公正証書遺言作成の流れと費用
この記事では、公正証書遺言の作成の流れと費用を解説します。公証役場の手数料や必要書類は勿論、司法書士や弁護士に依頼し…[続きを読む]
遺言書には、他にも自筆証書遺言と秘密証書遺言の3種類があります。中でも公正証書遺言はプロである公証人の立ち会いのもと作成するため、前の2つと比べて最も信頼度が高いといえます。
しかし、残念ながら遺言者ご本人だけでは作成できません。
公証役場にいる公証人に加えて、証人を2人以上用意しなければなりません。
そこで、本記事ではどんな人が証人になれるのか、また作成日当日に証人はどんなことをするのか、作成後に発生する責任などを解説します。
目次
公正証書遺言は、遺言者の意思を基に、公証役場で公証人が作成します。
では、なぜ遺言者・公証人以外に証人が必要になるのでしょうか?それは、次に挙げる理由によります。
証人を必要とする目的は、以上を確認し、後からトラブルが発生するのを防ぐのです。
公正証書遺言の証人になるのに、特別な資格は不要です。
ただし、証人になれない人というのは、以下の通り法定されています(民法974条)。
上記のいずれかに当てはまる人は、証人になることができません。
逆にいえば、当てはまらなければ、誰でも有効な証人として連れていくことができます。
※推定相続人:実際に相続が開始した際に相続人になると考えられる人
受遺者:遺贈を受ける人
公正証書遺言の証人は、次の3つの方法で探すことができます。
実務上証人となることが多いのは、遺言者の信頼できる友人・親友、弁護士、司法書士などが挙げられます。
いくら親友でもさすがに遺言書のことまでは知られたくない、という方も多いでしょうから、そのような場合には、客観的かつ専門的知識も有している弁護士に依頼するのがおすすめです。
また、もしも適切な証人がご自分では見つけられないという場合には、公証役場で紹介してもらうこともできます。
証人1人あたり約6,000円なので、2人合計で12,000円程度の手数料がかかります(公証役場に直接ご確認ください)。
それでは、実際に証人となった人は具体的にどんな役割を果たすのでしょうか。
証人が当日持参すべきものは、次の通りです。
当日は、公証役場にて、所要時間30分~1時間程度で公正証書遺言の作成を行います。
大まかな流れは以下の通りです。
つまり証人としての仕事は、遺言書が正しい内容であることを確認し、正本に署名押印をするだけです。
証人の役割は、当日だけでは終わりません。遺言書作成に携わった者として、当然、その後も責任を負います。
通常、証人がトラブルに巻き込まれることはありませんが、以下のように遺言書の有効・無効の争いで一定の役割が期待される場合があります。
ただ、事例としては少ないためそれほど身構える必要はありません。
公正証書遺言が有効か無効かをめぐって争われた際に、証人として出頭することが求められることがあります。
出頭の指示があった場合、正当な理由がないと欠席は認められません。
もしも正当な理由なく欠席すると、10万円以下の罰金または拘留(民事訴訟法193条1項)もしくは訴訟費用負担と10万円以下の過料(同法192条)に処される可能性があります。
とはいえ、こうした不出頭の制裁は、実際にはほとんど科されることはありません。
以上のように、証人には相応の責任が求められますから、証人を選ぶ際には慎重に、また証人に選ばれた際には自覚ある行動をとりましょう。
冒頭で触れた通り、証人はいくつかのポイントを確認するために公正証書遺言の作成に立ち会います。仮に、これらを故意や過失により怠って公正証書遺言に署名・捺印すると、損害を被った人から損害賠償請求を受ける可能性があります。
この損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から3年間、または、故意・過失で遺言書が成立したときから20年間消えることはありません。
本記事では、公正証書遺言の作成に必要な2人の証人について解説しました。
公正証書遺言の証人になるのに資格は不要ですが、未成年者など、証人にはなれない人については決められています。
また、証人になると、実際に相続が発生した際、その公正証書遺言が適切に作成されたことについて、作成時立ち会った人として一定の責任を負います。後々遺言書をめぐってトラブルが生じた場合に備えて、証人を選ぶ際には、その人が適任かどうか改めて考えることが必要です。
もしも妥当な証人がご自身の周りで見つけられないという場合には、弁護士などに依頼するのもおすすめです。弁護士は法律の専門家ですから、遺言書作成の段階から相談すれば、トラブルの芽をつむ助言もしつつ、万が一のときにも心強い味方になってくれるはずです。