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死亡一時金とは|誰が、いくらもらえる?2年の時効にも注意
親族が亡くなられたとき、死亡一時金が支給される可能性があります。
ただし、記事中でもご紹介しますが、死亡一時金は2年以内に請求しないと受け取ることができなくなってしまうなど、注意するべき点もあります。
もらえるお金をもらわず、思わぬ損をしてしまうことのないよう、ぜひこの記事を参考にしてください。
(※本記事の情報は2020年9月30日現在の制度に基づいています。)
目次
1.死亡一時金は誰がもらえる?|受け取るための要件
死亡一時金とは、これからご説明する要件を満たしたときに、遺族に対して支払われるお金のことです(国民年金法52条の2)。
その要件は、亡くなった人側と、死亡一時金の給付を受ける人側のそれぞれにあります。
亡くなった人の要件
まず、死亡した人について、以下の2つの要件を満たさなくてはなりません。
- 【要件1】亡くなった人が、国民年金の「第1号被保険者」として国民年金保険料を36ヶ月以上納めていた
- 【要件2】亡くなった人が、老齢基礎年金・障害基礎年金のどちらも給付されたことがない
では、2つの要件をそれぞれ詳しくみていきましょう。
【要件1】国民年金の「第1号被保険者」として国民年金保険料を36ヶ月以上納めていた
自営業者・学生・無職の人など、国民年金に加入している人を、第1号被保険者といいます。(⇔サラリーマンや公務員は第2号被保険者といい、厚生年金に加入しています。)
なお、任意加入被保険者も第1号被保険者に含まれます。
死亡一時金が受給されるには、亡くなった人が第1号被保険者でなくてはなりません。
また、本人が死亡した月の前月まで数えて、以下の月数を合算した月数が36月以上である必要があります。
- 保険料納付済み期間の月数
- 保険料1/4免除期間の月数の3/4に相当する月数
- 保険料半額免除期間の月数の1/2に相当する月数
- 保険料3/4免除期間の月数の1/4に相当する月数
【要件2】老齢基礎年金・障害基礎年金のどちらも給付されたことがない
さらに、亡くなった方が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取ったことがある場合には、死亡一時金は支給されません。
そもそも死亡一時金の制度趣旨は、被保険者が年金を受け取らずに亡くなり、保険料の掛け捨てになってしまうのを防止するところにあります。
遺族側の要件|誰に受給権がある?
亡くなった人側だけではなく、遺族側にも要件があります。
死亡一時金を受給できる遺族は、亡くなった人の死亡当時に、その人と生計を同じくしていた者に限られます(52条の3)。
また、遺族全員がもらえるわけではなく、次の順で優先順位が決められています。
- 配偶者
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
先順位の人が死亡一時金の給付を受ける場合には、後順位の人はもらえません。
「生計を同じくしていた」とは
「生計を同じくしていた」というためには、原則として、住民票上の住所が同一であったり実際に同居していたりすることが必要です。
ただし、別居していても直ちに死亡一時金がもらえなくなるわけではありません。
別居していても、例えば単身赴任や子供の通学のためなどやむをえない事情があり、かつ、仕送りをしているなど経済的支援が認められる場合には、生計同一といえます。
遺族基礎年金の受給権がある人がいると死亡一時金はもらえない
また、遺族の中に、遺族基礎年金を受け取ることができる人がいる場合には、死亡一時金は給付されません。
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人が亡くなったときに、死亡した人によって生計を維持されていた、子のある配偶者または子に支給されるお金です。
ここでいう「子」とは、18歳到達年度の3月31日を経過していない子もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子に限られます。
いろいろある「〇〇年金」まとめ
死亡一時金の説明のはずが、「〇〇年金」がたくさん出てきましたね。
年金の種類は多いので、ここで簡単に整理しておきます。
すでにご存知の方は、読み飛ばしてください。
- 老齢基礎年金:60歳になるまで国民年金保険料を支払うことで(一般的には、誕生日の前月までの支払い)65歳以降に支給されます。
- 障害基礎年金:①国民年金に加入している間、または②20歳になる前(=年金制度に加入する前)、もしくは③60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)のいずれかに初診日のある病気やけがが原因で、法令により定められた障害者等級1級・2級に相当する障害の状態にあるときに支給されます。
- 遺族基礎年金:国民年金保険の被保険者が亡くなったときに、子のいる配偶者または子に対して支給されます。
2.死亡一時金の金額|いくらもらえる?
死亡一時金はいくらもらえるのでしょうか。
受け取れる金額は、亡くなった人が納めていた保険料によって変わります。
下記※を合算した月数 | 基本額 |
---|---|
36月以上180月未満 | 120,000円 |
180月以上240月未満 | 145,000円 |
240月以上300月未満 | 170,000円 |
300月以上360月未満 | 220,000円 |
360月以上420月未満 | 270,000円 |
420月以上 | 320,000円 |
※①保険料納付済み期間の月数、②保険料1/4免除期間の月数の3/4に相当する月数、③保険料半額免除期間の月数の1/2に相当する月数、④保険料3/4免除期間の月数の1/4に相当する月数
3.寡婦年金との違い
死亡一時金と混同してしまいがちなものに、寡婦年金があります。
なお、寡婦年金は年金ですが、死亡一時金は年金ではありません。
寡婦年金とは
寡婦年金は、夫が第1号被保険者として10年以上(2017年8月1日以降死亡の場合)保険料を納め、死亡時点で婚姻関係が10年以上続いており、夫によって生計を維持されていた65歳未満の妻に対して支払われます。
妻が60歳~65歳の間、支給されます。
もらえる金額は、夫が第1号被保険者だった期間について計算した老齢基礎年金額の4分の3に相当します。
寡婦年金か死亡一時金かは、二者択一です。
両方受け取ることはできません。
「生計維持」と「生計同一」の違い
寡婦年金では「妻が夫によって生計を維持されていたこと」が必要とされていますが、死亡一時金では「生計を同一にしていたこと」が遺族に求められましたね。
「生計維持」と「生計同一」は何が違うのでしょうか。
「生計が維持されていた」というためには、生計を同じくしていること(生計同一)に加えて、さらに、本人(寡婦年金でいえば、妻)の収入が一定未満であることを必要とします。
具体的には、前年の収入が850万円未満、または所得額が655万5千円未満の場合です。
「生計同一」は、本人の収入額は問いません。
4.死亡一時金には2年の時効がある?
死亡一時金は、死亡日の翌日から数えて2年以内に請求しなければならないという時効があります。
支給を希望する場合は、誤って期限を過ぎないように注意してください。
なお、失踪宣告を受けた人については「失踪宣告の審判の確定日の翌日から数えて2年」でよいとされています。
また、東日本大震災の被災者の死亡一時金については、死亡届が受理された日の翌日から2年以内の請求であれば死亡一時金が支給されます。
5.死亡一時金の請求手続きの流れ
死亡一時金を請求するには、住所地の市町村役場の窓口か、年金事務所、年金相談センターのいずれかに必要書類を提出します。
必ず必要となる書類
必要書類 | 備考 |
---|---|
国民年金死亡一時金請求書 | 住所地の市町村役場の窓口、年金事務所、年金相談センターに備え付け |
亡くなった方の年金手帳 | 提出できないときは理由書 |
戸籍謄本(記載事項証明書) | |
亡くなった方の住民票の除票および請求者の世帯全員の住民票の写し | |
受取先金融機関の通帳など | |
印鑑 | 認印も可 |
【参考】日本年金機構
6.まとめ
本記事では、死亡一時金について解説しました。
死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を納めた月数等の合算が36月以上の人が、年金の給付を受けずに亡くなったときに、遺族に支払われます。
ただし、遺族側の条件として、生前、本人と生計を同一にしていたことが必要です。
また、配偶者→子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順で、優先的に支給されます。
加えて、死亡一時金は、原則として、亡くなった人の死亡日の翌日から数えて2年以内に請求しなければならないという時効があります。
身近な人が亡くなってすぐにお金のことを考えるのは少し憚られるという方もいらっしゃるかもしれませんが、思わぬ損をしてしまってはいけません。
ご自分が死亡一時金の支給対象になるかどうか、まずは確認し、対象であれば、請求の準備をしましょう。