遺産相続における時効

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時間 時効

この記事では、相続にまつわる時効や期限について解説します。

1.遺産分割と時効

遺産相続に関連する時効には次表のものがあります。請求できる具体的権利や問題となる場面、時効期間について詳しく見ていきます。

内容 時効
相続放棄 3ヶ月(相続があったことを知った時から)
遺留分減殺請求 1年(相続があったことを知った時から)
10年(相続開始から)
遺産分割請求 (なし)
相続回復請求 5年(侵害されていることを知った時から)
20年(相続開始から)
相続税申告 10ヶ月(相続開始から)

2.相続放棄:3ヶ月

相続放棄・限定承認(民法905条1項)とは

相続放棄、「遺産はいりません」という意思表示です
他方、限定承認は、遺産のうち「自分に与えられる利益の範囲で引き継ぎます」という意思表示のことです

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借金などの債務は相続放棄を

相続放棄は主にこの負の財産を受けついだときに必要になります。遺産全てを不要とするのが、相続放棄。相続分の限度で責任を負うとするのが、限定承認です。例えば、相続財産から負の遺産である借金を返済するとマイナスになってしまう場合などに相続放棄や限定承認をします。相続放棄をすることによって、相続人が残した借金などの債務の返済はする必要がなくなります。他方、限定承認をすると、借金などの負の財産を法定相続分の限度で支払うことになるのです。

上記2つの意思表示は、相続があったことを知ったときから3ヶ月以内にするのが民法上のルールとなっています(民法905条1項)。手続き面でいうと、上述の意思表示を家庭裁判所にした上で、最終的な効力が発生することになります。

3.遺留分減殺請求権:1年・10年

遺留分減殺請求権(1031条)とは

自分への遺産が法定相続分より少なく、調べたところ生前贈与などで第三者や相続人の誰かに不動産などを譲り渡していたというケースがあります。このような場合、「私の相続分の遺産を返してください」というのが遺留分減殺請求権です。

この請求権の目的は、相続人間の不平等の解消にあります。相続財産は限られているので、相続人のうちの1人に法定相続分より多く割り当てられている場合は、他の相続人にとっては損になります。そこで、「法定相続分までは返してよ」と言えるということです。

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生前贈与と相続人間の不平等のケース

問題となるのは主に2パターン。生前贈与で贈与者死亡のケースと相続人間の不平等解消のケースです。

生前贈与のケースで問題となるのは、生前贈与後、1年以内に相続人が亡くなった場合です。
この場合、相続した家族は「法定相続分が少ないので返してください」ということができます。また、婚姻や養子縁組のため、生計の資本として受けた贈与であった場合(特別受益)は、何年前のものでも含めて請求することができます。

相続人間の不平等のケースで問題となるのは、「娘のAにだけ遺産を相続させる」という遺言を残した場合などです。このような場合、他の相続人は法定相続分をもらうために、遺留分減殺請求を行います。

遺留分減殺請求権は、相続や遺贈があったことを知った時から1年で時効となります。また、相続があったことを知らなかったとしても、相続開始から10年で時効となります(民法1042条)。
1年以内に請求を行えば、時効は中断しますので、自分の相続分が少ないと気づいたら何らかの形で請求を行うことが大切です。

4.遺産分割請求:時効なし

遺産分割請求(民法907条)とは

遺産分割請求とは、遺産の分割のための話し合いを請求する権利です。
例えば、父、母、子供2人の4人家族でお父さんが亡くなった場合、父親の死亡時点で相続が開始します(民法882条)。死亡時点で相続は始まり、家族それぞれが相続分を持っているため、お父さん名義住宅などの家屋、預金などの財産は全て家族の共有状態となります。この共有状態の間は、勝手に処分したりすることは原則としてできません。この場合、家族で遺産分割の話し合いを行う必要があります(遺産分割協議)が、それを実現するために請求するのが遺産分割請求です。

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遺産分割請求権には時効なし

遺産分割請求は、遺産の共有状態を解消するために行います。仮に、これで決裂した場合や、協議に応じない場合は、家庭裁判所による裁判手続きである調停、審判(民法907条2項)が必要になってきます。

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遺産分割請求権時効はありません。遺産の共有状態は、分割するまで存続し続けるので、いつでも遺産分割協議(相続人同士での話し合い)によって共有状態を解消することできます。

※注意点
上述のように、遺産分割請求権自体に時効はありません。しかし、個々の債権に時効はあります。例えば、預金債権などの時効は中断しない限り進行し続け、10年で消滅します(民法167条1項)。この場合、もらえたはずの財産を失ってしまうため、できるだけ早く相続財産の内容の確認をしておく必要があります。

5.相続回復請求:5年・20年

相続回復請求(民法884条)とは

相続回復請求権とは、自己の相続権を侵害された場合に、財産や地位を返してくださいという権利です。請求する相手方は、相続欠格者や、虚偽で戸籍上の子(認知や養子も含む)となっている表見相続人や、自分以外の相続人です。請求する側は、本当の相続人だけでなく、被相続人も含まれます。

表見相続人、共同相続に人に対する請求

本当の相続人でない表見相続人に対して「返してください」というのは典型的なケースですが、自分以外の共同相続人に対しても「法定相続分を返して」ということができます。例えば、遺産分割前の共有状態であるにもかかわらず、住宅などの不動産を事実上1人占めしている場合です。このような場合、他の相続人の持ち分を侵害しているため、相続回復請求をすることができます。上記のような事例は、話し合いで解決することが少ないので、裁判になることが多いのが実情です。

相続回復請求権は、侵害されていると知ったときから5年相続開始から20年で消滅時効にかかります。こちらも1度請求すると時効中断されますので、早めに請求を行うことが大切です。

6.相続税申告と納税:10ヶ月

相続税とは

亡くなった家族の財産を相続で受け継いだ場合や、遺言によって相続財産を受け継いだ場合に、その額が大きいとかかる税金のことです。具体的には、遺産総額が「3000万+600万×法定相続人の数=相続税の基礎控除額」を超えると相続税がかかります
簡単にいうと、相続人が1人の場合は3600万円まで税金がかからないということです。したがって、最低でも3600万円以上の財産がある場合に、相続税をおさめる必要があります。もっとも、これは基礎控除の話であり、特例で認められる控除もあります。

相続税が問題となる場面は、申告を忘れていた場合やのちに特例控除を受けたいと思った場合です。控除を受けるためには、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月の間に申告が必要です。これを忘れると、延滞税や加算税などの支払いが大変なことになります。また、小規模宅地等の特例による控除を受けたい場合、相続税0円でも申告が必要であり、遺産分割協議もその前提となります。申告後に、特例適用する方法もありますが、一旦相続税を納付しなければならないため、大きな出費が必要となります。

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還付請求権は申告期限から5年

上述の通り、相続税は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に申告する必要があります。
災害やその他やむを得ない事情などがある場合(特殊事情)は、その理由が止んだ後の2ヶ月間は延長することができます。
この場合、税務署に申告すれば、延長をしてもらえます。もっとも、やむを得ない事情についての認定は厳しく、滅多にないものと理解しておいてください。
この他に、税金を払いすぎていた場合の還付請求権の時効は申告期限から5年となります。相続発生からは、5年10ヶ月後に消滅時効となります。

7.相続の前提条件として財産調査が大事

遺産相続と時効の関係について理解しておくべき点を解説しましたが、その前提となるのが財産調査(民法905条2項)です。

財産調査とは、①彼相続人(相続される側)が財産を有しているのか、②有しているとするならば、どうような財産か、③相続人は何人いるのかについての調査です。財産額や相続人の数などが確定していていないと、全体の相続額や請求する相手がわからないだけでなく、相続放棄をするかの判断もできません。
したがって、まずは前提条件を確定させる作業が必要となるのです。

具体的な調査の種類は、2つあります。

相続額を確定させるために必要になるのが、遺産調査。相続人を確定させるために必要なのが、戸籍調査です。
どちらも、相続を現実的に進めていくために必要です。
なぜなら、相続人が判明しないと、実際に財産を受け取れないだけではなく、相続税の計算もできないからです。
まずは、相続の金額と相続人をはっきりさせることから始めましょう。

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