被相続人所有の自動車に乗ると単純承認?相続放棄する時の注意点!

相続放棄と自動車について

被相続人に多額の借金があり、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合には、相続放棄の選択が考えられます。

相続放棄を行う際に注意すべきことは、遺産を売却したり、一部を使い込んだりすると、単純承認とみなされて相続放棄ができなくなる可能性がある点です。

亡くなった方の財産の中に自動車が含まれている場合には、単純承認とみなされて相続放棄できなくなってしまわないように、より注意が必要です。

というのも、自動車は家族全員が使用しているということが多いため、所有者が亡くなった後にその自動車に乗り続けることが単純承認にあたってしまう可能性があるからです。

ここでは、自動車と相続放棄に関する注意点について解説します。

1.相続財産としての自動車の使用の注意点

被相続人の生前から家族みんなで乗っていた自動車であっても、被相続人の名義で登録してあれば、自動車の相続手続きを行わなくてはなりません。

相続放棄を行う場合にはその自動車についても、今後は乗れなくなるということを理解しておく必要があります。

1-1.相続放棄したら被相続人名義の自動車を使用できない

被相続人の名義となっている自動車を遺族がそのまま乗っているというのはよくあるケースですが、相続放棄を選択する場合には注意が必要です。

というのも、被相続人の名義となっている自動車を、その人の死後に相続人となる人が乗り続ける行為が、法律上単純承認に該当してしまう可能性があるからです。

1-2.もし使用すると単純承認とみなされる?

単純承認とみなされて相続放棄ができなくなってしまうケースには、以下のものがあります(民法921条)。

  1. 相続財産の一部または全部を処分した場合
  2. 相続人が自己のために相続があったことを知ってから3ヶ月たっても相続放棄の手続きをしないとき
  3. 相続人が財産を隠し、私に消費し、悪意で相続財産目録に記載しなかったとき

ここでは、被相続人名義となっている自動車に乗り続ける行為が「1」に該当してしまわないかどうかが問題となります。
以下ではこの自動車の使用や売却と単純承認の関係について具体的に見ていきましょう。

2.相続放棄する場合には原則相続財産の処分はできない

相続放棄をする場合に、自動車をどのように処分するべきかについては法律上明確な規定がないというのが実情です。

そのため、状況に応じて柔軟に解決を図っていく必要があるわけですが、これらの手続き行う際にはそれが単純承認とみなされないように注意しなくてはなりません。

弁護士などの専門家に相談するとともに、以下のようなことに気をつけておきましょう。

2-1.相続財産清算人の選任の請求をする

相続人全員が相続放棄を行ない、相続人がいないときには「相続財産清算人」を裁判所に選任してもらうという方法もあります。

ただし、この方法を選択すると、相続財産が少ない場合には、相続財産清算人が活動するための「予納金」を納めなくてはならない可能性が高くなり、相場が20万円〜100万円となっていることから、大きな負担となってしまいます(余った部分については返還されますが、基本的には戻ってこないものとして考えておく必要があります)。

2-2.財産的価値がなければ「財産の処分」も可能

財産的価値がないものについては、売却などの手続きを行ったとしても、単純承認には当たらないとするのが大原則です。

そのため、中古車業社に対して売却しても、代金0円となるような自動車であれば、売却や廃車の手続きを行っても特に問題はないものと思われます。

ただし、念のために複数の中古車業社に見積もりを出してもらい、価値がないことを証明できる積書をもらっておくのが安全と言えるでしょう。

自動車税が未納で処分できないなら、自動車税を払ってもOK

自動車を売却したくても、被相続人が自動車税を払っていないために中古車業者などに処分してもらえないケースがあります。

財産を処分するという理由があるのであれば自動車税をいったん支払った上で、自動車の処分手続きを進めても問題は生じないと思われます。
ただし、この場合も自動車に価値がないことを証明できる見積もりを準備しておくようにしましょう。

なお、現実の状況を見ながら判断すべき部分が大きいことから、実際に自動車の売却を行う前に必ず弁護士などの専門家にアドバイスを求めるようにしてください。

2-3.財産価値があれば売却して現金で保管

やむを得ず自動車の売却を行う場合には、売却前に法律の専門家に相談するとともに、その対価として受け取ったお金(売却代金)には手をつけないようにしましょう。

この現金を使い込んでしまうと、単純承認とみなされ、相続放棄できなくなる可能性が高くなり注意が必要です。

名義変更が必要であれば、それも認められる?

車を売却する際に、相続放棄をするつもりの相続人の名で、いったん名義変更を行うことを求められる可能性もあります。

売却後に契約の不備をめぐってトラブルになる可能性を回避するために、中古車業者としては、正式な所有者に売却してほしいと考えるのです。

売却代金について手をつけずに置いておけば、単純承認とはみなされない可能性もありますが、慎重な判断が必要です。

3.ローン支払中の自動車の処分

亡くなった人が自動車をローンで購入していた場合には、自動車の名義が誰になっているかで相続人がとるべき手続きは異なります。

ローン会社やディーラー名義か、被相続人名義かの2つに分けて考えてみましょう。

3-1.自動車がディーラーやローン会社名義の場合

被相続人が販売会社(ディーラー)経由で自動車ローンに申込みをしている場合は、自動車の名義はディーラーやローン会社となっているのが一般です。

これは所有権留保と言われる契約によるもので、自動車ローンの支払いが完了するまでは自動車の名義はディーラーやローン会社になっているのです。
つまり被相続人はそもそも所有権者ではないということですから、所有権を相続人が相続するということもないということになります。

自動車やローン会社や販売会社名義の自動車の場合には、所有者となるディーラーやローン会社にこの自動車を引き取ってもらうことになるのが基本です。

3-2.自動車が被相続人名義の場合

一方で、マイカーローンなどの形で金融機関からお金を借りて自動車の購入資金に当てたという場合には、名義人はあくまでも被相続人となり、自動車には金融機関の担保権が設定されている状態になっています。

そのため、自動車は相続財産にあたるのが原則です。

自動車に乗り続けたり、安易に売却したりしてしまうと、単純承認とみなされて相続放棄ができなくなってしまう可能性があるので注意しなくてはなりません。

4.被相続人名義の自動車保険

自動車保険

被相続人が自動車保険に加入しており放置していると、保険料が口座から引き落とされるままの状態が継続している可能性があります。

これを防ぐためには自動車保険の解約や名義変更を行う必要がありますが、これらの手続きを行うことによって相続放棄を行うのに支障が出ないようにしなくてはなりません。

被相続人名義となっている自動車保険について解約や名義変更を行う際には以下のようなことに注意しておきましょう。

4-1.解約にあたっての契約者変更にも注意が必要

自動車保険は、契約名義人となっている方の解約の意思確認さえできればすぐに解約できるのが原則です。

しかし、契約者の方が亡くなっているとこの「意思確認」ができないため、契約者を相続人に変更した上で、相続人から解約の意思表示を受けようとするのが一般的です。

契約者が亡くなると、法定相続人であれば保険会社に連絡して、契約者変更を行うことは可能です。

ただし、相続放棄をするつもりであれば、契約者変更続きを行うこと自体が単純承認に当たる可能性があり注意が必要です。

同様の理由で、保険料の支払いを被相続人に代わって行うことが法定単純承認に当たってしまうこともあります。

具体的な手続きを行うときには慎重な判断が必要となりますから、実際に手続きに手をつける前に弁護士等の専門家にアドバイスを求めるようにしましょう。

5.不安な場合は弁護士に相談を

ここまでご説明させていただいように、相続放棄を行うにあたって自動車の処分をどのように行うべきかについては法律の規定があいまいなこともあって、難しい判断が必要になるケースが多くなります。

安易に売却や廃車の手続きを取ってしまうと法律上単純承認を行なったものとして相続放棄ができなくなってしまう可能性があり、判断に迷うケースでは、事前に専門家からアドバイスを受けておかなくてはなりません。

もし、単純承認とみなされてしまうと相続放棄とみなされてしまい、相続人は借金も引き継がなくてはならなくなってしまいます。

相続放棄についてどうしたら良いかわからないことがあれば、相続に強い弁護士に相談してみると良いでしょう。

相続放棄を専門とする弁護士がいます

相続放棄手続は自分でも出来ます。しかし、手続きを確実かつスムーズに進め、更に後のトラブルを防止する上では、弁護士に相談して手続するのがオススメです。

弁護士であれば、以下のような相続の悩みも的確にサポートしてくれます。

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