相続預貯金使い込みの調査方法、弁護士会照会や裁判所の嘱託調査など

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大金

遺産相続が起こった場合、相続人のうち1人が相続財産の使いこみをしていると疑われるケースがあります。このような場合、預貯金などの相続財産の内容を調べる必要がありますが、そのためにはどのような手続きをとることが出来るのでしょうか?

相続人が個人的にできる手続き弁護士に依頼してできる手続き裁判所を利用した場合にできる手続きにはどのようなものがあり、どのような違いがあるのかが問題です。
そこで、預貯金などの相続財産の調査方法について解説します。

1.相続財産の使いこみがあるケースとは?

遺産相続が起こったとき、複数の相続人がいるとトラブルが発生することがよくあります。このときに多いのが、特定の相続人が被相続人の財産を使い込んでいるのではないかと疑われるケースです。

たとえば、父親が亡くなった場合に兄弟3人が相続人になっているケースで、長男が父親と同居していたとします。すると、当然の流れとして、長男が父親の預貯金を管理していたということも起こりえます。
父親が亡くなって兄弟3人が遺産分割協議をすることになりますが、そのとき、次男と三男は長男に対し、父親の預貯金通帳を開示するように求めます。このとき、長男が通帳の開示をしなかったり、開示したとしても少額しか残っていない口座のみを開示したりすると、次男や三男は納得できません。長男が父親の預貯金を使い込んで、隠してしまっているのではないかと疑い、長男を問い詰めることになります。当然、長男はそのような使いこみを認めないので、遺産トラブルが起こってしまうのです。

ただ、次男や三男がいくら相続財産の使いこみを疑ったとしても、その証拠がないと取り戻しをすることもできず、どうにもなりません。そこで、相続財産の使いこみが疑われるケースでは、実際に相続財産にどのようなものがあり、どのような取引の流れをたどってきたのかについて調査をすることが必要になります。

2.個人で預貯金の調査をする方法

相続財産の使いこみが疑われるとき、具体的にはどのような方法で相続財産の調査をすることができるのでしょうか?
まずは相続人が個人的にできる範囲がどこまでなのか、ご説明します。

2-1.被相続人名義の生前取引があった預貯金口座

被相続人名義の預貯金(生前取引があったもの)については、相続人がその権限で金融機関に開示請求することができます
相続人が該当する金融機関を訪ねて、戸籍謄本などによって相続人であることを示して手続きをすれば、金融機関から取引履歴の開示を受けることができます。
最高裁平成21年1月22日の判決があってから、どこの金融機関でも相続人からの開示請求には対応することになっています。

金融機関にもよりますが、振込依頼書が保管されていれば、手書きの文字を見て筆跡から誰が手続きしたか推測することができます。取引日からだいたい1ヶ月以上経過すると倉庫に移動されて保管されるため、その場では開示してもらえず、後で電話もしくは郵送で取引履歴を教えてもらうことになります。
さらに、開示される期間は10年までであることが普通であり、それ以前の取引については保管されていないなどの事情で開示されないことが多いです。

また、金融機関に取引履歴の開示請求をする場合には、対象の金融機関を特定する必要があり、広く「日本中の銀行全部」について調べるということはできません。
たとえば、「〇〇銀行〇〇支店」など特定の金融機関を訪ねて、その店舗での取引履歴を調べることしかできないということです。

2-2.被相続人名義の生前に解約されていた口座

被相続人名義の預貯金でも、生前に解約されていたものについては、開示を認める金融機関と認めない金融機関があります。

2-3.ゆうちょ銀行の場合

さらに、ゆうちょ銀行では他の銀行等の金融機関と異なる取扱方法がなされます。
この場合、年月日を特定して申請をすると、その時点での通常貯金や定期預金の残高の開示を受けられます。ゆうちょ銀行には振込依頼書などの写しが保管されているので、それらも開示してもらえます。振込依頼書には手書きの文字などがあるので、筆跡から誰が手続きしたのかなどがわかり、調査に役立つことがあります。

2-4.証券会社口座の場合

被相続人が株や債券などの証券取引をしていた場合、相続人が証券会社に対して取引履歴の開示を請求すると、取引の開示を受けることができます。この場合も、開示期間は10年までであることが普通です。

3.弁護士会照会制度によって相続財産の調査をする方法

相続財産の調査をする場合、相続人が自分でできることには限界があると感じることがあります。この場合には、弁護士会照会を利用することができます。

3-1.弁護士会照会制度とは?

弁護士会照会とは弁護士法23条照会のことで、弁護士が各種の機関や個人などに対して、照会による調査をする手続きのことです。弁護士会照会で、被相続人名義の預貯金や株の口座等の取引履歴を調べることができます。相続関連以外も含めて年間10万件以上の弁護士会照会が行われています。

弁護士が依頼を受けて紛争の解決をしようとするとき、事実を立証するための資料を集める必要がありますが、依頼者がその資料を持っているとは限りませんので、弁護士が自ら公共機関や企業などに対して照会をかけ、情報を収集するための手段ととして設けられています。

弁護士会照会を行おうとする弁護士は、自分が所属する弁護士会に「照会申出書」(質問事項と申請の理由を記載したもの)を提出します。そして、弁護士会で厳しい審査が行われ許可された案件に対して、弁護士会会長名で各種機関に対して照会を行います。

そのため、個人で開示請求するよりも信頼性および公益性が高く、各種機関は開示請求に応じやすくなります。

3-2.弁護士会照会による開示請求

弁護士照会をする場合でも、開示請求する対象は個別の金融機関であり、「日本中の銀行全部」などの調査はできません。また、相続関係を確認する必要性があるので、①被相続人の除籍謄本と②依頼者が相続人であることがわかる戸籍謄本、③相続人関係図が必要になります。相続関係図は、通常弁護士が作成してくれます。
また、過去に渡って取引履歴の開示請求をすることができますが、その場合にも開示を受けられる期間は過去10年間になることが普通です。
個人的に銀行で取引履歴の取り寄せなどを行うのが困難な場合には、一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。

弁護士照会をするときには、1件について5,400円の負担金(弁護士会に支払う実費)と郵便の費用が必要です。複数の金融機関で調査をすると、その分負担金がかさんでしまうので、やみくもに利用すると損をする可能性もあります。

4.裁判所を利用して相続財産の調査をする方法

弁護士照会を利用しても、金融機関から回答を得られないケースがあります。このような場合には、裁判所を利用するしか方法がありません。裁判所を利用して預貯金口座の開示を受けるには、以下のような方法があります。

4-1.裁判所からの嘱託調査をする

まずは、裁判所で遺産確認訴訟などをしているときに、裁判所から金融機関に嘱託調査をしてもらう方法があります。ある財産について、それが遺産の内容に含まれるかどうか争いがある場合には遺産確認訴訟を行って確定させる必要があります。その場合、問題の預貯金があるのかどうか、あるとすればその内容がどうなっているのか調べなければならないので、裁判所から嘱託調査してもらえる可能性があります。

調査嘱託を申し立てても必ずしも認められるとは限りませんが、裁判所が調査嘱託した場合には、金融機関はほぼ必ず返答をして開示してくれますので、取引履歴を確認することができます。
なお、裁判所で嘱託調査をする場合でも、対象の金融機関は〇〇銀行〇〇支店まで特定する必要があります。

4-2.仮処分を申し立てる

遺産確認訴訟をしなくても、裁判所を利用して取引履歴の開示を受ける方法があります。それは、仮処分手続きを利用する方法です。
相続人間に争いがあるケースなどでは金融機関に依頼しても任意で取引履歴の開示を受けられないことがありますが、そのような場合、裁判所に仮処分を申し立てると金融機関から開示を受けることができます。
ただ、仮処分の手続きは非常に専門的で難しいので、利用するなら弁護士に依頼することがほとんど必須になります。

まとめ

相続人のうち、誰かが相続財産を使い込んでいることが疑われる場合の相続財産調査方法を解説しました。
相続人であれば、基本的に被相続人名義の預貯金の取引履歴や証券会社の取引履歴などを調べることができます。ゆうちょ銀行等の場合には、昔の振込依頼書の写しなども確認することができます。

弁護士に依頼して弁護士照会制度を利用すると、過去10年分の取引履歴の開示を受けることができるので、相続財産をまとめて調査したい場合などには利用すると便利です。
また、金融機関から任意で開示が受けられない場合には、裁判中の調査嘱託を利用したり、仮処分を申し立てたりする方法があります。

相続財産の調査は手間暇がかかる大変な作業ですので、他の相続人による相続財産の使いこみが疑われて相続トラブルになっている場合には、まずは弁護士に相談をして、相続財産調査を依頼すると良いでしょう。

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