遺族年金を受け取れる条件は?|受給の可否がわかるチャート付き

年金に加入していた方が亡くなったときに、親族は一定の条件を満たすことで遺族年金を受けとることができます。しかし、実際に遺族年金を受けとるには、どのような条件を満たせばいいのかをご存知でしょうか?
遺族年金はいくつか種類があり、それぞれに条件があるため、正しく知っておく必要があります。
そこで今回は、遺族年金の種類と受給の条件について解説します。
目次
1.遺族年金の種類
遺族年金は、年金加入者が亡くなった場合に、生活保障のためにその遺族が受けとることができるものです。
遺族年金には、遺族厚生年金と遺族基礎年金の2種類があります(※)。
遺族基礎年金 | 亡くなった人が国民年金に加入していた場合に遺族が受けとることができる |
---|---|
遺族厚生年金 | 亡くなった人が会社員や公務員などで、厚生年金に加入していた場合に遺族が受けとることができる |
会社員や公務員などのご遺族は、一定の条件を満たすことで遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受けとることができます。
※ 2015年9月30日までは遺族共済年金を含め3種類でした。
2.遺族基礎年金の受給条件
最初に、遺族基礎年金の受給条件を解説します。受給条件には、亡くなった年金加入者のものと、受給対象者である遺族のものとに大別することができます。
2-1.亡くなった国民年金加入者が満たすべき条件
遺族基礎年金が支給されるためには、所定の保険料を納付しており、亡くなった年金加入者が以下のいずれかに該当している必要があります(国民年金法37条)。
- 国民年金の被保険者であった
- 被保険者でなくなって以降は、日本国内に住所がある60歳以上65歳未満であった
- 老齢基礎年金の受給権利者であった
- 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていた
1.か2.を満たす場合には、国民年金をちゃんと納付していた証するために、次のいずれかに該当する必要があります。
- 死亡日の前日に、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の2/3以上ある
- 死亡日が2026年3月末日までのときに、死亡した年金加入者が65歳未満であれば、死亡日の前日に、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納ががない
また、3.か4.の条件を満たす場合には、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間(※)を合算した期間が25年以上である必要があります。
※ 合算対象期間:老齢基礎年金の受給資格期間を計算する際に、期間の計算には入れるが、年金額には反映されない期間。
2-2.遺族基礎年金の受給対象者の条件
遺族基礎年金を受け取るために遺族が満たすべき条件は、以下の通りです(国民年金法37条の2第1項)。
受給対象者に共通する「生活維持要件」
受給対象者に共通する資格は、「亡くなった年金加入者によって生計を維持されていたこと」です。
具体的には、以下いずれかの条件です。
- 年金加入者と住民票上同一世帯に属していた
- 年金加入者とは住民票上世帯を異にしているが、住民票上住所が同一
住所が住民票上異なっているた場合には、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 生活を共にし、かつ、家計を一つにしていると認められる
又は - 止むを得ない事情により住所が住民票上異なっているが、次のような事実が認められ、その事情が消滅したときは、生活を共にし、家計を一つにすると認められるとき
・生活費、療養費等の経済的な援助が行われていること
・定期的に音信、訪問が行われていること
など
同時に、配偶者の収入についても、以下のいずれかの条件を満たさなければなりません。
- 年収が850万円未満
- 前年の年間所得655.5万円未満
- 一時的な所得がある場合は、一時的な所得を除いた後、前年の収入が年額850万円未満又は前年の年間所得が年額655.5円未満
- 定年退職などの事情により概ね5年以内に収入が850万円又は年間所得が655.5円未満になる
【参考】「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて〔国民年金法〕|厚生労働省
受給対象者ごとの条件
対象者 | 受給条件 |
---|---|
配偶者 | 下記の条件を満たす子を持つ配偶者 |
子 | 次のいずれかに該当する結婚していない子であること
|
なお、母親が保険者の死亡時に妊娠しており無事に出生した場合には、子として認められ、子のある配偶者となります(国民年金法37条の2第2項)。
2-3.遺族基礎年金が受給停止となる場合
ただし、配偶者が以下に該当すると、受給権を失い、受給が停止されます。
- 亡くなったとき
- 結婚したとき(内縁関係含む)
- 直系血族・直系姻族以外の者の養子になったとき
また、子が以下に該当する場合には、子も配偶者も受給権を失います。
- 亡くなったとき
- 結婚したとき(内縁関係含む)
- 直系血族・直系姻族以外の者の養子になったとき
- 亡くなった年金加入者と離縁したとき
2-4.チャートでわかる遺族基礎年金の受給の可否
ここまでの話を整理すると、以下のチャートとなります。
3.遺族厚生年金の受給条件
次に、遺族厚生年金の受給資格です。こちらも年金加入者と受給対象者との条件に大別されます。
3-1.亡くなった厚生年金加入者が満たすべき条件
遺族厚生年金が支給されるには、所定の保険料を納付しており、かつ亡くなった年金加入者が以下のいずれかに該当している必要があります(厚生年金保険法58条)。
- 厚生年金の被保険者である間に亡くなった
- 厚生年金の被保険者期間中の傷病により期間中に初診日があり、被保険者でなくなって以降、初診日から5年以内に亡くなった
- 1級・2級の障害厚生年金を受給中に亡くなった
- 老齢厚生年金の受給資格を有していた
- 老齢厚生年金の受給権者だった
ただし、1.か2.の条件を満たす場合には、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 死亡日の前日にて、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること
- 死亡日が2026年3月末日までのときに、死亡した被保険者が65歳未満であれば、死亡日の前日に、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない
また、4.の条件を満たす場合には、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間(※)を合算した期間が25年以上である必要があります。
3-2.遺族厚生年金の受給対象者が満たすべき条件
遺族厚生年金は、亡くなった被保険者が上記の条件を満たしていても、受給対象者が以下の条件を満たしていなければ受け取ることができません(厚生年金保険法59条1項)。
受給対象者に共通する資格
遺族が遺族厚生年金を受給するために共通する条件は、遺族基礎年金と同様に「亡くなった年金加入者によって生計を維持されていたこと」です。
受給対象者ごとの条件
対象者 | 受給条件 |
---|---|
妻 | 特になし |
子・孫 | 次のいずれかに該当する結婚していない子であること
|
夫 | 配偶者の死亡時に55歳以上 |
父母・祖父母 | 被相続人の死亡時に55歳以上だったこと |
受給対象者の順位
受給対象者には次の通り、法定相続人とは異なる順位があり、より高い順位にある人が実際に受給することになります(厚生年金保険法59条2項)。
- 子のある妻
- 子のある55歳以上の夫
- 子
- 子のない妻
- 子のない55歳以上の夫
- 55歳以上の父母
- 孫
- 55歳以上の祖父母
ただし、遺族基礎年金を受け取ることができるのは、子・子のある配偶者です。したがって「遺族基礎年金+遺族厚生年金」を受給できるのは、1.~3.に該当する方のみとなります。
3-3.中高齢寡婦加算の受給条件
中高齢寡婦加算には、「子がいない妻」や「子が18歳到達年度の末日を迎えた妻」、「1・2級の障害を持つ子が20歳になった妻」は、遺族基礎年金を受給することができないため、このような状況にある方の生活水準を保護する目的があります。
受給条対象となる妻が、次の条件をすべてを満たすことで、遺族厚生年金に「中高齢寡婦加算」がなされます。
- 夫が亡くなったとき、40歳(※)以上65歳未満
- 生計を同じくしている子がいないこと
※平成19年3月31日以前に夫が亡くなって、遺族厚生年金を受けられている場合は35歳
ここで言う、子は、「18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない、」「20歳未満で障害年金で1級か2級」のいずれかを指します。
また、次の条件に合致する場合にも中高齢寡婦加算がなされます。
40歳(※)に到達した当時、遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達したことや、障害の状態にある子が20歳に達した等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったこと
※平成19年3月31日以前に夫が亡くなって、遺族厚生年金を受けられている場合は35歳
3-4.チャートでわかる遺族厚生年金の受給の可否
では、遺族厚生年金の受給の可否もチャートで整理してみましょう。
3-5.遺族厚生年金が受給停止となる場合
遺族厚生年金を受給していても、以下の場合には受給停止となります。
- 受給者が死亡した場合
- 受給者が直系の尊属や直系の姻族以外の人の養子になった場合
- 受給者が再婚した場合
- 受給者が離縁をしたため、死亡した人と親族で亡くなった場合
- 障害を有する受給権者である子・孫の障害の状態がやんだとき
- 受給権者が父母、孫、祖父母で、被保険者の死亡当時胎児であった子が出生したとき
遺族基礎年金と同様に、無事出生した胎児については、子として認められます(厚生年金保険法59条3項)。
したがって、遺族厚生年金を受給していたのが、父や母、孫や祖父母の場合に胎児が無事出生すると、父や母、孫や祖父母は受給権を失う代わりに、出生した子が受給権者となります。
4.その他遺族に支払われる年金と受給条件
上記でお分かりいただける通り、亡くなった人が自営業等の場合、子供のいない配偶者は遺族年金を受け取ることができない仕組みになっています。
そうなると、自営業等を営んでいた人の配偶者は生活に困ってしまうおそれがあります。
このような場合には、寡婦年金と死亡一時金のいずれかを受け取ることができます。
寡婦年金と死亡一時金は、両方を受けとることは認められず、どちらか一方を選ぶ必要があります。
4-1.寡婦年金の受給条件
寡婦年金を受けとるには、以下の条件すべてを満たさなければなりません(国民年金法49条)。
- 亡くなった夫が10年以上の間国民年金の保険料を納めていた
- 亡くなった夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金などを受給したことがない
- 内縁関係を含む婚姻期間が10年以上続いていた
- 亡くなった夫によって生計が維持されていた
- 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けていない
- 65歳未満の寡婦である
ご覧のように、寡婦年金は、婚姻関係にあったパートナーと死別したり離縁したりした後、再婚せずにいる「寡婦」だけが受け取ることができます。
寡婦年金は、残された妻が60歳から65歳の誕生日を迎えるまで、夫が生きていた場合に受けとれたはずの老齢基礎年金の3/4の金額を受けとることができます。
4-2.死亡一時金の受給条件
死亡一時金は、死亡した年金加入者が以下の条件をすべて満たす場合に受給が可能です。
- 亡くなった被保険者が第1号被保険者(※)であること
- 亡くなった被保険者の年金納付期間が36月以上であること
- 亡くなった被保険者が老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれも受給していない
※自営業者や農漁業者、学生、無職者など。
ただし、遺族が遺族基礎年金を受け取ることができる場合は受け取ることができません(国民年金法52条の2第2項)。
死亡一時金を受け取ることができる遺族の範囲と順位は、亡くなった当時生計を同じくしていた人で、次の通りです(国民年金法52条の3第1項、2項)。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
5.遺族年金を受け取れるケースまとめ
ここまでご説明してきた遺族年金の受給の可否をチャートにまとめると次の通りです(※)。
※チャートは、クリニックすると拡大しますが、下のボタンからPDFをダウンローすることもできます。
しかし、遺族年金や遺族給付の制度は非常に複雑で、何度調べても分からないという場合も少なくありません。
また、記事でご紹介してきた内容のほか、例外的に細かい条件もあります。
遺族年金の受給については専門家に相談することをおすすめします。