遺産分割審判にも不服|即時抗告の手続きと抗告状・理由書の書き方
遺産分割は、まず、相続人間の話し合いから始めますが、まとまらない場合について、調停や審判が法定されています。 では、…[続きを読む]
「遺産分割調停がうまくいかず、遺産分割審判になると言われた。」
「相手と話し合いにならない、遺産分割審判があるって聞いたけど…。」
このように様々な経緯で遺産分割審判をすることになってしまったとき、どうすればいいのでしょうか。
そもそも遺産分割審判とは何なのか、何をする手続きなのか、流れや有利に進めるポイントをご紹介します。
遺産分割審判とは、遺産分割協議でまとまらない場合に、家庭裁判所が「審判」という形で遺産分割することです(民法907条2項)。
審判では、遺産分割協議や調停とは異なり、話し合いではなく裁判所の判断で遺産分割が決定します。
そのため、自分の望まない結果になることもあり、協議や調停でまとまらない場合の最終手段と考えたほうがいいでしょう。
通常、遺産分割の手続きは、協議→調停→審判と進みます(遺言があれば遺言が優先されます)。
民法で法定相続分として相続人の取り分が一応定められていますが、遺産分割は相続人同士が納得して分割できるのが一番です。そのため、話し合いで解決できる遺産分割協議が最優先とされているのです。
調停を飛ばして審判を行うこともできますが、実務上、裁判所の判断で調停にするという扱いをされています(家事事件手続法244条、274条1項、別表第2第12項)。
裁判所の判断である「審判」は、基本的に確定判決と同様の効力を持ちます。
つまり、強制執行が可能になりますし、もちろん登記なども審判をもとに行うことができます。
通常、審判の前には遺産分割調停を行っていますが、調停が不成立の場合、特に手続きはいりません。自動的に遺産分割審判に移行します(家事事件手続法272条4項)。
遺産分割審判では、それまでの調停委員は参加せず、裁判官が担当することになります。
また、審判の流れはどちらかと言うと裁判・訴訟に近いものです。
審判では、期日と呼ばれる日時が決められ、当事者双方が参加します。
当事者それぞれが交互に部屋に入る調停とは異なります。
遺産分割審判が始まると、争点を裁判所が整理しながら、追加で必要な調査があれば家裁調査官が調査を行ったり、裁判官から当事者への審問等を行います。
当事者は、それぞれ書面で主張を提出し、その主張を裏付ける証拠や資料を提出することになります。
審判は初回期日だけではなく、期日の終わりに次回期日をいつにするか決め、何回も行います。
通常、期日は裁判と同様で1,2ヶ月に1回の頻度で開かれ、早くて半年程度、長ければ2年以上かかることもあります。
こうした期日を何度か繰り返し、裁判所が十分な調査と審理をしたと判断すれば、最後に審判期日というものを決めます。
最後の審判期日では、裁判所から遺産分割の決定を示されます。
審判の途中で和解することもできます。
当事者同士が話し合い、和解が成立すれば、調停が成立したものとして扱われます。
この場合、通常の調停と同様に調停調書が作成され、審判は終了します。
遺産分割審判の結果に不満があるときは、通常「即時抗告」というものができます。
即時抗告をすると、高等裁判所で審理されることになります。即時抗告ができるのは審判の翌日から数えて2週間以内です。
遺産分割審判は、一定の遺産について分割を定めるためのものです。
そのため、場合によっては審判を申し立てても、「先に◯◯の問題を解決してからにしてください」と言われてしまいますので、以下の点の確認を忘れないようにしてください。
もしこれらの争いがある場合、遺産分割審判を申し立てても、別途訴訟で解決しなければならなかったり、あとから審判の効力が失われてしまう可能性があります(最高裁大法廷昭和41年3月2日決定、最高裁昭和61年3月13日判決)。
遺産分割審判はかなりの労力がかかることですので、無駄にならないよう、事前の確認は忘れずに行いましょう。
遺産分割は審判から申し立てることも法律上は可能ですが、通常は調停からやるように裁判所で言われます。
また、仮に審判申し立てを受理されても、裁判官の判断で調停に回されることが殆どで、いきなり審判を実施してくれることはほぼありません。
そのため、他の相続人と争いがある場合、まずは遺産分割調停の申し立てをご検討ください。
遺産分割審判は、名前こそ「審判」ですが、その内容は事実上「裁判」と同じです。
話し合いではありませんので、ただ自分の主張を話して聞いてもらっても有利にはなりません。
具体的には
といったことが必要になります。
また、裁判官の心象に配慮した裁判上の技術なども影響します。
そのため、調停まではご自分で行っていた方も、審判は弁護士に相談することをおすすめします。
相手方も通常は弁護士に依頼しますし、弁護士がついている側といない側では明らかに弁護士がいる側が有利です。
また、弁護士に依頼すれば、自分に代わって審判に出てくれますので、相手と顔を合わせずにすみますし、仕事等への影響も最小限にできます。
遺産分割審判をされる場合は、ご自分にあった弁護士にぜひご相談ください。