告ができます。
まとめ
被相続人の遺産分割を行うに当たり、相続人を確定する作業が必要です。
上記のとおり、相続人が相続放棄を行っているかについての証明書の交付を行うのですが、具体的な手続きについては最寄の家庭裁判所でお聞きいただくことをお勧めします。
もしくは、何らかの件ですでに弁護士に依頼されているようでしたら、上記の件も弁護士に依頼していただいても良いです。