遺言書種類別に解説|遺言書の訂正方法は法律で決まっている!

一度はしっかり確認したつもりで書き終えた遺言書でも、後から思わぬ書き間違いが発覚したり、やはり書き直したいと思ったりすることもあるかもしれません。
しかし実は、遺言書の訂正方法は法律で決められています。
自己流でやってはいけません。
本記事では、自筆証書遺言および秘密証書遺言と、公正証書遺言の2タイプの訂正の仕方についてわかりやすく解説します。
なお、訂正ではなく遺言書をもはや撤回・取り消したいという方は、以下の記事をお読みください。
【関連記事】遺言書の撤回と方法、撤回とみなされる場合|公正証書遺言も撤回可能
1.遺言書は加除訂正できる
まず、そもそも一度書いてしまった遺言書を後から加除訂正できるのか?という問題ですが、正しい方式で行えば可能です。
しかし、相続分や相続人についてなど変更内容が重大な場合は、修正ではなく、もはや遺言書の破棄(※)および書き直しをしたほうがよいでしょう。
※遺言書が複数あって、その内容が抵触(矛盾)する場合は、形式(自筆証書遺言か公正証書遺言かなど)に関わらず、最新の日付のものが優先されるため(民法1023条1項)、古いものを必ずしも破棄する必要はありません。
ただし、新しい遺言書を古い遺言書と照らし合わせてみて、内容が抵触しない部分は、古い遺言書も依然として有効です。
また、保管の仕方に注意をしないと、古い遺言書しか見つからない/あるいは新しいものを第三者に破棄されてしまうなどのリスクもあります。完全に遺言書を書き直す場合には、古いものは破棄したほうが安心です。
小さな書き間違いを訂正するには?
ただし、誤字脱字などの微々たるミスで、わざわざ遺言書を書き直すほどでもないというような場合には、以下で解説する手順に沿って加除訂正しましょう。
次の2.では自筆証書遺言と秘密証書遺言の訂正方法について、3.では公正証書遺言の訂正方法について説明します。
2.自筆証書遺言と秘密証書遺言の訂正方法と注意点
自筆証書遺言と秘密証書遺言の訂正方法は同じです(968条3項、970条2項)。
法律上は「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」とされています。
以下でわかりやすく解説します。
2-1.訂正の仕方
具体的には以下の3ステップです。
①内容に変更を加える
・内容に加筆したいときは、加筆する箇所に吹き出しで追記します。
・修正したいときは、訂正したいところに二重線を引きます。
横書きは二重線の上、縦書きは二重線の左側に、正しい文言を添えます。
黒く塗りつぶしたり、修正液・修正テープの使用は禁止です。
②変更した部分のすぐそばに訂正印を押す
③「本行で〇字削除 〇字加入」など変更した旨を書き、直筆で署名する
2-2.遺言書の訂正例
したがって、正しい方式で訂正すると、以下のようになります。
なお、上では便宜上パソコンで作成した遺言書例を表示していますが、自筆証書遺言は全文遺言者の直筆によるものでなければなりませんので注意してください。
また、署名についても、自筆証書遺言・秘密証書遺言にかかわらず直筆です。
2-3.訂正するときの注意点
訂正印は署名の横で押したものと同一の印鑑
変更箇所のそばに押す訂正印は、遺言書中に署名の横で押したものと同一の印鑑でなくてはなりません。
遺言者本人による変更であることを証明するためです。
もし訂正方法が間違っていたら
また、もしも誤った訂正方法で遺言書に修正を行った場合、どうなるのでしょうか。
訂正の仕方が法律で定められている方式と異なっていても、記載内容から見て明らかな誤記の訂正については有効と認められた判決があります(最高裁昭和56年12月18日判決)。
しかし、逆にいえば、人の目から見て「明らかな誤記の訂正」とまではいえないような場合には遺言書が無効になるおそれがあるのです。
訂正の方法は十分に守らなくてはならないことや、重大な訂正について不安の残る場合にはやはり思い切って作り直してしまったほうがよいことがわかります。
3.公正証書遺言の訂正方法
一方、公正証書遺言は、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合と異なり、訂正は容易ではありません。
原則として公正証書遺言は作り直す
公正証書遺言は公証人が作成するもので、さらに自筆証書遺言や秘密証書遺言よりも厳重に公証役場で保管されているため、遺言者による加除訂正は原則としてできません。
内容を訂正したいときには、一から作り直す必要があります。
もしくは「更正証書」「補充証書」を作成することが可能
ただし、ごく僅かなミスなど一部について修正・補足する場合には、「更正証書」や「補充証書」を作成してもらえることがあります。
更正証書や補充証書を作成するのには、もちろん公証人手数料もかかります。
手数料はもとの公正証書遺言作成にかかった費用額の10分の5で、もし公正証書遺言を作ったのと同一の公証役場で作成するのであれば、10分の2.5になります(公証人手数料令24条)。
このように公正証書遺言は後からの加除訂正が困難な上、できたとしても追加の費用がかかります。
作成する段階できちんと訂正の必要がないか、よく確認しておくことがより大切だといえるでしょう。
4.まとめ
自筆証書遺言や秘密証書遺言は、自分の手で比較的簡単に加除訂正ができるものの、法律で定められた方法に則って正しく行わないと、修正が無効になってしまうおそれがあります。
他方、公正証書遺言は基本的に加除修正が困難で、比較的大きい変更に関しては原則作り直しになってしまうと考えられます。
遺言書は作成の段階からミスがないか気をつけるのが一番ですが、後から書き間違いに気づくこともあります。そのときには訂正方法によく注意し、変更が無効にならないようにしましょう。
不安の残る場合には、弁護士などの専門家に相談してみるのがおすすめです。