死亡一時金とは|誰が、いくらもらえる?2年の時効にも注意
死亡一時金は、国民保険に加入していた人が老齢基礎年金や障害基礎年金のどちらも受け取らずに亡くなったとき、その人と生計…[続きを読む]
寡婦年金は、夫と死別した妻に支払われる年金のことです。
長い間専業主婦で、旦那さんに経済的に支えてもらっていた方にとっては、今後旦那さんがいなくなった生活のことを考えると、大変ありがたい制度かもしれません。
しかし、寡婦年金をもらうには、受給資格を満たすことが必要で、注意点もあります。
本記事では、寡婦年金を一からわかりやすく解説します。
目次
寡婦年金とは、夫に生計を維持されていた妻が夫に先立たれたときに、60~65歳の間、支給される年金です。
60~65歳という期間が定められているのは、通常、定年退職するのが60歳なのに加えて、65歳からは老齢基礎年金が支給されるためです。収入が得られない間を補償してくれます。
また、寡婦年金はあくまで「妻」のための制度です。
妻と死別しても夫はもらえません。
寡婦年金をもらうには、死亡者側(夫)と受給者側(妻)、それぞれに要件があります(国民年金法49条)。
※第1号被保険者というのは、国民年金に加入している自営業・学生・無職の方などを指します。
生計を維持されていたといえるためには、①生計を同一にしていて、かつ、②収入額が一定以下であることが必要です。
①について、住民票上の世帯が一緒であったり、実際に同居していたりすると、生計を同一にしていたと認められます。ただし、転勤などの別居しなければならない事情があったり、経済的な支援をしていたりすれば、別居状態にあっても生計同一といえるでしょう。
さらに、②一定以下の収入とは、前年度の収入額が850万円未満、もしくは所得が655万5千円以下であるということです。
受給資格が分かったところで、気になる支給期間と金額についても見ていきましょう。
繰り返しますが、寡婦年金が支給されるのは、妻が60歳~65歳の間です。
支給開始時期としては、正確に言うと以下の通りになります。
夫死亡当時の妻の年齢 | 支給開始時期 |
---|---|
夫の死亡当時、妻が60歳未満 | 60歳になった月の翌月から、支給が開始されます。 |
夫の死亡当時、妻が60歳以上65歳未満 | 夫が死亡した月の翌月から、支給が開始されます。 |
夫の死亡当時、妻が65歳を超えている | 老齢基礎年金をもらっているはずなので、寡婦年金はもらえません。 |
上記で、受給資格と支給期間についてご説明しました。
しかしながら、以下にあてはまった場合には、妻はその受給権を失います(国民年金法51条)。
それでは、寡婦年金の制度では、いくらくらいもらえるのでしょうか。
寡婦年金でもらえる金額は、夫が生きていれば受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3の額(※)あたります。
※:正確には、死亡日の属する月の前月までの第一号被保険者としての被保険者期間について計算した老齢基礎年金の4分の3
たとえば、令和2年の老齢基礎年金の満額は781,700円(年)なので、これの4分の3で、寡婦年金は586,275円(年)になります。
なお、老齢基礎年金の満額は、毎年のように変更されます。
寡婦年金の請求には原則として5年以内、という時効があります(国民年金法102条1項)。
「支給すべき事由が生じた日(夫の死亡)の翌日から5年以内」なので、実際に受給するのはまだ先であっても、手続きだけは急ぎましょう。
寡婦年金を請求するには、住所地の市町村役場の窓口か、または年金事務所や年金相談センターに、必要書類を提出します。
必ず必要書類は、主に以下の書類です。
必要書類 | 備考 |
---|---|
年金請求書 | 住所地の市区町村役場・年金事務所・年金相談センターの窓口で取得 |
年金手帳 | 提出できないときはその理由書 |
戸籍謄本(記載事項証明書) | 夫が亡くなってから提出日6ヶ月以内に公布されたもの |
世帯全員の住民票の写し | |
夫の住民票の除票 | 世帯全員の住民票の写しに含まれていれば不要 |
請求者(妻)の収入を確認できる書類 | 所得証明書や源泉徴収票など |
受取先金融機関の通帳など | |
年金証書 | 年金を受けている場合 |
印鑑 | 認印可 |
この他にも、事故や事件など、第三者が関わって夫が亡くなった場合などは、追加書類が必要になることがあります。
【参考】日本年金機構:寡婦年金を受けるとき
年金には、寡婦年金以外にも、いろいろな種類があります。
大前提として、「一人一年金」が原則なので、寡婦年金とその他の年金を同時に受給することはできません。
以下で、他の遺族年金(死亡一時金・遺族基礎年金)との関係を整理しておきましょう。
死亡一時金とは、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上の人が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに亡くなった場合に、その人に生計を維持されていた遺族に支払われるお金です。
一回きりの支給なので年金ではありません。
死亡一時金と寡婦年金は併給ができないので、受給者はどちらか片方を選択しなければなりません。
通常、寡婦年金のほうが死亡一時金よりも金額が大きいため、寡婦年金を選択することが多いでしょう。
遺族基礎年金とは、国民年金に加入中の人や、老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上の人などが亡くなったとき、その人に生計を維持されていた、子のある配偶者または子に対して給付される年金です(※)。
※ここでいう「子」とは、18歳(障害等級1級または2級の障害を持つ子なら20歳)に到達する年度の3月31日を経過しておらず、かつ、婚姻していないことを必要とします。
遺族基礎年金と寡婦年金も、同時に受け取ることはできません。
ただし、遺族基礎年金は、子供が18歳(障害等級1級または2級の子供は20歳)に到達した年度の末日が経過すると支給が停止します。
遺族基礎年金が支給されなくなった後に寡婦年金に切り替えることは可能です。
最後に、寡婦年金の受給者がぜひ知っておいたほうがお得な制度について、簡単に解説しておきます。
寡婦年金を受給している人は、「マル優」や「特別マル優」が利用することができます。
マル優とは、元本350万円までの預貯金について、利子を非課税にするものです。
ただし、銀行によって取り扱いも違う可能性があるので、事前に確認してください。
特別マル優とは、国債と地方債の額面350万円までの利子が非課税にできるものです。
それぞれ、マル優か特別マル優かによって「預貯金等」「国債等」と、扱う金融商品が異なります。
マル優と特別マル優とを組み合わせることも可能で、最大700万円までは利息非課税にすることができます。
いずれにせよ、知っておいて損はない制度ですから、ぜひご参考にしてください。
寡婦年金は、夫と死亡した妻に対して60~65歳の間に支払われる年金ですが、本記事でご説明した通り、給付を受けるには、夫側にも妻側にも様々な要件があります。
夫側には、国民年金の被保険者として10年以上(平成29年8月1日より前に死亡の場合は25年以上)保険料を納めていることが必要とされます。また、障害基礎年金の受給権者だったことがあったり、老齢基礎年金を受け取ったことがあったりすると、もらえません。
一方、妻は、夫に生計を維持されていたことと、10年以上婚姻関係にあることが必要です。
さらに、上記の条件を満たしても、妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給していたり、再婚してしまったりすると、寡婦年金の受給権が消滅してしまう点にご注意ください。
また、寡婦年金の支給を希望する場合は、夫が亡くなってから5年以内に請求することを忘れないようにしましょう。
年金は、その他の給付金との兼ね合いや、金額の計算が複雑です。
素人の方が正確に理解するのは難しい部分もあるかと思いますので、少しでも不安のある場合は、専門家にご相談されることをおすすめします。