負担付贈与とは?メリット・デメリットや発生する税金を解説

負担付贈与とは何か?使い時やメリット・デメリットを解説。

負担付贈与は、相続税対策として幅広く活用される贈与の一種です。

ここでは、負担付贈与についてそのメリット・デメリットや、発生する税金などについて解説します。

1.負担付贈与とは何か?

負担付贈与とは、「一定の債務を受贈者が負担することを条件にする贈与」です。

負担付贈与としての事例には、父親が自分の老後の面倒を見ることを条件に、子供に金銭を贈与する例や、親が子供に住宅ローンという負担が付いた自宅を贈与するなどを挙げることができます。

1-1.負担付贈与は双務契約

贈与は、贈与者と受贈者の契約により成立します。

負担付贈与も、贈与の一形態であることから、契約であることに変わりありません。

ただし、一般的な贈与は、贈与の目的物を贈与者が一方的に受贈者に引き渡す片務契約であるのに対して、負担付贈与は、その性質に反しない限り、受贈者も債務を負担する双務契約となります(同法153条)。

1-2.負担付贈与契約書は解除できるのか

負担付贈与契約を解除すると、贈与財産の所有権は贈与者に戻り、受贈者は負担を免れます。

ただし、負担付贈与の受贈者側がその負担の一部でも履行すれば、贈与者は契約を解除することができなくなります。

契約解除の方法については、後述します。

2.負担付贈与のメリット・デメリット

負担付贈与には、次のメリット・デメリットがあります。

2-1.負担付贈与のメリット

贈与する代わり受贈者に負担を担ってもらうことができる

贈与をすることで、贈与者は次のような負担をしてもらうことができます。

  • 老後の面倒をみてもらう
  • 介護をしてもらう
  • ペットの世話をしてもらう
  • 借金を肩代わりしてもらう
  • 土地の一部を使わせてもらう
    など

このように、負担付贈与をすると、贈与者は自分の負担を受贈者に代わって負担してもらうことができます。

一定の条件で契約を解除できる

負担が履行されなければ、贈与者は相当の期間を定めて履行を催告し、期限までに履行がなければ、負担付贈与契約を解除することができます。

口頭でも契約が成立

前述の通り、負担付贈与も贈与の一種であり、口頭でも成立するため契約すること自体は簡単です。

しかし、万一トラブルになったときを考えると、契約は書面で残すことをお勧めします。

2-2.負担付贈与のデメリット

次に負担付贈与のデメリットを挙げてみましょう。

負担が履行されないリスクがある

負担付贈与契約を交わしたとしても、負担が確実に果たされる保証はどこにもありません。

受贈者が負担を履行しないとしても、罰則があるわけではなく、契約を解除しても贈与した財産が戻ってこなければ、裁判でさらに負担が増える可能性もあります。

贈与者は負担の限度で贈与物の欠陥の責任を負う

通常の贈与では、贈与者が贈与した物の不具合や欠陥を知りながら受贈者に伝えずに引き渡さない限り、契約解除や損害賠償を請求されことはありません。

一方で、負担付贈与の場合には、贈与者の責任はさらに重くなり、売買契約と同様に、贈与した物が契約の内容に合致しなければ、贈与者が受贈者の負担を限度として責任を負うことになります(同法551条2項)。

3.負担付贈与で発生する税について

負担付贈与を行なうと、贈与者・受贈者双方に税金が発生する可能性があります。

税金は期限までに現金で一括納付しなければならず、負担付贈与を行う際にはしっかりと税額を把握しておかなくてはなりません。

以下では負担付贈与を行なった場合に生じる税金の問題について解説します。

3-1.受贈者にかかる可能性がある税金

贈与税

負担付贈与であっても、受贈者には、贈与税が課税されます。しかし、すべての贈与に贈与税が課税されるわけではなく、基礎控除として年間の贈与額が110万円までであれば贈与税は非課税です

負担付贈与では、次の計算式で算出した金額がプラスになれば、贈与税が課税されます。

(贈与財産の金額−負担の金額)−基礎控除額110万円

例えば、以下の事例における贈与税の金額は、177万円です。

事例1.

  • 贈与者:父親
  • 受贈者:30歳の長男
  • 贈与財産:マンション
  • マンション購入時の時価:1,000万円
  • マンション贈与時の時価:3,000何円
  • 受贈者の負担:住宅ローン残債2,000万円の返済

{(マンション贈与時の時価3,000万円−ローン残債2,000万円)−基礎控除110万円}×税率30%*−控除額90万円=177万円

*特例税率を使用。詳しくは、国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」を参照。

事例1.では実質1,000万円の贈与を受け取るために、177万円の税金が発生することになり、負担は決して小さくないといえます。

不動産取得税

受贈者が贈与によって不動産を取得すると、不動産取得税がかかります。

不動産取得税の負担額は次の通りとなります。

不動産取得税=固定資産税評価額×4%(土地や住宅の場合は3%:平成30年3月末までの特例)

登録免許税

不動産の所有権を取得した者がその事実を第三者に主張するためには、法務局での登記が必要で、登記を受贈者名義に変更しなければ、実務上、売却することは困難です。

不動産の贈与があり、登記名義の変更をするには「登録免許税」がかかります。

贈与による登記名義変更は、次の通り、相続登記による名義変更よりも登録免許税が高額になります。

登録免許税

贈与の場合:不動産の価額×1000分の20
相続の場合:不動産の価額×1000分の4

3-2.贈与者にかかる可能性がある税金

贈与者に発生する可能性がある税金は譲渡所得税住民税です。

譲渡所得や住民税は、利益にかかる税金です。事例1.では贈与者にも「利益」が発生することになり、所得税や住民税が発生します。

贈与者である父はマンションを1,000万円で購入しているものの、住宅ローンの残債2,000万円は子が負担することになるため、1,000万円で購入したマンションを2,000万円で売却したのと同じ効果があり、仮に売却費用を0円と考えれば1,000万円の利益になり、譲渡所得が発生してしまうのです。

譲渡所得税は、それ以外の所得との1年分の合計額を、翌年2月16日〜3月15日の期間中に確定申告・納付する必要があります。

贈与者も、税金の負担がどの程度発生するのかは事前に理解しておく必要があります。

まとめ

ここまで、負担付贈与について解説しました。

負担付贈与は、贈与者が受贈者に様々な負担をお願いすることができる一方で、様々なデメリットもあります。また、贈与者や受贈者に税金が発生する可能性もあります。

負担付贈与を行う際には、税務や法律の専門家に相談するに越したことはありません。当サイトでは、相続に強い多数の弁護士をご紹介しています。ぜひ、ご活用ください。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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