電話加入権も相続される|手続きや相続税、評価額を解説

被相続人が亡くなられて、その遺産相続を進めている、あるいはこれから進める予定の方は、様々な手続きや話し合いで苦労されていると思います。
そんな中、忘れられがちなのが電話加入権の相続です。
亡くなられた方がNTTの固定電話を利用されていたら対応が必要になります。
本記事では、
- そもそも電話加入権とは何なのか
- 相続手続き、相続しない手続きはどうすればいいのか
- 相続税はかかるのか
などをシンプルに分かりやすくご説明します。
被相続人名義の電話加入権の取り扱いにお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.電話加入権も相続財産のひとつ
1-1.電話加入権とは
「電話加入権」は、NTT東日本とNTT西日本の加入電話回線を契約するための権利で、他人に譲渡することも可能です。
固定電話=電話加入権がある、というわけではありません。
ネット回線を使ったIP電話などの場合には電話加入権なしに電話番号を取得できるので、被相続人がこれらを利用していた場合は「電話加入権」の相続手続きは不要です。
ただし、IP電話やひかり電話でも「電話加入権」とは呼ばないだけで承継や解約等の手続きが必要になることがあります。
まずは本当に被相続人名義の電話加入権が設定されているか、固定電話の契約内容を確認しましょう。
局番なしの116に電話することで確認できます。
1-2.電話加入権も相続財産
電話加入権は相続財産に含まれます。
ただし、固定電話の需要が急激に低下した現代においては、電話加入権の資産的価値はほぼありません。
金券ショップなどで他人に販売することもできますが、名義変更の手数料なども含まれて高くても2,000円前後の値段にしかならないことがほとんどです。
固定電話の利用を継続する目的で電話加入権を相続することはありますが、他人に販売する目的で相続するメリットはそう大きくありません。
以下の2.では、電話加入権を相続する場合の手続きや相続税の注意点を解説します。
電話加入権を相続したくないという方は、4.電話加入権を相続したくないとき|解約などをお読みください。
2.電話加入権を相続するとき|手続き
まず、電話加入権を相続する場合です。
被相続人の名前から、相続人の名前に名義変更しなければなりません。
電話加入権の名義変更の手続き
電話加入権の名義変更の手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。
- NTTのHPより、必要書類(「電話加入権承認・改称届出書」)をダウンロードし、記入する
- 添付書類(死亡事実と相続関係が確認できる書類・新契約者の氏名/住所/生年月日が確認できる書類)の準備をする
- 上記の1.と2.を、NTT加入権センターに郵送する
【参考】「電話加入権承認・改称届出書」NTT西日本
「死亡事実と相続関係が確認できる書類」
- 全部事項証明書(戸籍謄本)
- 一部事項証明書(戸籍抄本)
- 法定相続情報一覧図
…など
「新契約者の氏名/住所/生年月日が確認できる書類」
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
…など
3.電話加入権の相続税評価
3-1.相続税は低額だが、申告は必要
これまでご説明してきたとおり、電話加入権も相続財産である以上、相続税を支払わなくてはなりません。
とはいえ、電話加入権の相続税評価はきわめて低額のため、相続税に対する影響はほとんどないといってよいでしょう。
以下で相続税評価方法と評価額をご説明します。
3-2.電話加入権の相続税の評価方法
以下の3つの種類によって、相続税の評価方法は変わります。
- 取引相場のある電話加入権
- 取引のない電話加入権
- 特殊番号の電話加入権
取引相場のある電話加入権
取引相場のある電話加入権とは、企業の欲しがる番号など、市場内で一定の需要がある電話番号の電話加入権です。
基本的には、課税時期当時の通常の取引価額に相当する金額で評価します。
ただし、以下の「取引のない電話加入権の標準価額」で評価してもよいとされています。
取引のない電話加入権
取引のない電話加入権については、売買実例価額などをもとに、電話取扱い局ごとに国税局長の定める標準価額で評価します。
現在の標準価額は、全国一律で1,500円です(令和元年分)。
特殊番号の電話加入権
「特殊番号」とは、100番などの覚えやすい番号や、4989など不吉さを連想させる番号のことです。
こうした特殊番号で上記の標準価額が不適切な場合は、売買実例価額や専門家の算出価額などを考慮しながら、最終的な相続税評価額が決定されます(財産評価基本通達162)。
4.電話加入権を相続したくないとき|解約など
続いて、電話加入権の相続をしたくない、もう不要という方向けの解説です。
電話加入権を相続しないためには、①契約を解約するか、②電話加入権の利用を休止するか、③あるいは一時中断するか、という3つの方法が挙げられます。
それぞれご説明します。
①解約
遺産を相続したくないというときに、「相続放棄」がすぐに思い浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、相続放棄の制度では、一部の財産のみを放棄することは認められず、放棄するなら全ての財産の相続権を手放す必要があります。
主なケースとして、被相続人が莫大な借金を抱えていたり、処分に困る森林などの不動産が相続財産に含まれていたりするときに使われることが多いです。
電話加入権の相続はそこまで重大なものではありませんし、相続したくないときは解約するというシンプルな方法をとればよいだけです。
解約であれば、工事費もかかりません。
解約の手続きの方法はNTT東日本とNTT西日本でも若干手続きが異なるので、詳しくはHPで確認しましょう。
フォームで必要事項を入力・送信するほか、場合によっては、別途本人確認書類などの提出が求められることもあります。
「NTT側ですべての処理が完了した日」が契約解除日として認められ、その日以降、月額料金の発生が止まります。
②利用休止
解約まではしたくないという場合には、利用を休止することもできます。
利用休止の工事費は、2,000円(税抜)です。
最大で10年間の利用休止が認められますが、5年ごとに更新が必要です。
10年が経過すると、自動的に解約になります。
解約ではなく利用休止を選ぶメリットとしては、固定電話を復活させたくなったときに電話加入権を再び購入する必要がないことです。電話加入権の再購入には、36,000円がかかるので、このお金を節約できます。
ただし、利用を再開するときには電話番号が変更になります。
なお、休止中は、回線使用料(月額基本料金)はかかりません。
利用休止も、東日本NTTや西日本NTTのHPより、フォーム入力などを行うことで手続きできます。
③一時中断
その他にも、電話加入権の「一時中断」という手も考えられます。
一時中断では、再開後も同じ電話番号を利用することができます。
しかし、②の利用休止と大きく異なる点が、中断中も毎月の回線使用料がかかってしまうことです。
さらに、一時中断でも工事費が2,000円(税抜)かかります。
コスト面のメリットが見られないので、一時中断が選択される場面は少ないかもしれません。
5.まとめ
本記事では、電話加入権の相続について解説しました。
電話加入権は相続財産に含まれますが、現代においてはほとんど資産性もなく、相続税評価額も低いため、あまり重視されるものではありません。
しかし、相続財産である以上、相続税申告の際にはもちろん組み込んで算出する必要があるので、ご注意ください。
被相続人の電話加入権を相続するかどうかは、固定電話の利用継続の必要性など、相続人が状況をみて判断することです。
相続するもよし、解約するもよしですが、放置している間も基本料金はかかっていきますから、早めに判断して手続きを行いましょう。