親の連帯保証を相続放棄できる?相続放棄と連帯保証人との関係

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たとえば親が死亡してしまった際、相続処理のために財産や債務を調査していると、思いがけず被相続人である親が他人の連帯保証人になっていたことが判明する場合があります。

生前に友人などから、

「住宅ローンを組む際や賃貸物件を借りる際に、保証人になってくれる身内がいない」
「高額の入院費・治療費がかかるから、身内以外から連帯保証人を立てる必要がある」

などと言われて、仕方なく連帯保証人を引き受けたケースなどが考えられます。

こうなると相続人にとっては寝耳に水で、見ず知らずの他人の連帯保証を相続する立場に立たされてしまいます。

このような相続人を救済するための制度として「相続放棄」があります。
相続放棄をすることによって、相続人は連帯保証債務の相続を免れることができます。

この記事では、連帯保証人についておさらいしたうえで、連帯保証人を相続放棄する注意点、相続放棄の期限を過ぎた場合の対処法などについて解説します。

1.連帯保証人の地位と債務も相続の対象

相続が発生した場合、相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものとされています(民法896条)。

被相続人が第三者の連帯保証人になっていた場合、連帯保証債務は被相続人の「義務」ですので、原則として相続の対象となります。

1-1.連帯保証とは?

まず、連帯保証について簡単におさらいしておきましょう。

連帯保証とは、債務者が自分の債務(主債務)を履行しなかった場合に、連帯保証人が主債務を代わりに負担・弁済するという契約のことです。
誰かの保証人になる場合は、現在では連帯保証を使うことが一般的です。

連帯保証の場合、通常の保証よりも以下の3点について保証人の義務が重くなっています。

①催告の抗弁権がない

通常の保証人は、債権者から保証債務の履行を請求された場合、先に債務者に履行の催告をするように請求することができます(民法452条本文)。
これを「催告の抗弁権」といいます。

しかし、連帯保証人には催告の抗弁権が認められません(民法454条)。

②検索の抗弁権がない

通常の保証人は、(a)主債務者に弁済をする資力があること、(b)執行が容易であることの両方を証明すれば、まず主債務者に対して強制執行をするよう債権者に求めることができます(民法453条)。
これを「検索の抗弁権」といいます。

しかし、連帯保証人には検索の抗弁権も認められません(民法454条)。

③分別の利益がない

保証人が複数いる場合、通常の保証人は債権者に対して、自分の負担分のみ保証債務を履行すれば債務を免れます。
これを「分別の利益」といいます。

しかし連帯保証人は債権者から保証債務の履行を請求されたら、誰であっても主債務の全額を支払う必要があります。

このように連帯保証は、「いざというときには主債務者の借金を全額肩代わりする」という約束なので、きわめて負担が重いといえるでしょう。

1-2.相続の対象外となる連帯保証もある

ただし、連帯保証のうち以下のものについては、その性質上相続の対象外とされています。
通常、これらの保証では相続されて負担になるという心配はいりません。

  • 極度額の定めがない根保証
  • 身元保証

詳しくは、以下の記事で解説しています。

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2.相続放棄すれば連帯保証債務を相続しないですむ

連帯保証債務の負担が重い場合には、相続放棄をすることで、連帯保証債務の相続を免れることができます。

相続放棄した場合、その人は当初から相続人でなかったものとみなされ、被相続人の財産・債務をいっさい相続しないことになります(民法939条)。
債務だけでなく、財産も全く相続することができないという点に注意しましょう。

相続放棄の詳細はこちらの記事で解説しています。

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次からは、状況に応じた相続放棄の注意点などをご説明します。

3.被相続人が第三者の連帯保証人になっていたときの相続放棄は?

もし思いがけず被相続人が他人の債務を連帯保証していた場合には、相続放棄を含めた対応を検討しましょう。

3-1.相続財産と債務の金額を比較し、債務の負担が重い場合には相続放棄

まず、相続の対象となる財産と債務を十分に調査・比較し、相続に関してどのような意思表示を行うかを判断しましょう。

仮にぜひとも相続したい財産があり、かつ債務を支払っていくことができる見込みもあるという場合には、相続を承認(または限定承認)する方向で検討することになります。

一方、特にめぼしい相続財産がなく、債務の負担が重すぎるという場合には、相続放棄をすることになるでしょう。

連帯保証債務の考え方

連帯保証債務については、普通の債務とは少し異なる考え方も必要です。

保証である以上、主債務者がきちんと債務を支払ってくれれば、連帯保証人が債務を支払う必要はありません。
そのため、単純な債務金額だけでなく、主債務者がきちんと債務を履行する見込みがどれほどあるかも考慮要素となるでしょう。

特に住宅ローン債務については、主債務者が団体信用生命保険(団信)に加入していれば、主債務者の死亡等の場合に保険金が下りて、住宅ローンが完済されます。
この場合、連帯保証人も連帯保証債務から解放されますので、主債務者の死亡等によって保証債務を履行しなければならないという心配は不要になります。

3-2.相続放棄には熟慮期間があることに注意

相続放棄できるのは、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」の期間内のみであることに注意が必要です(民法915条1項本文)。
この期間を「熟慮期間」といいます。

熟慮期間を経過してしまった場合、原則として相続放棄はできなくなってしまいます。

熟慮期間内であれば、「相続放棄申述書」というものを家庭裁判所に提出することで、相続放棄できます。
相続放棄自体はそれほど難しくない手続きですので、ご自分で相続放棄してみようという方は、こちらの記事を読みながら進めてみてください。

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3-3.熟慮期間は伸長(延長)が認められる場合がある

ただし、巨額の債務が後から判明したなどの場合には、熟慮期間の経過により相続放棄を認めないことが相続人にとって酷になるときもあります。

そこで、利害関係人などからの請求により、家庭裁判所が熟慮期間の伸長を認める場合があります。
熟慮期間を伸長するよう請求を受けた家庭裁判所は、熟慮期間中に相続放棄の意思表示を行うことが困難といえる状況があったかどうかを審査し、伸長を認めるかどうかを決定します。

その際、家庭裁判所が考慮する要素としては、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 相続財産の構成の複雑さ
  • 相続財産の所在場所
  • 相続人の数
  • 相続人が海外や遠隔地に居住しているか

このように、被相続人の死亡から時間が経ってしまっている場合でも、熟慮期間の伸長を家庭裁判所に請求することにより、連帯保証債務の相続放棄が間に合う場合もあります。

もし後から判明した連帯保証債務の相続に苦しんでいるという方は、弁護士に相談して、相続放棄ができないか検討してみましょう。

熟慮期間の伸長を申し立てずに過ぎてしまったら?

上でご説明した熟慮期間の伸長は、基本的に「熟慮期間内」に行う手続きです。
したがって、伸長の申し立てをせずに熟慮期間を過ぎてしまった場合は、相続放棄できないのが原則です。

ただ、判例は例外的に熟慮期間の起算点(いつから3ヶ月を計算するか)をずらし、相続放棄できる場合があるとしています(最判昭和59年4月27日)。

例外が認められる場合として次のような要素を挙げています。

  • 相続財産が全く存在しないと信じた
    かつ、
  • 被相続人と相続人との関係性、交際状態により、相続人が相続財産の調査をすることを期待できない

上記の条件を満たすのは難しい場合が多いため、基本的には熟慮期間の伸長の申し立てをしないまま3ヶ月を過ぎてしまったら相続放棄は困難、と覚えておきましょう。

4.被相続人の債務を相続人が連帯保証していた場合は?

上記の場合とは異なり、被相続人が負担する主債務を、相続人である自分が連帯保証していた場合は、どのような相続処理になるのでしょうか。
以下で具体的に見ていきましょう。

4-1.連帯保証債務に影響はない

この場合、相続の対象となるのは「被相続人の主債務」です。

連帯保証人がもともと負担していた連帯保証債務は相続の対象ではありませんので、相続によって連帯保証債務が影響を受けることはなく、そのまま存続します。

ただし、被相続人の死亡により主債務が免責されることが契約上決まっている場合はこの限りでなく、連帯保証債務も消滅します(付従性といいます)。

4-2.主債務については相続放棄できる

相続の対象となる主債務については、相続放棄をすることにより、相続人は相続を免れることが可能です。

このとき、相続を承認した相続人が他にいれば、主債務はその相続人が相続することになります。

一方、そもそも相続人が1人しかいない場合や、他の相続人も全員相続放棄をした場合には、主債務は履行不能となります。
この場合、連帯保証人である相続人が、主債務の全額を弁済しなければなりません。

これらの点を整理すると、次のようになります。

①連帯保証人である相続人の他に、相続を承認した相続人がいない場合

相続放棄をするしないにかかわらず、結局相続人が主債務の全額を履行しなければなりません。

②連帯保証人である相続人の他に、相続を承認した相続人がいる場合

連帯保証人である相続人は、相続放棄をすることにより、主債務者たる地位の相続を免れます。

このとき、主債務は他の相続人が相続することになります。
他の相続人が主債務をきちんと支払ってくれれば、連帯保証人である相続人は、債務の支払いをいっさい行う必要がありません。

したがって、連帯保証人である相続人が相続放棄をすることが有効になり得るのは、他に相続を承認した相続人がいる場合に限られます。

5.まとめ

被相続人が第三者の連帯保証人になっている場合、相続人にとっては予期せず重い債務負担を背負ってしまうことになりかねません。
そのため、適切なタイミングで相続放棄をするなどの対応を検討する必要があるでしょう。

しかし、相続財産や債務の調査を十分に行った上で、トータルでの損得を検討しなければ、相続放棄をするかどうかの判断を正しく行うことはできません。
また、相続放棄には熟慮期間というタイムリミットがあるため、迅速な調査・検討が必要になります。

このように、連帯保証人たる地位の相続については法律上の複雑な問題が多く、相続人だけで処理することはきわめて困難です。
そのため、早めに弁護士に相談をしてサポートを受けることをおすすめします。

弁護士は、相続財産や債務の調査を行い、依頼者が相続に関する正しい判断を下せるようにサポートしてくれます。
また、依頼者の希望に沿って、どのような形で相続を処理するのが一番良いのかを一緒に検討してくれます。

相続でお困りの際には、ぜひ弁護士にご相談ください。

相続放棄置換文言

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