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最近、相続税対策として、ご自分の孫を養子にする例が増えているようです。
では、相続において養子を設けることによって、法律上、どのような効果が生じるのでしょうか。以下で詳説します。
目次
子というのは、親との身分関係上、直系卑属と位置づけられる者であり、親権・扶養の対象となり、また相続順位が定められる関係を持つ身分のことです。子は、実子と養子に分けられます。
実子とは、基本的には夫が婚姻中に妻が懐胎した子のことです(民法771条1項)。父及び母と生物学上の血族関係がある者です。さらに、婚姻成立の日から200日を経過した日以後に生まれた子及び離婚等の婚姻の解消又は婚姻の取消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻期間中に生まれた子は、推定が働き反証がない限り、実子とされます(民法772条2項)。なお、このような関係にある親と子を自然血族関係といいます。
養子とは、自然血族に関係になく、法律の規定により、親子関係を結んだ子のことをいいます。養子は、養子縁組という民法で定められたた手続を履践することです。具体的には、後記の普通養子縁組であれば、市役所に届出を行うことにより成立します
養子と養親との親子関係は、縁組の日から生じることになります(縁組の日から養親の嫡出子の地位を得ます。民法809条)。なお、このような関係にある親と子を法定血族関係といいます。そして、この法定血族関係は離縁という制度を利用することにより解消することができます。また養子の氏は基本的には養親の氏を使用することになります(民法810条)。
普通養子とは、後記の特別養子以外の養子をいい、市役所への届出のみで縁組が完了します。ただし、普通養子縁組においても以下のような一定の制約があります。すなわち、養親となろうとする者が成人である必要があります(民法792条)。
また養親となろうとする者からみて尊属又は年長者を養子とすることはできません(民法793条)。さらに結婚している場合には配偶者と共同で縁組をする必要があります(民法795条)。ただし、いわゆる連れ子養子(配偶者の実子を養子とする場合)の場合には共同縁組が不要です。また未成年者を養子とする場合には家庭裁判所の許可が必要となります(民法798条)。
ただし、連れ子養子の場合には当該許可は不要となります。
普通養子縁組が成立すると、養親との間に親族関係が成立することはもちろんですが、実親との間の親族関係は消滅しません。すなわち両者が併存することになるのです。
「藁(わら)の上からの養子」という言葉があります。他人が生んだ新生児をもらった夫婦に実の子として育てられた子のことです。例えば、かつて未成年が望まない出産をして生まれた子を子供に恵まれない夫婦に譲り渡し、その夫婦が実の子として育てることが社会問題になりましました。養子は縁組をしなければ養親となろうとする者との間で親族関係は成立しませんので、その「子」はいつまでも「他人」の子(実子)です。
常識的に考えて、このことが如何に不合理かわかると思います。そこで、昭和62年から特別養子縁組制度を設けて、厳格な要件の下で、実子に近い扱いをすることを認める制度が導入されました。
まず、要件としては特別養子となろうとする者は、原則6歳未満(未就学児)である必要があります(民法817条の2)。
他方養親となろうとする者は、基本的に25歳以上、配偶者と共に縁組をする必要があります(民法817条の3及び同4)。
さらに実親の同意が必要です(民法817条の6)。さらに、6ヶ月の試験養育が必要となります(民法817条の8)。その上で、家庭裁判所の許可があって始めて縁組が成立します(民法817条の2)。
なお、特別養子縁組が成立した場合、養親と養子との親族関係が開始することは当然ですが、実親との親族関係は終了します。つまり縁組後は、特別養子は実親に対する相続権は喪失することになります。
普通養子の場合には、縁組の日から養親の嫡出子の地位を取得しますので、相続においては「子」としての地位を取得します。しかしながら、縁組の日より前に生じた相続については、相続権は有しません。一方、普通養子は、実親との親族関係も有しますので、実親との関係でも「子」としての地位を有します。
ところで、特別養子の場合には普通養子と同様に縁組成立の日から養子の嫡出子としての地位を取得しますので、その日から養親の相続の関係では「子」としての地位を取得しますが、特別養子は縁組成立の日から実親との間の親族関係が終了しますので、その日以降に生じた実親の相続については相続権を有しません。
なお、嫡出子と非嫡出子の相続分は、平成25年9月5日前に生じた相続であれば、非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分の2分の1となり、同日以降に発生した相続分については非嫡出子と嫡出子の相続分は同じになります。(平成25年改正前民法900条、平成25年民法改正附則2号)。
また、養子(以下で特に断らない限りは普通養子及び特別養子の双方を指します。)の子と養親との関係については、養子は縁組の日から養親と親族関係が生じますので、養子の子が縁組の前に出生していた場合には、養親の相続に関して相続権はありません。したがって、遺留分もありません。
他方、養子の子が縁組の後に出生していた場合には、養親の相続に関し相続権及び遺留分を有します。
上記のとおり普通養子及び特別養子は、いずれも縁組成立の日から養親の嫡出子としての地位を有しますので、養親に対する相続については養子は実子と同じ割合で相続します。したがって、養子縁組を行うことは相続人を増やすことを意味します。
このことが後記の相続税の計算に意味を持つことになります。
なお、養子であっても代襲相続人となります。例えば、養子縁組を行った後に、養親が死亡し、その後に養親の親(養子からすると祖父)が死亡した場合、養子は養親の代襲相続人として養親の親を相続します。この場合の相続分は、養親の相続分をそのまま引き継ぐことになります。
例えば、他に2人の人兄弟がある養親に2人の実子と1人の養子がおり、養親が死亡したのちに養親の親(養親の配偶者は既に死亡し、養親の残りの兄弟は存命であるとします。)に相続が発生した場合、養子の相続分は養親の相続分3分の1×養子の相続分3分の1=9分の1となります。
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養子(普通養子及び特別養子)も養親の相続人(子)となりますので、遺留分は「子」として相続分の2分の1になります。上記の例でいえば、遺留分は9分の1×2分の1で18分の1となります。
相続税は遺産の額から基礎控除を控除した額を基礎として算定されます。そして基礎控除の計算方法は、相続人の数×600万円+3000万円で計算します。この計算式からすると、相続人が増加すると基礎控除の額が増加することになります。
ところで、養子も子として相続人の地位を有しますので、縁組が成立すれば、相続人の数が増えるので、基礎控除の額も増えることになります。したがって、養子を増加させることで相続税を減少させることが可能となります。
しかしながら、この方法は、税負担の不当な回避を招きます。ややもすると、相続開始直前に例えば多数の孫を養子として縁組することで相続税の基礎控除の増加を招き、相続税の不当な回避を招くことになるのです。
そこで、相続税法は、被相続人に実子がいない場合には基礎控除の基礎となる養子は2名まで算入を認め、他方被相続人に実子がいる場合には養子は1名まで算入を認める、という制限をして、基礎控除の算定の基礎となる養子を限定することにしました。また、養子が特別養子の場合及び、いわゆる代襲相続の場合には、実子とみなされることにされています。
孫養子のように、被相続人と一親等の血族ではない者(かつ被相続人の配偶者ではない者)が遺産を取得した場合には、その者の相続税については、2割加算されることになります。
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以上のとおり、養子と相続というのは思ったよりも複雑で、高度の法律知識を要します。また相続税の関係も絡んでくるので、税務知識も必要となります。そうすると、具体的な案件の実行については法律の専門家である弁護士や税務の専門家である税理士のアドバイスを受けることを強くお勧めします。
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