遺族基礎年金とは|受給資格や金額、期間をケースで分かりやすく解説
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が亡くなったとき、その遺族のうち、子のある配偶者または子自身に支給される年金です。…[続きを読む]
日本の遺族年金制度には、遺族基礎年金・遺族厚生年金・寡婦年金・死亡一時金などがあります。
名前を聞いただけでは、誰がいくらもらえるお金なのか、全くわからないですよね。
本記事では、それぞれの年金について、給付対象となる人や、その金額を解説します。
特にわかりやすいように実際のシミュレーションも記載するので、ぜひご参考にしてください。
一口に遺族年金と言ってもその種類は様々です。
一般的に遺族年金というと「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」を指しますが、寡婦年金や死亡一時金なども遺族年金の一部とされています。
まずはそれぞれの年金制度の概要について簡単に説明します。
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者(第1号被保険者)であった方が亡くなった場合に支給される年金です。
遺族基礎年金を受給するためには、「死亡した方に生計を維持されていた」ということが前提条件です。
生計を維持されていたかどうかは、遺族基礎年金を受給する方の前年の収入が850万円未満(所得の場合は655万5千円未満)といった点で判定されます。
そのうえで、受給資格を持つ方は次の方になります。
さらに、上記でいう「子ども」にも次の要件があります。
死亡者側にもいくつか要件が規定されていますので、詳細は別記事をご参照ください。
遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者(第2号被保険者)であった方が亡くなった場合に支給される年金です。
遺族厚生年金の受給対象者も、「死亡した方に生計を維持されていた」ということが前提条件となります。そのうえで、受給資格を持つ方は次の方になります。
ここでいう子どもの要件は、遺族基礎年金の要件と同様です。
遺族基礎年金の受給資格者と比較すると、子どもがいない配偶者にも支給される点が異なります。また、父母、祖父母、孫と受給対象者の範囲が広いことが分かります。
しかし対象者には受給順位が定められています。
順位は「配偶者→子→父母→孫→祖父母」の順となり、父母・孫・祖父母は、順位の上位者が受給権を取得した場合には受給対象者から外れます。
年金は「1人1年金」が原則ですが、遺族基礎年金と遺族厚生年金は「遺族年金」という支給事由が同じであるため、1つの年金とみなされ併給することが可能です。
寡婦年金とは、国民年金を継続して10年以上納めていた(免除期間を含む)夫が亡くなった場合に、その夫と同一生計であった妻に支給される年金です。
なお、妻はその夫と10年以上継続して婚姻関係にあったことが条件となります。また、内縁の妻も寡婦年金の受給対象者に含まれます。
寡婦年金の支給期間は、妻の年齢が60歳~65歳になるまでの期間です。また「一人一年金」の原則により、他の年金や死亡一時金との併給はできないこととなっています。
死亡一時金とは、国民年金の被保険者(第1号被保険者)または任意加入保険者であった方が亡くなった場合に支給される年金です。
死亡一時金を受給するためには、国民年金保険料を36か月以上(免除期間を含む)納付していることが条件となっています。
また、死亡一時金は、死亡した本人が老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していなかった場合に、その遺族に受給権が生じます。
死亡一時金の受給対象者は「死亡した方に生計を維持されていた」方で、優先順に配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となります。
死亡一時金の支給金額は保険料の納付月数に応じて12~32万円の範囲で設定されています。
なお、死亡一時金は遺族基礎年金を受給できる方には支給されません。
令和2年4月時点での遺族基礎年金の支給額は一律で781,700円となっています。
この基本額に子どもの人数分の金額が加算されます。
その加算金額ですが、第1子と第2子はそれぞれ224,900円です。
第3子以降はそれぞれ75,000円が加算されます。
例えば子どもが3人いる配偶者の遺族基礎年金の年間受給額は、以下のように計算されます。
なお、配偶者がおらず、遺族が子どものみの場合にも遺族基礎年金は支給されます。
ケース別の支給額は下記の表を参考にしてください。
子の人数 | 基本額 | 加算額 | 合計額 | |
---|---|---|---|---|
配偶者に支給される年金額 | 1人 | 781,700円 | 224,900円 | 1,006,600円 |
2人 | 781,700円 | 449,800円 | 1,231,500円 | |
3人 | 781,700円 | 524,800円 | 1,306,500円 | |
子どものみに支給される年金額 | 1人 | 781,700円 | なし | 781,700円 |
2人 | 781,700円 | 224,900円 | 1,006,600円 | |
3人 | 781,700円 | 299,900円 | 1,081,600円 |
遺族厚生年金の金額は、簡単に言えば老齢厚生年金の3/4の金額となります。
令和2年4月分以降の報酬比例部分の年金額は(1)の式によって計算された金額です。ただし、(1)の金額よりも(2)の式で計算した金額が上回る場合には、(2)の金額が年金支給額となります。
遺族厚生年金の計算式
(1)報酬比例部分の年金額(本来水準)
{ [平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入月数]+[平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数] }×3/4
(2)報酬比例部分の年金額(従前額保障)
{[平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの被保険者期間の月数]+[平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数]}×1.002(※)×3/4
(※)昭和13年4月2日以降に生まれた方は1.000
なお、上記計算式中の「被保険者期間の月数」は、厚生年金加入期間が25年未満の場合には25年加入していたとみなされます。
例えば加入期間が10年であったとしても25年加入していたものとして計算できるということです。
なお、正確な加入月数はねんきん定期便のハガキ等で確認できます。
遺族厚生年金の支給額の計算式が難しく感じる方は、下記の年金支給額目安表を参考にしてください。
<平均月収別の遺族厚生年金概算支給額>
平均月収(平均標準報酬月額) | 概算支給額(年額) |
---|---|
20万円 | 約25万円 |
30万円 | 約37万円 |
40万円 | 約49万円 |
50万円 | 約61万円 |
60万円 | 約74万円 |
※平均月収は賞与の金額を含めた金額です。
※計算は全て「報酬比例部分の年金額(本来水準)」の計算式で計算しています。
※厚生年金の加入期間は25年として計算しています。
寡婦年金の支給額は、夫が国民年金の被保険者(第1号被保険者)であった期間について計算した老齢基礎年金の金額の4分の3となります。
令和2年度の老齢基礎年金の満額は年間781,700円なので、その年額の4分の3が寡婦年金の受給額となります。
死亡一時金の金額は、国民年金保険料の納付済み月数(免除期間を含む)の合計月数によって以下の通り「12万円~32万円」の範囲で定められています。
納付済月数 | 支給額 |
---|---|
36月以上180月未満 | 20,000円 |
180月以上240月未満 | 145,000円 |
240月以上300月未満 | 170,000円 |
300月以上360月未満 | 220,000円 |
360月以上420月未満 | 270,000円 |
420月以上 | 320,000円 |
なお、付加保険料の納付済み月数が36か月以上ある方は、上記表の金額に一律8,500円が加算されます。
ここまで遺族基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金、死亡一時金と4つの遺族年金について解説してきました。
では、これらの年金は併給することができるのでしょうか?
上でも多少触れていますが、改めて確認しておきましょう。
結論から言うと、併給できるのは「遺族基礎年金+遺族厚生年金」の組み合わせだけです。
それ以外の年金は「一人一年金」の受給となります。
なお、遺族基礎年金と寡婦年金は併給できませんが、年金の支給時期が被っていなければ両方の年金を受給することができます。
遺族基礎年金の支給が開始されるのは、被保険者が死亡した日の翌月からとなります。
一方、子どもが18歳になった年度の末日(障害等級1級、2級の子の場合は20歳)を経過すると、遺族基礎年金の支給が打ち切られます。
子どもが複数いる家庭の場合、子どもが18歳になった年度の末日を迎えるたびにその子ども分の支給額が減額され、一番下の子どもが18に到達した年度の末日に年金の支給が打ち切られることになります。
遺族厚生年金の支給期間は、年齢や子どもの有無、受給者によって異なります。
具体的な支給期間は次の表のとおりです。
受給者 | 支給期間 |
---|---|
30歳以上もしくは子どものいる妻 | 生涯 |
子どものいない30歳未満の妻 | 5年間 |
子ども、孫 | 18歳到達年度の末日まで |
障害等級1級・2級の子ども | 孫20歳まで |
夫、父母、祖父母 | 60歳から |
30歳未満で子どもがいない妻の支給期間が5年間と短い理由は、就業がしやすい環境であることや、再婚の可能性等を踏まえてのことです。
中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金の支給額に加えて、40歳~65歳の期間中は年額586,300円(令和2年度)を加算して受給することができる制度です。
65歳以降は老齢基礎年金の支給が開始されるため、中高齢寡婦加算は打ち切られます。
中高齢寡婦加算を受給するためには、次のいずれかの要件を満たしている必要があります。
遺族基礎年金と遺族厚生年金は併給することができますが、「子どもがいない妻」「子どもが18歳到達年度の末日を迎えた妻」は遺族基礎年金を受給することができません。
中高齢寡婦加算には、このような状況にある人の生活水準を保護する目的があります。
寡婦年金の支給期間は60歳~65歳の期間です。
死亡一時金は継続して支給されるものではなく、1回の給付のみとなります。
ここからは具体的なモデルケースを用いて年金支給額と支給時期のシミュレーションを示します。
今回は以下の3つのケースを紹介します。
夫が自営業者であった場合など、国民年金の加入者であった場合には、遺族に対して遺族基礎年金が支給されます。具体的な年金支給額と支給期間は次の流れとなります。
子どもがいる妻であるため、第1子が18歳到達年度の末日を迎えるまでは、遺族基礎年金の基本額と子ども2人分の加算額が支給されます。
781,700円(基本額)+224,900円(第1子分)+224,900円(第2子分)=1,231,500円(年額)
妻が42歳の時点で、第1子が18歳を迎えます。したがって死亡時点の受給額から第1子分の加算分を差し引いた遺族基礎年金が支給されます。
781,700円(基本額)+224,900円(第2子分)=1,006,600円(年額)
妻が50歳の時点で第2子も18歳に到達しました。子どもが全員18歳に到達した年度の末日以後は遺族基礎年金の支給は停止されます。また、中高齢寡婦加算は厚生年金の加入者が受給できるものであるため、このケースでは支給されません。よって、この期間は年金の支給が無いこととなります。
妻が65歳になると老齢基礎年金の支給が開始されます。老齢基礎年金は満額で年額781,700円を受給することができます。
夫が厚生年金の加入者であったため、遺族厚生年金が支給されます。子どもがいないため遺族基礎年金は支給されませんが、代わりに中高齢寡婦加算を受けることができます。
遺族厚生年金の支給額の計算は、上述の目安表の金額を使用しています。
610,000円(遺族厚生年金)+586,300円(中高齢寡婦加算)=1,196,300円(年額)
遺族厚生年金は生涯支給されるため、65歳以降も継続して受給することができます。加えて、老齢基礎年金の支給も開始されます。
610,000円(遺族厚生年金)+ 781,700円(老齢基礎年金)=1,391,700円(年額)
遺族厚生年金の受給者が母のケースは「死亡時点で55歳以上」「支給開始は60歳から」というルールがあります。このケースでは死亡時点で母の年齢が70歳であるため、遺族厚生年金をすぐに受給することができます。
加えて、本人の老齢基礎年金も併せて支給されます。
490,000円(遺族厚生年金)+ 781,700円(老齢基礎年金)=1,271,700円(年額)
この記事では遺族年金制度について解説してきました。
遺族年金には遺族基礎年金・遺族厚生年金・寡婦年金・死亡一時金と様々な種類があり、どの年金を受給することができるのか、また受給するための要件はどのようなものなのか、あなた自身のケースに当てはめて考えてみてください。
特に多くの方が受給対象となるであろう遺族基礎年金、遺族厚生年金については要件等をしっかり押さえておきましょう。
遺族基礎年金は18歳未満の子どもがいる配偶者が受給対象であり、遺族厚生年金は妻の年齢や子どもの有無によって支給期間が大きく変わるといった点は大きなポイントです。
モデルケースでも示したように、人によっては遺族年金の支給額が十分ではない時期があることも考えられます。
将来の年金支給額を計算したうえでライフプランを立ててみてください。