【サンプル付】相続放棄申述書の書き方|必要書類と提出先も紹介
この記事では、相続放棄申述書の書き方をサンプル付きで解説します。必要書類や提出先、提出後の流れについても説明している…[続きを読む]
新型コロナウイルスの感染拡大により、社会が大混乱に陥っています。
こうした状況下で、もし親族が亡くなってしまい相続が発生した場合、相続財産の調査などの相続に関する手続きがスムーズに進められないことが考えられます。
また、裁判所の機能も平常時より縮小されるため、思うように手続きを進められない可能性もあります。
特に、相続放棄や限定承認を検討している方は、3ヶ月の熟慮期間中に意思決定を行うことが難しい状況に陥ることもあるでしょう。
この記事では、限定承認・相続放棄・熟慮期間の概要について簡単に解説した後、熟慮期間の伸長について詳しく解説します。
目次
限定承認や相続放棄の意思表示を正しく行うためには、資産と負債のどちらが多いのか、資産の内訳はどのようになっているかなど、相続財産の状況を正確に把握する必要があります。
しかし、新型コロナウイルスにより日常生活が脅かされているような状況では、相続財産の状況を正確に把握することは困難な場合があります。
2020年4月7日には緊急事態宣言が発出されましたので、しばらくは落ち着かないという人も少なくないでしょう。
こうした場合に対する救済策として、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間を伸長できる旨が規定されています(民法915条1項ただし書)。
熟慮期間の伸長の請求を受けた家庭裁判所は、熟慮期間中に限定承認または相続放棄の意思表示を行うことが困難と言える状況があるかどうかについて審査し、伸長の可否を決定します。
たとえば、以下のような事情が考慮されることになります。
新型コロナウイルスの影響を理由とした熟慮期間の伸長の申請は、基本的には認められる可能性が高いです。
現在の社会情勢では、外出自粛や店舗の閉店など、未曽有の規模で日常生活に悪影響が発生しています。
このような状況下では、相続の手続を進める負担は通常時よりもはるかに重いと考えられ、熟慮期間を伸長する必要性が高いと言えます。
また、法務省は、新型コロナウイルスの影響により限定承認および相続放棄の熟慮期間の延長を希望する場合について特に項目を設けて解説をしています。
【参考】法務省:新型コロナウイルス感染症に関連して、相続放棄等の熟慮期間の延長を希望する方へ
熟慮期間の伸長の可否を判断する家庭裁判所は、法務省からは独立した組織ですが、法務省と同様の問題意識を抱えている可能性は高いと考えられます。
なお、裁判所の新型コロナウイルス関連の対応はこちらをご覧ください。
熟慮期間の伸長が認められる場合には、通常であればおおむね1ヶ月から3ヶ月程度の伸長が認められます。
しかし、新型コロナウイルスは前例のない規模で社会に悪影響を及ぼしていますので、家庭裁判所の判断により、熟慮期間の伸長についても通常時より長い期間が認められるという可能性もあります。
なお、熟慮期間の伸長の申請は2回目以降も行うことが可能です。
最後に、熟慮期間が設定されている「限定承認」と「相続放棄」の2つについて簡単に解説します。
この記事を読まれている方は十分理解されていると思いますが、改めて確認しておきたい方は参考にしてください。
相続が発生した場合、相続人は以下の3つの内容から1つを選択して意思表示を行います。
限定承認および相続放棄の意思表示は、相続人が相続の開始したことを知った時から3ヶ月以内に行う必要があります(民法915条1項本文)。
この3か月間を「熟慮期間」と言います。
熟慮期間内に限定承認または相続放棄の意思表示をしなかった場合、その相続人は単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。
新型コロナウイルスの影響がある中で相続が発生してしまった、緊急事態宣言が出ているのにもうじき熟慮期間の3ヶ月になってしまう、というような場合には、適切な意思表示を行うのに十分な期間を確保するために、熟慮期間の伸長の申請をしておくのが無難です。
新型コロナウイルスを理由としても申請手続きと家庭裁判所の判断が必要ですので、緊急事態宣言が出ているからといって放置しないようにしましょう。
このような非常事態ですので、申請を検討する場合は、弁護士やお近くの法テラスに相談することも検討してみましょう。