遺言執行者は何ができる?|民法改正で拡大した権限
民法改正により、遺言執行者の権限が明確化されました。遺言執行者は相続の手続きでどんなことができるのか、相続人との関係…[続きを読む]
遺言書の作成を弁護士に依頼することは多いかと思います。
しかし、実際に弁護士に依頼するとどんなメリットがあり自分で作成するのとどこが違うのか、費用はいくらかかるのか、依頼から完成までの流れなど、分からないことも多いのではないでしょうか。
本記事では、遺言の作成を弁護士が行ってくれる業務内容やかかる費用について詳しくご説明します。
目次
まず、遺言の「作成」を弁護士に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ご自分で作成するのとどこがどのように違うのでしょうか?
遺言書を作成する前提として、どの相続人に何を相続させるのか財産調査が欠かせません。弁護士に依頼すれば、正確な財産調査をしたうえで、遺言書を作成することができます。財産の中には、ご自分では驚くほど価値が高くなっているものや、反対に価値が下がっているものが含まれている可能性もあります。
そうした財産調査をご自分の手を煩わさずに、弁護士に依頼することができます。
遺言書は、その方式が法律で厳密に決められています(民法968~970条)。
たとえば自筆証書遺言は、日付も含めて全文を手書きしなければ無効となり(968条1項)、秘密証書遺言には、証書で使った印章と同じ印章で封印しなければならない(970条1項2号)といった決まりがあります。
遺言書を自分で作成すると、遺言書の方式で思わぬミスを犯してしまう可能性がありますが、法律のプロである弁護士に依頼すれば、そのような心配はいりません。
一部の相続人に遺留分や特別受益、寄与分などがあると、相続時にトラブルになる可能性が高くなります。
弁護士に依頼すると、相続時にトラブルとなりそうな遺留分や寄与分について、遺言書で財産をどのように配分すればトラブルを避けることができるのかアドバイスを受けることができ、相続時のトラブルを回避することが可能になります。
弁護士に依頼して作成した遺言書であれば、相続時にトラブルになることは少ないでしょう。しかし、万一相続人同士がトラブルになったとしても、法律の専門家である弁護士が介入すれば、スムーズに解決できることが期待できます。
また、後述する通り、訴訟となった場合に無条件で代理人となることができるのは、弁護士に限られます。
遺言書に弁護士を遺言執行者として指定しておくと、遺言者の遺言を実現するために相続の手続きを進めてもらうことができます。
遺言執行者には、弁護士でなくても就任することができます。しかし、遺言を執行していくうえで、法律の専門家であることは、大きなメリットです。
なお、最近の民法改正で遺言執行者の権限が拡大したことにより、遺言執行者の業務の内容も広がったといえます。以下の記事で詳しく解説しています。
次に、気になるのは遺言書作成を依頼したときの弁護士費用ではないでしょうか。
具体的な費用は法律事務所によって異なります。しかし、(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準を参考に価格設定している事務所が多いため、ここでは旧報酬基準をベースにして解説します。
遺言書の作成を弁護士に相談する際には、相談料がかかります。
30分ごとに5000円程度の一定額で計算されるのが一般的です。
ただし、「初回相談無料」「初回30分無料」など、特典をつけている事務所も多いです。
また、依頼すれば全体の費用から相談料を差し引いてくれる事務所も存在します。
遺言書作成にかかる費用は、遺言内容の複雑さや、扱う財産の大きさによって変動します。
相続財産が多額であるほど、料金も上がると考えてください。
また、具体的な金額は法律事務所によっても異なるので、以下はあくまで基準として参考にしてください。
基本的経済的利益 | 依頼にかかる費用 |
---|---|
300万円以下 | 20万円 |
300万円を超え3,000万円以下 | 基本的経済的利益の1%+17万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 基本的経済的利益の0.3%+38万円 |
3億円を超える | 基本的経済的利益の0.1%+98万円 |
特別な事情がある場合 | 弁護士と依頼者との協議で額を決める |
なお、公正証書遺言の場合は上記の手数料に3万円を加算します。
遺言執行者の依頼には、遺言書作成とは別途費用が発生します。
具体的な額はケースによって異なりますが、ある程度基準となるものを掲載しておきます。
経済的利益 | 依頼にかかる費用 |
---|---|
300万円以下 | 30万円 |
300万円を超え3,000万円以下 | 経済的利益の2%+24万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 経済的利益の1%+54万円 |
3億円を超える | 経済的利益の0.1%+98万円 |
特別な事情がある場合 | 弁護士と依頼者との協議で額を決める |
以上のように、弁護士への依頼費用は、法律事務所や、遺言内容の複雑さ・扱う遺産の大きさによって変動します。
まずは弁護士に相談してみることで、実際に金額を見積もってもらい、依頼するかどうかについてはその額を見て検討するのがよいでしょう。
相談事には、費用だけでなく遺言書について考えていることも伝えてしっかり相談しましょう。
遺言書の作成を、弁護士と司法書士どちらに依頼すべきか迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
司法書士の費用相場は、遺言作成を依頼すると7~15万円程度、遺言執行を依頼すると30万~50万円程度で、最終的には経済的利益の1%くらいに落ち着くといわれています。
費用だけを考えれば、司法書士のほうが低額な印象を受けるかもしれません。しかし、トラブルが予想される場合には、最初から弁護士に依頼することをお勧めします。
その理由は、遺言について訴訟などのトラブルが発生した際に、無条件で代理人となれるのは弁護士だけだからです。司法書士が作成に関わった遺言書について、相続人が改めて弁護士に依頼すると、二度手間になってしまいます。
一方、最初から弁護士に依頼しておけば、後々出てくる問題についても、事情を知った弁護士に、法的知識をもって速やかに対処してもらうことが期待できます。
最後に、弁護士に遺言書を依頼するまでの流れをご説明します。
ネットなどから、ご自分の希望に沿った依頼したい弁護士を探して面談を申し込みます。
弁護士事務所によって、それぞれ得意分野や費用体系も異なるため、比較してみるといいでしょう。弁護士事務所の選択には、次の記事を参考にしてみてください。
また、先述の通り、初回の相談料についてはサービスを設けている事務所も多く、利用してみてる価値は大きいでしょう。
このサイトにも、初回無料相談の事務所が多数掲載されています。是非、ご活用ください。
初回の面談の際には、相続人となる親族・家族構成や、財産状況、おおよその予算などを聞かれるのが一般的です。
このときに、見積もりをもらい不明な点については、質問しましょう。いくつか、無料相談の事務所をまわり、比較検討するのも一つの方法です。
比較の際には、弁護士費用だけでなく、希望に沿った遺言書を作成してもらえそうか、依頼後のサポート体制なども含めて総合的に判断します。
依頼したい弁護士が明確になったら、契約を交わし、実際に遺言書の作成を始めます。
希望する遺言書の内容を伝え、弁護士が文案を作成し、文案の確認・修正を繰り返して遺言書の文案を完成させます。
文案が決まったら、自筆証書遺言を選択する場合には、ご自分で全文を自書し、弁護士にチェックしてもらいます。公正証書遺言の場合には、弁護士が公証人と調整して、弁護士が立会いのもと公証役場で作成することになります。
弁護士が遺言執行者に指定されていれば、遺言者が亡くなった後に、遺言の内容を実現するために、遺言執行を行うことになります。
この他に、弁護士に、完成した自筆証書遺言を預けることもできます。弁護士にサービス内容を詳しく聞いて利用しましょう。
本記事では、遺言書の作成について弁護士に依頼した場合のメリットや、その費用、作成の流れなどについて解説してきました。
遺言書作成は法的知識のない方がご自分だけで行うと、内容が漏れていたり、方式を誤ったりして無効になるおそれがあります。
多少の費用はかかりますが、遺言書の作成・保管から遺言の執行まで全て弁護士に依頼すれば安心できるといえるでしょう。
なお、今回ご紹介した依頼費用はあくまで一般的な目安です。
まずはご自分が相談しやすいと思う弁護士に相談し、具体的な費用を見積もってもらうことをおすすめします。