遺産分割協議書の有効期限はいつ?作成期限はある?コピーではダメ?

ご親族を亡くされると、被相続人の財産を相続人の名義にするために、相続手続きをしなければなりません。

その際に必要になるのが遺産分割協議書です。では、提出する遺産分割協議書に有効期限はあるのでしょうか?いつまでに作成しなければならないといった期限はあるのでしょうか?

本記事では、そうした遺産分割協議書の基本的な疑問にお答えします。

1.遺産分割協議書に有効期限はない

民法では、遺産分割協議をいつまでにしなければならないといった期限がありません。そのため、遺産分割協議書もいつまでに作成しなければならないといった期限は設定されていません

また、一度作成してしまえば、遺産分割協議書には有効期限もありません。したがって、相続手続きをする際には、作成した時期に関わらず遺産分割協議書を受理してもらうことができます。

1-1.遺産分割協議書と相続手続きの関係

しかし、問題は、期限付きの相続手続きがあり、遺産分割協議書の提出が求められていることです。そこで、その期限内に遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成することになります。

主な相続手続きと期限について次表にまとめてみましょう。

銀行口座の相続手続き
  • 本来は、権利行使できることを知った時から5年または権利行使できる時から10年(民法166条1項1号・2号)
  • ただし現状ではほとんどの場合、預金の存在が確認できる限り相続手続きは可能
  • 各銀行所定の相続手続き用紙に相続人全員が署名押印し、必要書類を添付すれば遺産分割協議書なしで相続手続きは可能
生命保険金の受け取り
  • 請求できるときから3年(保険法95条1項)
  • 生命保険金は受取人の固有財産となるため、遺産分割協議は不要
相続登記
  • 現在期限なし
  • 2024年4月1日以降は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権の取得をしたことを知った日から3年以内
相続税申告 相続開始を知った日の翌日から10か月以内(相続税法27条1項)

上記からお分かりの通り、相続開始から直近で遺産分割協議書の提出が必要になるのは、相続開始の翌日から起算して10ヶ月以内にしなければならない相続税申告です。

1-2.遺産分割協議書作成に準備すべきこと

ただし、遺産分割協議を滞りなく行い、遺産分割協議を作成するためには、様々な書類を準備して調査をする必要があり、それなりに時間がかかります。

しかも、相続税は期限内に申告しないと延滞税や無申告加算税といったペナルティが待ち受けています。相続税申告に間に合うように、相続人間でしっかりと調整する必要があるのです。

なお、遺産分割協議書作成のための必要書類については、次の記事で詳解しています。是非ご一読ください。

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2.遺産分割協議書を作成しないデメリット

では、遺産分割協議書を作成せずに放置すると、どのようなデメリットがあるのでしょうか?

遺産分割協議書を作成しないと、次のようなデメリットが発生します。

  • 相続登記など遺産分割協議書を添付しなければならない相続手続きができない
  • 遺産分割協議に合意した証拠が残らないため、紛争が蒸し返される可能性
  • 相続が繰り返されることで相続関係が複雑になっても、証拠が残っておらず相続人の特定が難しくなる

2-1.遺産分割協議書がなければできない相続手続きがある

被相続人の遺言書がなければ、原則として相続税申告や相続登記には、遺産分割協議書を添付しなければなりません。

前述した通り、期限内に相続税申告をしなければ、ペナルティの税金がかかります。相続登記には、2024年4月1日から3年という期限が設定されます。期限内に登記しなければ、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。

こうした事態に陥らないためにも、遺産分割協議書の作成は必要になります。

2-2.遺産分割協議に合意した証拠が残らず紛争になる可能性

遺産分割協議について相続人全員の合意が成立したことを証するために作成します。「そんな遺産分割に納得した覚えはない」といった相続人が現れて紛争が蒸し返されるのを防止するためです。

遺産分割協議書がなければ、こうした相続人が現れたときに、他の相続人には遺産分割協議に合意したことを証明するものが何もないために、紛争になってしまう可能性が高くなります。

2-3.相続が繰り返されると相続人の特定が難しくなる可能性

遺産分割協議には、誰がどの遺産を取得したかを証明する書類となります。遺産分割協議書を作成せずに放置したまま相続が繰り返され、前項のような相続人が現れると、遺産を誰が取得したかの特定が難しくなってしまいます。

遺産分割協議書についてのよくある質問(FAQ)

相続手続きに提出する遺産分割協議書はコピーじゃダメ?

相続手続きでは、遺産分割協議書の原本の提出を求められ、原則としてコピーの提出はできません。

そのため、原本を提出する際に、原本還付請求をするといいでしょう。

相続登記・相続税申告における遺産分割協議書の還付請求方法

遺産分割協議書の還付請求には、まず、遺産分割協議書のコピーを用意します。

還付請求は、コピーの余白に「原本と相違ありません」と記して、申請人が署名し、申請書に押印した同一の印鑑で押印したものを提出して行います。

遺産分割協議書が複数ページに跨る場合は、割印をします。

相続登記と相続申告は、次の所で行います。

  • 相続登記:不動産所在地を管轄する法務局
  • 相続税申告:被相続人の最後の住所地の税務署

相続手続きで遺産分割協議書が不要なケースは?

相続手続きに遺産分割協議書の提出が不要なケースは、次の通りです。

  1. 被相続人の遺言書通りに遺産分割した場合
  2. 相続人が1人だけの場合
  3. 法定相続分により遺産を相続した場合
  4. 遺産が現金・預金だけの場合

遺産分割協議をスムーズに行って遺産分割協議書を作成するためにはどうすればいい?

遺産分割協議が紛糾しそうな場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士であれば、依頼者である相続人の代理人として、遺産分割協議に参加することができ、交渉を任せることができます。

さらに、遺産分割協議書の作成をお願いすることもできます。

もし、遺産分割協議で揉めそうなら、相続に強い弁護士に相談してはいかがでしょうか。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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