遺族基礎年金とは|受給資格や金額、期間をケースで分かりやすく解説
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が亡くなったとき、その遺族のうち、子のある配偶者または子自身に支給される年金です。…[続きを読む]
遺族年金には、遺族基礎年金・遺族厚生年金・寡婦年金・死亡一時金などの種類があります。すべて、被相続人が亡くなると、ご遺族がもらえるお金です。
しかし、名前を聞いただけでは、誰がいくらもらえるのか、全くわからないのが難点です。
そこで、本記事では、それぞれの年金について、給付対象の要件や、その金額を解説します。
特にわかりやすいように実際のシミュレーションも記載するので、ぜひ参考にしてください。
目次
一般的に遺族年金とは、次の「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」を指します。
- 遺族基礎年金
亡くなった方が国民年金の被保険者だった場合に、遺族が受給- 遺族厚生年金
亡くなった方が厚生年金の被保険者だった場合に、遺族が受給
遺族基礎年金・遺族厚生年金を受給するためには、いずれも受給者が「死亡した方に生計を維持されていた」という要件を満たさなければなりません。
生計を維持されていたかどうかは、次の事実によって判断されます。
遺族年金の受給要件
- 亡くなった方と同居していた(※)
- 年収が850万円未満
又は- 所得が655万5,000円未満
※同居していなくても、「生活費・療養費などの援助がある」「健康保険の扶養に入っている」「定期的に連絡や訪問がある」などの一定の要件を満たせば受給は可能です。
また、寡婦年金や死亡一時金なども遺族年金の一部とされています。
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者(第1号被保険者)であった方が亡くなった際に支給される年金です。
遺族年金の支給には、次のいずれかの要件を満たすことが求められます。
死亡者側の要件
- 国民年金に加入中であった方
- 国民年金に加入していた方で、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方
- 老齢基礎年金の受給権者である方
- 老齢基礎年金の受給資格を満たした方
遺族基礎年金の、受給できるのは、次の要件を満たす方になります。
受給者の要件
- 子どもがいる配偶者
- 子ども
さらに、上記でいう「子ども」にも次の要件があります。以下のうち
子供の要件
- 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していないこと
または- 20歳未満で、障害年金の障害等級が1級または2級の子ども
かつ- 婚姻していないこと
令和2年4月以降の遺族基礎年金の支給額は一律で、2022年4月以降の額は、777,800円(※)となっています。
※基礎年金の支給額は、年度により変更になる可能性があります。日本年金機構のHPでご確認ください。
この基本額に子どもの人数により次の金額が加算されます。
加算額
- 第1子・第2子:223,800円(2022年4月以降)
- 第3子以降:74,600円(2022年4月以降)
例えば子どもが3人いる配偶者の遺族基礎年金の年間受給額は、以下のように計算されます。
なお、配偶者がおらず、遺族が子どものみの場合にも、同様の計算により遺族基礎年金は支給されます。
ちなみに、下記の表からお分かりの通り、子ども2人の合計額は1,006,600円、3人の合計額は1,077,300円となり、それぞれ2人・3人で等分すると、それぞれ503,300円、359,100円となります。
子の人数 | 基本額 | 加算額 | 合計額 | |
---|---|---|---|---|
配偶者に支給される年金額 | 1人 | 777,800円 | 224,900円 | 1,006,600円 |
2人 | 777,800円 | 449,800円 | 1,227,600円 | |
3人 | 777,800円 | 522,200円 | 1,300,000円 | |
子どものみに支給される年金額 | 1人 | 777,800円 | なし | 777,800円 |
2人 | 777,800円 | 224,900円 | 1,006,600円 | |
3人 | 777,800円 | 299,500円 | 1,077,300円 |
遺族基礎年金の支給が開始されるのは、被保険者が死亡した日の翌月からとなります。
一方、子どもが18歳になった年度の末日(障害等級1級、2級の子の場合は20歳)を経過すると、遺族基礎年金の支給が打ち切られます。
子どもが複数いる家庭の場合、子どもが18歳になった年度の末日を迎えるたびにその子ども分の支給額が減額され、一番下の子どもが18に到達した年度の末日に年金の支給が打ち切られることになります。
ただし、遺族年金の受給権のある18歳到達年度の末日(3月31日)までの子が、障害等級の1級または2級になった場合は、20歳になるまで受給権が延長されます。
遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者(第2号被保険者)であった方が亡くなった場合に支給される年金です。
受給資格を持つ遺族は次の順番で決まります。
遺族基礎年金の受給資格者との違いは、子どもがいない配偶者にも支給される点です。また、父母、祖父母、孫と受給対象者の範囲が広い点も異なります。
しかし対象者には受給順位が定められていまおり、父母・孫・祖父母は、順位が上位の者が受給権を取得した場合には、受給対象者から外れます。
年金は「1人1年金」が原則ですが、遺族基礎年金と遺族厚生年金は「遺族年金」という支給事由が同じであるため、1つの年金とみなされ併給することが可能です。
遺族厚生年金の金額は、簡単に言えば老齢厚生年金の3/4の金額となります。具体的には、次の式によって計算された金額となります。
遺族厚生年金支給額の計算
A.平成15年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額(※1)×7.125/1000(※2)×平成15年3月までの加入月数
B.平成15年4月以降の加入期間
平均標準報酬額(※3)×5.481/1000(※2)×平成15年4月以降の加入月数
(A.+ B.)×3/4
※1:平成15年3月以前の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額
※2:昭和21年4月1日以前に生まれた場合は、給付乗率が異なる
※3:平成15年4月以降の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割って得た額
ただし、65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、上記金額と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額となります。
なお、上記計算式中の「被保険者期間の月数」は、厚生年金加入期間が25年未満の場合には25年(300ヶ月)加入していたとみなされます。
例えば加入期間が10年であったとしても25年加入していたものとして計算できるということです。
なお、正確な加入月数は「ねんきん定期便」のハガキ等でご確認ください。
遺族厚生年金の支給期間は、年齢や子どもの有無、受給者によって異なります。
具体的な支給期間は次の表のとおりです。
受給者 | 支給期間 |
---|---|
30歳以上もしくは子どものいる妻 | 被保険者が死亡した日の翌月から生涯 |
子どものいない30歳未満の妻 | 被保険者が死亡した日の翌月から5年間 |
子ども・孫 | 被保険者が死亡した日の翌月から18歳到達年度の末日まで |
障害等級1級・2級の子ども | 満20歳を超えるまで |
被保険者死亡時55歳以上の夫(※)・父母・祖父母 | 60歳から生涯 |
※ただし、夫は、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限って、55歳から60歳の間であっても受給可能。
30歳未満で子どもがいない妻の支給期間が5年間と短い理由は、就業がしやすい環境であることや、再婚の可能性等を踏まえてのことです。
中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金の支給額に加えて、40歳~65歳の期間中に、2022年4月以降は、年額583,400円を加算して受給することができる制度です。65歳以降は老齢基礎年金の支給が開始されるため、中高齢寡婦加算は打ち切られます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金は併給することができますが、「子どもがいない妻」「子どもが18歳到達年度の末日を迎えた妻」は遺族基礎年金を受給することができません。中高齢寡婦加算には、このような状況にある人の生活水準を保護する目的があります。
中高齢寡婦加算を受給するためには、次のいずれかの要件を満たしている必要があります。
※ 子:18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の障害の状態にある子のいずれかに限る。
では、次の事例で遺族年金がいくらもらえるのかを実際に計算してみましょう。
777,800円(基本額)+224,900円(加算額)=1,006,600円
578,624円+1,006,600円=1,585,224円
妻がもらえる遺族年金は、合計1,585,224円となります。
また、子供が18歳になる年度を経過した後には、遺族基礎年金が支給されなくなる代わりに、中高齢寡婦加算の支給対象となります。
次に、遺族基礎年金、遺族厚生年金以外の遺族年金についてご説明します。
寡婦年金と死亡一時金は、遺族基礎年金の一部の制度であり、遺族基礎年金を受給できない場合に一定の要件に合えば受給することができます。
寡婦年金とは、国民年金を継続して10年以上納めていた(免除期間を含む)夫が亡くなった場合に、その夫と同一生計であった妻に支給される年金です。
寡婦年金は、子が18歳に達するなど遺族基礎年金の受給要件を満たさなくなった場合に、寡婦年金の要件を満たすことで、受給することが可能になります。
なお、妻はその夫と10年以上継続して婚姻関係にあったことが条件となります。また、内縁の妻も寡婦年金の受給対象者に含まれます。
寡婦年金の支給額は、夫が国民年金の被保険者(第1号被保険者)であった期間について計算した老齢基礎年金の金額の4分の3となります。
2022年4月以降の老齢基礎年金の満額は月額6万4,816円、年額77万7,800円なので、その年額の4分の3が寡婦年金の受給額となります。
寡婦年金の支給期間は60歳~65歳の期間です。
死亡一時金とは、国民年金の被保険者(第1号被保険者)または、任意加入保険者であった方が亡くなった場合に支給される年金です。
死亡一時金を受給するためには、国民年金保険料を36か月以上(免除期間を含む)納付していることが条件となっています。
また、死亡一時金は、死亡した本人が老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していなかった場合に、その遺族に受給権が生じます。
死亡一時金の受給対象者は「死亡した方に生計を維持されていた」方で、優先順に配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となります。
死亡一時金の支給金額は保険料の納付月数に応じて12~32万円の範囲で設定されています。
なお、死亡一時金は遺族基礎年金を受給できる方には支給されません。
死亡一時金の金額は、国民年金保険料の納付済み月数(免除期間を含む)の合計月数によって以下の通り「12万円~32万円」の範囲で定められています。
納付済月数 | 支給額 |
---|---|
36月以上180月未満 | 120,000円 |
180月以上240月未満 | 145,000円 |
240月以上300月未満 | 170,000円 |
300月以上360月未満 | 220,000円 |
360月以上420月未満 | 270,000円 |
420月以上 | 320,000円 |
なお、付加保険料の納付済み月数が36か月以上ある方は、上記表の金額に一律8,500円が加算されます。
死亡一時金は継続して支給されるものではなく、1回の給付のみとなります。
以上、遺族基礎年金、遺族厚生年金、寡婦年金、死亡一時金と4つの遺族年金について解説してきました。
では、これらの年金は併給することができるのでしょうか?
結論から言うと、併給できるのは次の組み合わせだけです。
それ以外の年金は「一人一年金」の受給となります。
なお、遺族基礎年金と寡婦年金は併給できませんが、年金の支給時期が被っていなければ両方の年金を受給することができます。
この記事では遺族年金制度について解説してきました。
遺族年金には遺族基礎年金・遺族厚生年金・寡婦年金・死亡一時金と様々な種類があり、どの年金を受給することができるのか、また受給するための要件はどのようなものなのか、ご自分のケースに当てはめて考えてみてください。
特に多くの方が受給対象となるであろう遺族基礎年金・遺族厚生年金については要件等をしっかり押さえておきましょう。
遺族基礎年金は18歳未満の子どもがいる配偶者が受給対象であり、遺族厚生年金は妻の年齢や子どもの有無によって支給期間が大きく変わるといった点は大きなポイントです。
人によっては遺族年金の支給額が十分ではない時期があることも考えられます。
将来の年金支給額を計算したうえでライフプランを立ててみてください。