遺産分割調停とは?|流れや有利に進めるポイントを分かりやすく解説
被相続人の遺言書がなければ、遺産を分割するために遺産分割協議を行うことになります。しかし、遺産の分割は、相続の中でも…[続きを読む]
上記のような事情があるために、遺産分割協議をせずに放置したままという方がいらっしゃるかもしれません。
そこで、今回は遺産分割協議をせずに放置するとどうなるか、上記のような問題への対処法などについて解説します。
目次
相続人が1人か特定財産承継遺言がある場合以外には、相続が開始すると遺産は、相続人の共有状態になります。
遺産分割協議は、遺産をそれぞれの相続人に分配して、結果的にこの共有状態を解消することを目指します。したがって、遺産分割協議をしないということは、遺産を共有状態のまま放置することに他なりません。
遺産分割協議には法律上期限が定められていません。そのため、冒頭でご紹介したような事情があると、遺産分割協議がされず、遺産が共有状態のままで放置されることが多くなります。
しかし、遺産分割協議をしないまま放置すると次のようなリスクが発生します。
前述した通り、遺産分割協議をしなければ、遺産は共有状態になります。したがって、法定相続分による相続以外には、相続手続きをすることができません。
現金や預貯金は、法定相続分によって分割することができますが、それ以外の遺産については、法定相続分による共有状態のまま相続手続きを行うしかありません。
株式や不動産、自動車、被相続人が事業を営んでいた場合には、事務所や事業用の機材など様々な遺産が共有のままになります。
共有物を処分するには、相続人全員の合意が必要となります。そのため、相続人の意見が食い違うと売却もままなりません。
例えば、不動産は、法定相続分に従って相続登記するこが可能です。しかし、遺産分割をしないまま放置すると、年を経て相続が発生するごとに共有関係が複雑になっていきます。
長期間遺産分割をしないまま放置して共有者が行方不明などになれば、遺産分割協議をすることが難しくなってしまいます。
共有物すべてを処分するには、共有者全員の合意が必要です。
しかし、相続人が共有物の自分の持分を売却するには、他の相続人の合意は不要です。
したがって、相続人の共有だったはずの不動産が、ある日突然知らない第三者との共有になっている可能性もあるのです。
相続税には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例といった適用を受ければ税額を抑えられる特例や控除があります。
しかし、申告期限までに遺産が未分割のままでは、こうした特例や控除の適用を受けることができません。そのため、多額の納税資金が必要になり、不利益を被ることになってしまいます。
もっとも、申告期限内に法定相続分での相続税申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、3年以内に遺産分割協議して修正申告や更正の請求をすることで、こうした特例や控除の適用を受けることが可能になります。
遺産分割協議を行うと、上記で上げたリスクを回避することができます。
また、冒頭に挙げた問題に直面している相続人は、次のような対処法によって遺産分割協議を行うことが可能になります。
相続人間で意見が食い違い、どうしても遺産分割協議がまとまらなければ、遺産分割調停を申立てることができます。
遺産分割調停は、家庭裁判所での相続人の話し合いです。しかし、調停委員が介在することで、原則として相続人が直接顔を合わせる必要はありません。
ただし、遺産分割調停では、ご自分の主張を法的に展開する必要があるため、弁護士に相談することをお勧めします。
相続人全員が参加していない遺産分割協議は、無効になってしまいます。そこで、相続人の中に行方不明者がいる場合には、「不在者財産管理人」に行方不明の相続人の代わりに遺産分割協議に参加してもらうことになります。
不在者財産管理人は、家庭裁判所に選任を申立てる必要があります。
詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
認知症などで判断能力を失った相続人には成年後見人が、未成年の相続人には親権者が代理人として遺産分割協議に参加することが必要になります。
しかし、成年被後見人と成年後見人とが、あるいは、未成年者と親権者とが同じ被相続人の相続人となる場合には、特別代理人が遺産分割協議に参加する必要があります。
特別代理人が必要になるケースや、選任方法などについては次の記事をご一読ください。
遺産分割協議に協力しない相続人がいる場合には、最終的に遺産分割調停を家庭裁判所に申立て、調停の場で話し合いをするしかありません。
協力しない相続人が調停にも参加しなければ、調停は遺産分割審判に移行することになり、審判で最終的な判断が下されることになります。
相続放棄をすると、その相続については、初めから相続人とならなかったものとみなされるため相続権がありません(民法939条)。
したがって、遺産分割協議に参加する資格を失っているため、遺産分割協議に加わることができません。
ここまでご紹介した通り、遺産分割協議をしないと様々なリスクが発生します。
相続税申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内にしなければならず、相続登記も2024年から義務化されます。遺産分割協議をしないと相続人にとっては、不利益でしかありません。
もし、遺産分割協議で結論を出すのに何らかの障害があるのであれば、一度弁護士に相談することをお勧めします。