遺族厚生年金とは|もらえる金額もイラスト解説
遺族厚生年金とは、厚生年金の加入者が死亡した場合などに、遺族が受け取ることのできる年金です。遺族厚生年金を受け取るた…[続きを読む]
遺族基礎年金は、国民年金の加入者が死亡したときに、その者に生計を維持されていた子供のいる配偶者または子どもに給付される年金です。
本記事では、遺族基礎年金をもらうために満たす必要のある要件や、もらえる金額、その支給期間などについて分かりやすく解説します。
目次
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができる年金です。
遺族基礎年金は子どもがいない配偶者などは受給することができません。
したがって「子どものための年金」と言うこともできるでしょう。
遺族基礎年金をもらうためには、死亡者側と受給対象者側、それぞれにいくつかの要件があります。
まずは死亡者側の要件から見ていきましょう。
遺族基礎年金の受給資格を満たすのは、下記のいずれかに該当する方です。
上記の要件のうち、1および2に該当する方についてはさらに以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。
また、3および4に該当する方については、保険料納付済み期間、保険料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が25年以上あることが必要となります。
続いて、受給対象者側の要件を確認していきます。
遺族基礎年金の受給資格を満たすのは、一言でいうと、以下の方です。
これについて、さらに詳しく解説します。
まず、被保険者が死亡した当時において、その死亡者と生計を同じくしていたことが条件です。
さらに「収入が850万円未満(または所得が655万5千円未満)」という収入要件を満たすことが必要です。
この2つが揃うことで「生計を維持されていた」と言えるのです。
配偶者については「子と同一生計であること」も要件となります。ここでいう配偶者には、いわゆる内縁の夫婦も含まれます。
しかし、同一生計である子については配偶者の連れ子などは認められず、実子か、届出がなされている養子であることが要件となります。
なお、被保険者の死亡時点で胎児であった子は、「死亡した者に生計を維持されていた子」として認められます。
もう一点、「子」についても要件があります。ここで言う子とは、婚姻をしていない子に限られます。
さらに、次の要件のいずれかを満たしている必要があります。
遺族基礎年金と混同しやすい「遺族厚生年金」について簡単に解説します。
遺族基礎年金は国民年金の被保険者が死亡した場合に受給できる年金ですが、遺族厚生年金は厚生年金の被保険者が死亡した場合に受給できる年金です。
なお、年金は原則として「1人1年金」です。例えば国民年金と厚生年金の2つ以上の年金受給権が発生した場合は、いずれか1つを選択して受給することになります。
しかし、遺族基礎年金と遺族厚生年金は同じ「遺族年金」という支給事由であり、基礎年金に厚生年金が上乗せされているため、1つの年金とみなされ併給することが可能です。
遺族厚生年金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
遺族基礎年金の支給額は、令和2年4月からは一律で781,700円です。
この金額に、子どもの数に応じた金額が加算されます。
子どもの加算金額は、第1子と第2子まではそれぞれ224,900円、第3子以降はそれぞれ75,000円です。
遺族基礎年金の支給額は毎年改正されるので、最新の情報を把握しておくことが必要です。
遺族基礎年金の支給額をわかりやすく表にまとめましたので、参考にしてください。
子の人数 | 基本額 | 加算額 | 合計額(年間) |
---|---|---|---|
1人 | 781,700円 | 224,900円 | 1,006,600円 |
2人 | 781,700円 | 449,800円 | 1,231,500円 |
3人 | 781,700円 | 524,800円 | 1,306,500円 |
子の人数 | 基本額 | 加算額 | 合計額 |
---|---|---|---|
1人 | 781,700円 | なし | 781,700円 |
2人 | 781,700円 | 224,900円 | 1,006,600円 |
3人 | 781,700円 | 299,900円 | 1,081,600円 |
遺族基礎年金は、被保険者が死亡した日の翌月から支給されます。
気になるのは「いつまで受給できるのか」という点ではないでしょうか。
遺族基礎年金は永久に支給されるものではないため、支給が打ち切りになる要件を把握しておくことが必要です。
遺族基礎年金は、子が18歳(障害等級1級または2級の子供の場合は20歳)になる年度の末日を経過すると支給が打ち切られます。
子どもが複数いる場合には、子どもが18歳になった年度の末日を経過するたびに支給額が減額され、子どもが全員18歳に到達した年度の末日に年金の支給は全て打ち切られます。
遺族基礎年金の支給金額と支給期間について、具体的なモデルケースを用いてより分かりやすく解説します。
このケースでは、年金受給時点では子ども3人分の金額が加算され、子どもの年齢が18歳となった年度の末日ごとに加算額が減額されていきます。
わかりやすくするため、子ども3人が18歳となった年度の末日は「8年後、13年後、15年後」と考えてください。
時期 | 基本額 | 加算額 | 合計額 |
---|---|---|---|
受給開始時~8年間 | 781,700円 | 524,800円 | 1,306,500円 |
9年目~13年目 | 781,700円 | 449,800円 | 1,231,500円 |
14年目~15年目 | 781,700円 | 224,900円 | 1,006,600円 |
16年目~ | 支給なし |
15年目までは子どもの加算額が減少しつつも遺族基礎年金の支給が継続しますが、3人目の子どもが18歳となった年度の末日以後は遺族基礎年金の支給は打ち切られます。
このケースは配偶者がおらず、子どものみが年金を受給します。
このケースでも先ほどと同様に、子どもの年齢が18歳となった年度の末日ごとに加算額が減少していきます。
時期 | 基本額 | 加算額 | 合計額(年間) |
---|---|---|---|
受給開始時~8年間 | 781,700円 | 299,900円 | 1,081,600円 |
9年目~13年目 | 781,700円 | 224,900円 | 1,006,600円 |
14年目~15年目 | 781,700円 | なし | 781,700円 |
16年目~ | 支給なし |
ここからは遺族基礎年金を受給するための請求手続きについて解説します。
遺族基礎年金の請求は、住所地の市区町村役場もしくは年金事務所・年金相談センターに対して「年金請求書」という書類を提出することにより行います。
年金請求書は日本年金機構のホームページからダウンロードできるほか、役場や年金事務所等に備え付けてあります。
また、年金請求書以外に下記の添付書類が必要となります。
★マークがついているものは、マイナンバーの記入で添付を省略することができます。
書類 | 備考 |
---|---|
死亡した方の年金手帳 | 提出できないときはその理由書 |
戸籍謄本(記載事項証明書) | 受給権発生日以降で提出日から6ヶ月以内に交付されたもの |
世帯全員の住民票★ | |
死亡した方の住民票の除票★ | 世帯全員の住民票に含まれている場合は不要 |
請求者の収入が確認できる書類★ | 所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など |
子の収入が確認できる書類★ | 義務教育終了前の子については不要 高校などに在学中の場合は在学証明書、学生証等 |
死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書 | |
受取先金融機関の通帳など | 預金通帳やキャッシュカードのコピーなど 年金請求書に金融機関の証明印を受けた場合は不要 |
印鑑 | 認印可 |
上記の書類はどのような場合においても必要となる書類です。
さらに、死亡の原因が交通事故等、第三者行為の場合には別途添付書類が必要となります。
遺族年金の請求の時効期間は5年です。
受給資格を有していても、5年を経過してしまうと受給資格を失います。
時効まで5年間の余裕があるとはいえ、早めの手続きをするに越したことはないでしょう。
寡婦年金とは、夫が死亡日前日まで国民年金の第1号被保険者として10年以上保険料を納めていた場合(免除期間を含む)に、その妻に支給される年金です。
寡婦年金の受給資格があるのは、死亡した夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻です。寡婦年金の支給はその妻が60~65歳の期間となります。
遺族基礎年金と寡婦年金、両方の受給権を有していたとしても、これらの年金は同時に受給することはできません。
どちらか1つの年金を選択して受給することになります。
ただし、時期が被っていなければ両方を受給することも可能です。
例えば下記のようなケースです。
上記のケースにおいて、夫の死亡時に妻が受給できるのは遺族基礎年金です。遺族基礎年金は子が18歳になった年度末まで受給することができます。
つまり、このケースでは、妻には58歳まで遺族基礎年金が支給されます。
一方、寡婦年金は妻の年齢が60歳~65歳の期間に支給される年金です。
したがって遺族基礎年金が58歳で打ち切られた後、60歳から寡婦年金を受け取ることができるということです。
老齢基礎年金とは、10年以上保険料を納めていた場合(免除期間を含む)に支給される年金で、65歳から支給されます。
20歳~60歳までの40年間にわたって保険料を納めていれば、65歳から満額で老齢基礎年金を受給することができます。
なお、令和2年度の満額の支給額は781,700円です。
遺族基礎年金と老齢基礎年金の、両方の受給権を有していても、これらの年金を同時に受給することはできません。
どちらか1つの年金を選択して受給することになります。
通常、老齢基礎年金と遺族基礎年金単体だけで見た場合、遺族基礎年金の方が受給できる金額が大きいため、遺族基礎年金を選択した方が得になると言えます。
ご自身のケースによっては得になるケースが変わることもありますので、慎重に検討することをおすすめします。
この記事では、遺族基礎年金について解説してきました。
実際に年金を受給する立場の方は、年金の支給額や支給期間をしっかりと把握して、今後のライフプランを考えていただければ幸いです。
年金は実際に受給する立場にならないと意識することは少ないと思いますが、どのような立場の方でも基本的な内容は知っておいて損はありません。
万が一の事態に備えるためにも、この記事で解説した内容は頭に入れておくことをおすすめします。