甥・姪と養子縁組したら相続はどうなる?遺贈との比較、相続税を解説

oimei yousiengumi

通常、法定相続人になる人は、
配偶者+①子や孫→②直系尊属→②兄弟姉妹の順番です。
そのため、基本的に甥っ子や姪っ子は相続人にはなりません。

しかし、相続税対策のため、あるいはその他の事情から、甥や姪と養子縁組して相続させるという方法を考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、甥や姪との養子縁組についてケース別で解説した後、養子縁組による効果、手続き方法についても解説します。

1.甥や姪の養子縁組を検討するケース

甥や姪の養子縁組を検討されているみなさんは、以下の4つのケースのうち、いずれかのお悩みを持たれているのではないでしょうか。

ご自身のケースに合わせて、ぜひ読んでみてください。

【ケース①】相続税対策に養子縁組をしたい

相続人を増やして基礎控除額を増やしたい

相続には相続税がかかりますが、遺産全額に相続税がかかるわけではなく、一部は非課税になります。この非課税の部分を、「基礎控除」と呼びます。
基礎控除の額が大きければ大きいほど、相続人がもらえる遺産額も上がります。

基礎控除額は、下記のように計算します(平成27年1月1日以降)。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

つまり、法定相続人の人数が多ければ多いほど、基礎控除額も高くなるということです。

養子縁組をして、実子(法定相続人)の人数を増やせば、相続税を節税することができます。

無限に養子で節税できるわけではない

しかしながら、無限に養子を迎えて控除額を増やせるわけではありません。
基礎控除計算の法定相続人に含めることができる養子の人数は決まっています(相続税法15条2項)。

  • 被相続人に実子がいる場合…養子は1人まで
  • 被相続人に実子がいない場合…養子は2人まで

相続税が2度かかるのを防ぎたい

あるいは、こんなケースも考えられます。

ご自身に子も親もおらず、兄弟姉妹が相続人になる場合です。
兄弟姉妹がすでにご高齢で、言葉は悪いですが相続されてもじきに亡くなられ、結局すぐに甥姪が相続すると予想されるとき、甥姪の養子縁組を検討したほうがいいかもしれません。

①ご自身から兄弟姉妹への相続→②兄弟姉妹からその子供たち(ご自身にとっての甥姪)への相続となると、相続税が2度かかることになります。
また、①ご自身から兄弟姉妹への相続では、相続税が2割増しになってしまうというデメリットもあります。

どうせすぐに遺産が甥姪に相続されるのであれば、初めからショートカットして、甥姪を養子に迎え、相続させるというのは相続税対策になります。

注意点1:甥や姪を養子にすることで相続税が高くなることもある

ただし、甥や姪と養子縁組をして相続させると、むしろ相続税が高くなる場合もあります。

もともと兄弟姉妹の数が多い場合です。
たとえば、ご自身が4兄弟の長男で、1人の甥っ子を養子に迎えたとしましょう。なお、配偶者や実子はなく、親もすでに他界しているものとします。
養子になった甥っ子は実子扱いになり、法定相続人となりますが、同時に弟3人は法定相続人からは外れます。

しかし、上述の通り、法定相続人の数が多いほど基礎控除額も高くなり、相続税は安くなります。そのまま弟3人に法定相続されていれば基礎控除額を3,000万円+600万円×3人で計算できていたところを、甥を養子にしたことで3,000万円+600万円×1人で計算しなくてはいけなくなってしまうのです。

相続税対策のための養子縁組であれば、本当に節税になるのか、慎重に考えなくてはなりません

注意点2:甥姪に遺贈すると相続税は2割増し

1個とばして甥姪に直接相続させたいというだけなら、養子縁組なんて面倒な手続きをとらずに、遺贈すればよいのではないか、と考える方もいるかもしれません。

しかし、甥姪への遺贈は相続税が2割増しになるため、徹底的に節税するのであれば、養子縁組をしたほうがよいでしょう。

なお、養子縁組の効果について後述しますが、甥や姪と養子縁組すると当然戸籍関係も変動しますから、そういった副作用も考慮した上で判断する必要があります。

【ケース②】法定相続人が他界し、近い親族が甥や姪である

ご自身に子や孫、直系尊属もおらず、兄弟姉妹もすでに他界していて、法定相続人にあたる人が存在しないという場合、一番近い親族が甥や姪であることは珍しくありません。

しかし、「甥や姪は法定相続人ではないから、養子にしなければ相続させられないのでは?」と考えられる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

兄弟姉妹が亡くなっている場合、その子どもである甥や姪が、代襲相続することができます。

甥や姪(兄弟姉妹の子ども)の代襲相続については、詳しく解説している以下の記事をお読みください。
代襲相続とは何かという前提知識から、ケース別の相続分まで、イラスト付きでご説明しています。

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【ケース③】甥や姪に特別な思い入れがあり、ぜひ相続させたい

小さい頃から目をかけてきた甥っ子や姪っ子に特別な思い入れがあり、ぜひご自身の遺産を相続させたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなときは、遺贈するか、養子縁組をして相続させるかの2つの選択肢があります。
しかし、先ほどもご説明したように甥姪に遺贈した場合は相続税が2割増しになるので、節税対策をするのであれば、養子縁組を選択したほうがよいでしょう。

ただし、遺贈であれば相続分をご自身で決定できますが、甥姪を養子にして相続させた場合、実子の法定相続分になるため、その点はご注意ください

※また、もしもご自身に子・孫・直系尊属がおらず、兄弟姉妹も亡くなっているという場合には、【ケース②】をご覧ください。そのままでも甥姪が代襲相続することができます。

【ケース④】甥や姪の生活環境のため、引き取りたい

例えば、甥や姪が育児放棄されていたり、生活環境が劣悪であったりという場合に、自分が引き取って良い環境にしてあげたい、と考える方は珍しくありません。
そんなときは、ぜひ養子縁組を検討してみてください。

ただ、甥や姪と養子縁組する際には、戸籍関係や法律関係はどのように変わってくるのか、手続き面ではどんな壁があるのか理解しておかなければなりません。

以下より、2.では養子縁組によってどんな効果があるか、3.では手続き方法について解説していきます。

2.甥や姪を養子縁組させるとどんな効果がある?

養子縁組をすると、縁組の日から、甥姪が実子扱いになります(民法809条)。
実子扱いになるので、いずれご自身の遺産は、実子としての法定相続分で甥姪に相続されます(※)。

※実子の法定相続分についてはこちらの記事をお読みください。

また、日常生活での変化として、養子は養親の氏を名乗る必要があります(民法810条)。
つまり、甥や姪は、養子になったら、おじおばの苗字を名乗らなくてはいけないということです。

ただし、養子が婚姻により苗字が変わった場合、その婚姻関係にある間は、この限りではありません。

3.養子縁組の手続き方法や費用

では、具体的にどのような手続きを経て養子縁組をするのでしょうか。

養子縁組の手続き方法は、甥や姪が成年に達しているか、あるいは未成年かで異なります。
未成年と養子縁組するときには家庭裁判所の許可が必要で、特に15歳未満だと法定代理人の代諾も必要となるなど、成年の場合と比べてハードルは高くなります。

以下の記事で、手続き方法や費用まで詳しく解説しています。
成年か未成年か、ケース別でわかりやすく解説しているので、ぜひお読みください。

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4.まとめ

本記事では、甥姪との養子縁組について解説してきました。

甥姪との養子縁組を検討するきっかけは人によって様々ですが、ひとたび養子になると法律上は実子の扱いになりますから、慎重に考えなくてはなりません。

相続税対策のために養子縁組をする人も多いですが、養子縁組で本当に節税できるのかどうかは、ケースバイケースです。本記事で紹介したように、相続税がむしろ高くなってしまうという可能性もありますから、一概にはいえません。

ご自身のお悩みに照らして、本当に甥姪と養子縁組するのがベストな選択なのか、弁護士に相談して決めることをおすすめします

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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