生前贈与を受けた者が相続放棄できるのか?

★ お気に入りに追加

相続放棄は、被相続人の負債が相続財産より大きい場合などによく用いられます。そこで、生前贈与を受けた者が後に相続放棄をすると、被相続人の債権者(相続債権者)から見ると、本来弁済に充てられるべき財産(責任財産)が減少し、時には財産隠しのようにも見えてしまいす。

それでは、生前贈与を受けた者の相続放棄は可能なのでしょうか?今回は、生前贈与を受けた相続人が相続放棄をすることができるのかについて解説します。

1.生前贈与を受けた場合でも相続放棄が可能?

1-1. 生前贈与とは?

生前贈与とは、贈与者(後の被相続人)と受贈者(後の相続人)との間の贈与契約に基づく財産の移転行為であり、贈与者と受贈者の合意により成立します。受贈者が相続人であるかは贈与行為に影響をあたえません。

1-2. 生前贈与を受けた場合、相続放棄が可能?

相続放棄の要件は、

  • 相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述を行うこと
  • 法定単純承認が成立していないこと

なので、生前贈与を受けたことは、相続放棄の要件とは全く関係がありません。生前贈与を受けたからといって、単純承認となることもなく、生前贈与を受けても相続放棄は可能ということになります。

【参考】相続放棄の手続きと費用

2. 詐害行為取消権との関係

生前贈与を受けた者が相続放棄をすることができることはわかりました。しかし、受贈者が相続放棄をすると他に問題が発生します。詐害行為の問題です。

2-1. 詐害行為取消権とは?

詐害行為とは、債務者が債権者を害することを知りながら自分の財産を減少させ、債権者が正当な弁済を受けられないようにすることを言います。他に財産のない債務者が差押えを受けるのをおそれ、不動産を第三者に贈与するような行為です。この場合、債権者は、贈与を取り消すことができます。この権利を詐害行為取消権と言います。

例えば、多額の借金がある者が唯一の財産である不動産を第三者に無償で贈与してしまった場合、債権者は贈与を取り消すことが可能です。

ただし、身分行為などにおける債務者の権利行使の自由を保護するために、財産権を目的としない債務者の行為については、債権者は否認することができません。

例えば、離婚に伴う財産分与は、原則として取消の対象とはなりません。

2-2.相続放棄に詐害行為取消権を行使することができる?

債務者が相続放棄をした場合、債権者は詐害行為取消権を行使することができるのでしょうか。 前提として、「債権者」といっても被相続人の債権者(相続債権者)と相続人の債権者の2種類が考えられますので、場合を分けて検討したいと思います。

2-2-1. 相続債権者の場合

最高裁判所の判例は、相続債権者が相続放棄をした相続人に対し相続放棄をしたことを詐害行為であるとして取り消した事案において、相続放棄自体は相続 財産を積極的に減少させる行為ではないこと、相続放棄のような身分行為に他人(相続債権者)の意思による強制的介入を認めるべきではないとして、詐害行為取消権の行使はできないと判断しました(最高裁判所昭和49年9月20日判 決)。

この事例の問題の中核は生前の贈与行為であるといえますので、贈与行為を取り消すことができれば、特に問題はなかったものといえます。そうすると、相続放棄についてわざわざ詐害行為取消権の行使を認める必要はなかった 事例であるといえ、妥当であると考えます。

2-2-2. 相続人の債権者の場合

相続人の債権者の場合には、最高裁判所の判例はありませんが、この場合においても相続放棄に詐害行為取消権を行使することはできないとする考え方が有力です。その理由として前記の理由に加えて、仮に詐害行為取消権の行使を認めた場合、他の相続人の相続分にまで影響が生じてしまい、妥当ではないというものも挙げられます。

2-2-3.生前贈与と詐害行為取消権

以上のとおり、相続債権者及び相続人の債権者はいずれも相続放棄行為に対し詐害行為取消権を行使することはできません。しかしながら、後の被相続人から推定相続人に対する生前贈与については別途考慮が必要です。

仮に、当該贈与の時点で被相続人が債務超過に陥っていた場合、推定相続人がその債務超過 の事実を知って贈与を受けたときには、相続人債権者が贈与の事実を知ってから2年間を経過するまでは(その間に相続が生じようとも)、その贈与行為について詐害行為取消権を行使することが可能ですので、ご留意ください。

3.遺留分減殺請求はできる?

3-1. 「贈与」に対する遺留分減殺請求

遺留分減殺請求の対象となる「贈与」は相続の開始前1年以内になされたものに限ります。

ただし、贈与行為の 当事者(後の被相続人と推定相続人)が他の推定相続人の遺留分を侵害することを知って贈与を行った場合には、その贈与も遺留分減殺請求の対象となります。そし て、受贈者の要件として相続人となったことは挙げられていませんので、のちに相続放棄を行ったとしても影響はなく、遺留分減殺請求をすることができることになります。

なお、贈与された財産が推定相続人から第三者に移転したような場合には、当該第三者に対し遺留分減殺請求権を行使することはできず、当該推定相続人に対し遺留分の侵害相当の価額弁償を求めるに過ぎないことになります。

しかしながら、当該 第三者が譲受時点で、遺留分を侵害していることを知りながら当該財産を譲り受け た場合には、遺留分権利者は、当該第三者に対し遺留分減殺請求権を行使することができます。

【参考】遺留分減殺請求とは?手続き方法&期限&費用&必要書類
遺贈・贈与が複数ある場合、遺留分減殺請求ってどうやるの?

3-2. 相続放棄した者からの遺留分減殺請求

他方、相続放棄を行った場合には、相続放棄を行った者は、もはや相続人ではありませんので、その者が被相続人の兄弟姉妹以外の者であったとしても遺留分はありません。したがって、遺留分減殺請求を行うことはできません

3-3.特別受益の持ち戻し

生前贈与を受けた者が相続放棄をした場合、その者は相続人ではありませんので、その贈与は特別受益財産の持ち戻し計算の対象となることはありません。

他方、生前贈与を受けた者が相続放棄をしなかった場合には、その贈与は、特別受益財産として、被相続人が遺言などで持ち戻し免除の意思表示をしない限り、持ち戻し計算の対象となり、相続により取得できる財産が減少することになります。

【参考】特別受益とは?受益が認められるケースと計算方法を解説!

まとめ

以上のとおり、生前贈与を受けた者と相続放棄等の関係を解説してきましたが、具体的な 事案の処理は、法律の専門家である弁護士の助言を受けることを強くお勧めします。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

デフォルトpr下ボタン

この記事が役に立ったらシェアしてください!