借地権がある場合の遺言書の書き方

★ お気に入りに追加

相続財産又は遺贈の対象となる財産に借地権がある場合に、相続人又は受贈者に借地権を渡す場合にどのようなこと注意しなければならないでしょうか。具体例を交えながら検討・解説します。

1.借地権は、相続の対象となるか

相続とは被相続人(亡くなった方)の権利義務の一切を相続人に承継する手続きですので、被相続人が有する借地権も当然に相続の対象となります(民法896条)。

したがって、相続が生じると被相続人の有する借地権は、契約等の何らの意思表示もなくして相続人に承継されることになります。

なお、具体的にどの相続人が当該借地権を取得するかについては、別途遺産分割協議等で決せられることになります。

2.相続の効果

2-1.借地権相続の法律構成

借地権が相続の対象となるとしても、これを地主に対抗できるでしょうか。

このような問題が生じるのは借地権の特殊性です。すなわち、借地契約は、賃貸人(地主)と賃借人(被相続人)間の契約です。借地権が相続により移転するとは、この賃借人の地位が被相続人から相続人に移転するこというのです。

そして、たとえば賃借人の地位を合意により移転するような場合には、当該移転について賃貸人の同意が必要であるとされています。なぜなら、たとえば、賃貸人としては誰が土地を使うかのかについて重大な利害関係があるといわれているからです。

たとえば、Aさんなら、土地を清浄な状態で利用し、Bさんなら土地を清浄な状態で利用しないとした場合に、賃貸人としてはBさんよりもAさんに土地を貸したいと考えるのは当然ことであり、賃貸人の同意もなく賃借人の地位がAさんからBさんに移転するような場合を想定すれば直ちにご理解いただけるものと思います。

2-2.地主の承諾は必要か

上記2-1のような問題があるため、相続による借地権の承継について地主の承諾は必要かが問題となります。

相続による承継は、売買等の特定承継とは異なり一般承継です。

すなわち、相続による承継というのは特定の権利義務にとどまらず、全人格的な承継が行われるので、被相続人=相続人となることから、地主の承諾なくして、被相続人から相続人に移転するものと認められるとされています

2-3.相続による承継を排除する特約の有効性

賃貸借契約書の特約条項として賃貸借契約の終了原因として相続が生じたことや賃借人が死亡したことなどの条項が加えられているケースがあります。これにより相続の発生により当該賃貸借契約が終了する結果、被相続人から相続人への借地権の承継ないものと認められるのでしょうか。

上記2-2のとおり相続による承継には地主の承諾は不要であるとされている以上、このような特約は、借地借家法第9条により借地権者に不利な特約に該当するので、無効であると考えるべきです。

(借地借家法9条)
この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。

これと関連した問題で、共同相続が生じたことにより地主が相続人の一部にのみ借地契約の解除を通知した場合、その解除は有効かという問題があります。 この点について、判例では共同相続人の一部に対する借地契約の解除は有効ではないとしています(昭和36年12月22日最高裁判所判決)。

2-4.建物と借地権の承継人とが異なる分割方法について

たとえば、借地権付建物に関し、次のような遺言があったとします。

第○条

1. 長男甲(生年月日)に、以下の建物を相続させる。

所  在 ○○県○○市○○町1丁目2番地3号

家屋番号 1番

2. 次男乙(生年月日)に、以下の借地権を相続させる。

所  在 ○○県○○市○○町1丁目2番地3号

所 有 者 甲野一郎

地  代 月2万円

まず、「相続させる」旨記述された遺言は、遺贈ではなく遺産分割の指定ですので、上記遺言は遺贈ではなく、遺産分割の指定であることを前提に話を進めます。

次にこの遺言では、建物を相続する相続人と借地権を相続する相続人が異なっています。

乙が相続した借地権は、建物の所有目的での賃借権ではないこととなり、借地借家法の適用はありません。そして、建物所有も目的の借地権であれば、建物登記をもって借地権の対抗要件とすることが可能となりますが(借地借家法第10条)、上記の場合には、賃借権の登記がない限りは、借地権を第三者に対抗することはできません。

(借地借家法10条)
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。

また、甲が相続した建物は、借地権がない建物ということになり、権利の保全として脆弱なものとなります。

したがって、借地権付建物の相続においては、借地権と建物を分属させるような遺産分割・遺言は行ってはいけないということになります。 その意味で言えば、以下の遺言を行うべきことになります(下線部が変更箇所)。

第○条

1. 長男甲(生年月日)に、以下の建物を相続させる。

所  在 ○○県○○市○○町1丁目2番地3号

家屋番号 1番

2. 長男甲(生年月日)に、以下の借地権を相続させる。

所  在 ○○県○○市○○町1丁目2番地3号

所 有 者 甲野一郎

地  代 月2万円

3.遺贈による借地権譲渡

3-1.遺贈の対象となるか

遺贈とは、遺贈者の死亡を効力発生要件とする譲渡であるところ、その目的物については法令上特に制限されていないため、借地権の譲渡についてもその対象となります

なお、借地権の譲渡について、建物と借地権を別々の者に遺贈してはいけないことは相続の場合と同じです。

【遺言例】

第○条

1. 長男甲(生年月日)に、以下の建物を遺贈する

所  在 ○○県○○市○○町1丁目2番地3号

家屋番号 1番

2. 長男甲(生年月日)に、以下の借地権を遺贈する。

所  在 ○○県○○市○○町1丁目2番地3号

所 有 者 甲野一郎

地  代 月2万円

3-2.地主の承諾は必要か

遺贈は相続のような一般承継とは異なり、ある特定の物又は権利を対象として譲渡するものです。これは売買・贈与による譲渡と異なることところはありません。

そして、借地権の売買・贈与などに基づく譲渡、すなわち賃借人の交代は、賃貸人、すなわち地主の同意が必要です。そうすると、遺贈による借地権の譲渡にも地主の同意は必要となります。

この譲渡の承諾の形式については特に決まりはありませんが、一応、文書によることが望ましいです。

【譲渡承諾に係る合意書の例】

合意書

甲と乙は、平成○年○月○日遺言により丙(平成△年△月△日死亡)から乙に対し以下の借地権を譲渡することを承諾する。

【借地権】

所  在 ○○県○○市○○町1丁目2番地3号

所 有 者  甲

地  代 月2万円

ただし、借地借家法19条1項に基づき、建物と共に借地権を譲渡しようとする場合には 、裁判所に対し、譲渡の許可を求めることができます。

(借地借家法19条1項)
借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

3-3.特約の有効性

賃借人死亡の場合に借地契約が終了するとの特約の効力については、仮に地主が譲渡に承諾している場合には、譲渡の効力自体が問題になることはありません。

他方、そもそも 地主が譲渡に承諾していない場合には、特約の効力というよりも、裁判所が行う譲渡許可の決定の可否に関する一事情となるので、特約自体の効力を論じる実益はありません 。

4.まとめ

以上のとおり、借地権を相続させる遺言又は借地権の遺贈については、難しい法的問題があります。したがって、当該遺言又は遺贈をなされる場合には、法律の専門家である弁護士のアドバイスを受けることを強くお勧めします。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

デフォルトpr下ボタン

この記事が役に立ったらシェアしてください!