相続放棄申述受理証明書とは?取得方法と申請書の書き方

相続放棄しても、債権者はその事実を知らず、支払いを請求してくるかもしれません。
そんなときに役立つのが「相続放棄申述受理証明書」です。これを債権者に示せば、督促はなくなります。
相続放棄申述受理証明書とは何か、取得方法や費用について説明します。
目次
1.相続放棄申述受理証明書とは?
家庭裁判所によって書式は異なりますが、以下は相続放棄申述受理証明書の見本となります。
相続放棄申述受理証明書とは、第三者に対して相続放棄したことを証明する書類です。
1-1.相続放棄申述受理証明書とは
家庭裁判所が相続放棄を認めても、その事実を他の相続人や被相続人の債権者などの関係者に伝わえてくれるわけではありません。相続放棄をした本人が口頭で伝えたとしても、疑われてしまうかもしれません。
しかし、家庭裁判所が発行した相続放棄申述受理証明書があれば、相続放棄したことで、被相続人の借金を含め遺産を一切相続しないことを証明すことができます。
1-2.相続放棄申述受理通知書との違い
「相続放棄申述受理通知書」というものも存在します。
「相続放棄申述受理通知書」は、家庭裁判所が相続放棄を認めると、「相続放棄を受理」した事実を通知するために、相続放棄の申述をした本人に送付する書類です。
したがって、相続放棄の申述をした本人のみに送付されます。
相続放棄申述受理通知書は、再発行してもらうことができません。念のため、コピーをとっておくと良いでしょう。
一方で、相続放棄申述受理証明書は、何度でも再発行が可能です。
通知書 | 証明書 | |
---|---|---|
発行方法 | 相続放棄が認められると 家庭裁判所から送付される |
交付申請をすることで発行される |
再発行 | 不可 | 可能 |
交付にかかる費用 | 0円 | 150円/1通 |
2.相続放棄申述受理証明書が必要となるケース
以下のケースでは、相続放棄申述受理証明書が必要になる可能性があります。
2-1.債権者から支払いを請求されたとき
相続開始後、被相続人が借り入れをしていた金融機関やカード会社から、相続人は支払いを請求されたり、督促状が送付されたりします。
こうした場合には、「相続放棄申述受理通知書」を債権者に提示することで、相続放棄をしたことを認めてもらえることが多いのは確かです。
しかし、原本を請求されれば、相続放棄申述受通知書を再発行してもらうことはできません。相続放棄申述受理証明書は、こうしたケースに有効です。
また、債権者自身も、利害関係人として相続放棄申述受理証明書の交付を申請することができます。
2-2.他の共同相続人が不動産の相続登記をするとき
相続放棄をすると、他の共同相続人が、不動産の相続登記(名義変更)をすることになります。しかし、法務局は、相続放棄の事実を知りません。そこで、相続放棄受理証明書が必要になります。
ただし、相続放棄申述受理通知書に、相続放棄申述受理証明書と同等の内容が記載されていれば、相続放棄申述受理通知書であっても相続登記は可能となる制度変更が行われました。
2-3.被相続から他の共同相続人への預貯金口座の名義変更
他の共同相続人が、預貯金の名義変更を行う際にも、金融機関から相続放棄申述受理証明書を請求されることがあります。
3.相続放棄申述受理証明書の取得方法
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄を行った、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で取得できます。
相続放棄の申述をした本人が交付申請する場合と、それ以外の利害関係人が交付申請する場合とで、必要書類が異なります。
家庭裁判所によって申請書の名称・書式や必要書類がやや異なりますが、ここでは東京家庭裁判所のケースを基に解説します。
3-1.相続放棄申述受理証明書の交付申請ができる者
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄をした本人以外にも、相続放棄をしていない共同相続人や被相続人の債権者といった利害関係人も取得の申請をすることができます。
相続放棄申述受理証明書の申請ができる者
- 相続放棄をした本人
- 相続放棄をしていない他の相続人や債権者といった利害関係者
3-2.相続放棄の申述をした本人が申請する場合
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所の窓口か、郵送で相続放棄申述受理証明書の交付申請書などの必要書類を提出することで取得することができます。
本人のみ申請が可能でとなっており、弁護士が代理申請できるのみで、原則、家族が代理して申請することはできません。
申請してから証明書が送付されるまでにかかる日数は、家庭裁判所によって異なりますが、数営業日程度となります。
申請時の必要書類
- 相続放棄受理証明書交付申請書(書き方はこちら)
- 相続放棄申述受理通知書
- (窓口の場合)申述人本人の本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
- 申述人が未成年や被後見人の場合、法定代理人の本人確認書類
- 手数料(1通につき収入印紙150円)
- (郵送の場合)返信用封筒と返信用切手84円
3-3.他の共同相続人や債権者などの利害関係人が申請する場合
基本的な申請方法は、本人が申請する場合と同じですが、必要書類が異なります。
申請時の必要書類
- 相続放棄受理証明書交付申請書(書き方はこちら)
- 被相続人と申請者の利害関係を証明するもの(※)
- 申請者の住民票(本籍地が表示されているもの)
- 手数料(1通につき収入印紙150円)
- (郵送の場合)返信用封筒と返信用切手84円
※被相続人と申請者の利害関係を証明するもの:申請人が被相続人の債権者のときは契約書等、申請人が相続人の一人であるときは相続関係がわかる戸籍謄本などです。
なお、1年以内に「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」 を行っている場合には、下記の書類を提出することになります。
- 相続放棄受理証明書交付申請書(書き方はこちら)
- 有無照会をした方に交付される 「検索結果一覧」のコピー
- 手数料(1通につき収入印紙150円)
- (郵送の場合)返信用封筒と返信用切手84円
3-4.申請書はどこで入手する?
相続放棄申述受理証明書の交付申請書は、相続放棄申述受理通知書に同封されています。
また、ネット上からダウンロードすることもできます(以下からダウンロードが可能です)。
「相続放棄申述受理証明書の交付申請書」|裁判所
3-5.相続放棄申述受理証明の交付申請にかかる費用
相続放棄申述受理証明書の取得には、1通あたり150円の手数料がかかるため、150円分の収入印紙を申請書に貼り付けます(150円の収入印紙はないため、120円と30円の収入印紙を貼り付けます)。
また、相続放棄申述受理証明書を郵送で受け取る場合は、返信用封筒と返信用切手84円を添付します。部数が1~4枚なら84円切手で大丈夫ですが、5枚以上なら94円切手になります。
4.相続放棄申述受理証明書の交付申請書の書き方
東京家庭裁判所の申請書を基に、交付申請書の書き方を説明します。交付申請書は下記の書式です。
「事件番号」欄には、家庭裁判所から送付された「相続放棄申述受理通知書」に記載されている事件番号を記入します。
「事件番号」欄の下には、証明書を窓口で受け取る場合は「1 交付」に、郵送で受け取る場合は「2 送達(ア 申立人)」に○をします。
その下の欄には、「1 相続放棄申述受理証明書」の「1」に○をし、必要な枚数を記入します。
郵送を希望する場合は、「送達場所」欄に宛先を記入します。
最後に、「請書」欄に申請年月日、申請人の氏名、電話番号を記入し、押印します。押印は、認印でかまいません。
5.相続放棄申述受理証明の留意点
最後に相続放棄申述受理証明書の留意すべきポイントにつて触れておきます。
5-1.交付申請に家庭裁判所への照会が必要になるケース
交付申請書には、前述した通り、相続放棄の「事件番号」を記入しなければなりません。
申述人本人が交付申請する際に、「相続放棄申述受理通知書」を紛失していると、家庭裁判所への「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」が必要になります。
また、他の共同相続人や債権者などの利害関係人が交付申請する場合にも、あらかじめ家庭裁判所に照会して確認する必要があります。
5-2.相続放棄申述受理証明書の有効期限や交付申請の期限
相続放棄申述受理証明書は、有効期限が特に定められていません。
ただし、相続放棄の情報の保管期限は30年となっているため、30年を経過すると相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことはできません。
とは言え、債権である借金は5年または10年で時効により消滅します(民法166条1項、同法同条2項)。それほど長期にわたって必要になることはないでしょう。
まとめ
相続放棄受理証明書の交付申請には、それなりに多くの書類が必要となります。
ご自分で申請するのが煩雑だと感じた場合には、弁護士に依頼することもできます。最初から相続放棄について弁護士に相談していれば、その弁護士に相談することができます。
相続放棄についてお悩みの方は、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。