公正証書遺言の証人に誰がなる?資格は必要?|証人が負う役割も解説
公正証書遺言の作成には証人2人以上の立ち会いが必要です。証人になるのに特別な資格は不要ですが、なれない人はいます。本…[続きを読む]
遺言に関して弁護士に依頼する内容には、遺言書の作成や遺言の執行が考えられます。
しかし、実際に弁護士がどんなことをやってくれるのか、自分でやるのと何が違うのか、費用はいくらかかるのかなど、分からないことも多いのではないでしょうか。
本記事では、遺言に関して弁護士に依頼した場合に、弁護士が行ってくれる業務内容やかかる費用について詳しくご説明します。
目次
まず、遺言の「作成」を弁護士に依頼したときに、どのような業務を行ってくれるのでしょうか(遺言の「執行」の依頼については「2.遺言の執行を弁護士に依頼すると」をご参照ください)。
遺言書には、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類があります。
どの遺言書を作るかで、弁護士にどんな業務を依頼するかも変わってきます。
1-1.で全ての遺言書に共通する業務内容、1-2.で特定の遺言書について行う業務内容を説明します。
まず、遺言書作成を弁護士に依頼した場合の基本事項として、弁護士は主に下記のようなことをやってくれます。
遺言書は、その内容だけでなく、方式も法律で厳密に決められています(民法968~970条)。
たとえば自筆証書遺言は日付も含めて全文が手書きでないと無効ですし(968条1項)、秘密証書遺言も証書で使ったのと同じ印章で封印しなければならない(970条1項2号)などの決まりがあります。
遺言書を自分だけで作成すると、遺言内容や遺言書の方式で思わぬミスを犯してしまい無効になる可能性がありますが、法律のプロである弁護士に依頼すれば、そのような心配はいりません。
次に、遺言書ごとに別途必要になると考えられる依頼内容についてです。
自筆証書遺言と秘密証書遺言について、完成した遺言書の保管を弁護士に頼むこともできます。
自己責任での保管は盗難や紛失が怖いという方にとっては、専門家が保管してくれるのはとても心強いのではないでしょうか。
なお、公正証書遺言は、公証役場での保管になります。
また、秘密証書遺言と公正証書遺言では、作成のために証人を2人用意する必要があります。
証人といっても誰でもよいわけではなく、未成年者や推定相続人は証人になれないなどの決まりがありますから、適切な証人を探すのは容易ではありません。
しかし、弁護士に遺言書作成を依頼すれば、そのまま証人の1人として同席してもらうことができます。
なお、自筆証書遺言では証人は必要ありません。
弁護士に依頼する場合が多いケースとして、遺言書の作成だけではなく、「遺言執行者」の任命も考えられます。
遺言執行者とは、遺言者の遺言を実現するために、代表者として相続の手続きを進めていく人のことです。
遺言執行者は、以下の3つのパターンを除けば、必須の存在ではありません。
※③は遺産分割が開始されて初めて発生する問題なので、遺言書作成の時点では必須ではありません。しかし、遺贈はよくトラブルになるため、後々必須になってしまう可能性は高いです。
結論として、自分の意思を必ず後世に残すためには、遺言執行者は選任しておいたほうがよいでしょう。代表してスムーズに手続きをしてくれるので、相続人にとってもとても助かりますし、トラブルが生じるリスクを抑えることができます。
特に、相続財産に不動産がある場合や、相続人の数が多かったり仲が悪い場合などは、より遺言執行者の必要性が高まります。
では、弁護士に遺言執行者を依頼すると、具体的にはどのようなことをしてくれるのでしょうか。
これらの手続きは、弁護士でなくても遺言執行者であれば可能ですが、利害関係がなく、法律の専門家でもある弁護士に依頼したほうが、トラブルは防ぎやすいでしょう。
なお、最近の民法改正で遺言執行者の権限が拡大した関係で、遺言執行者を弁護士に依頼した際に任せることができる業務の内容も広がったといえます。以下の記事で詳しく解説しています。
遺言の作成や執行を依頼したときに弁護士がどんなことをやってくれるかお分かりいただけたところで、皆さんが気になるのが費用面ではないでしょうか。
以下では、弁護士に依頼したときの費用について解説していきます。
なお、具体的な費用は法律事務所によってもまちまちですが、(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準を参考に価格設定している事務所が多いため、ここでも旧報酬基準をベースにして解説します。
いきなり依頼するのではなく、まずはどんなことで悩んでいるのか、弁護士に相談しなくてはなりませんよね。その際に、相談料がかかります。
30分ごとに5000円程度の一定額で計算されるのが一般的です。
ただし、「初回相談無料」「初回30分無料」など、特典をつけている事務所も多いです。
また、依頼すれば全体の費用から相談料を差し引いてくれる事務所もあります。
遺言書作成にかかる費用は、遺言内容の複雑さや、扱う財産の大きさによって変動します。
相続財産が多額であるほど、料金も上がると考えてください。
また、具体的な金額は法律事務所によっても異なるので、以下はあくまで基準として参考にしてください。
基本的経済的利益 | 依頼にかかる費用 |
---|---|
300万円以下 | 20万円 |
300万円を超え3,000万円以下 | 基本的経済的利益の1%+17万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 基本的経済的利益の0.3%+38万円 |
3億円を超える | 基本的経済的利益の0.1%+98万円 |
特別な事情がある場合 | 弁護士と依頼者との協議で額を決める |
なお、公正証書遺言の場合は上記の手数料に3万円を加算します。
遺言執行の依頼についても、具体的な額はケースによって異なりますが、ある程度基準となるものを掲載しておきます。
経済的利益 | 依頼にかかる費用 |
---|---|
300万円以下 | 30万円 |
300万円を超え3,000万円以下 | 経済的利益の2%+24万円 |
3,000万円を超え3億円以下 | 経済的利益の1%+54万円 |
3億円を超える | 経済的利益の0.1%+98万円 |
特別な事情がある場合 | 弁護士と依頼者との協議で額を決める |
以上のように、弁護士への依頼費用は、法律事務所や、遺言内容の複雑さ・扱う遺産の大きさによって変動します。
まずは弁護士に相談してみることで、実際に金額を見積もってもらい、依頼するかどうかについてはその額を見て検討するのがよいでしょう。
相談事には、費用だけでなく遺言書について考えていることも伝えてしっかり相談しましょう。
先述の通り、初回の相談料についてはサービスを設けている事務所も多いですから、ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
費用を見ると「そこまでの費用をかけてまで弁護士に依頼するべきなのか…」と思われる方もいらっしゃるでしょう。そこで、遺言の作成や執行を弁護士に依頼したほうがよい理由をいくつかご紹介します。
遺言の作成や執行を弁護士に依頼するメリットは、最初から最後まで一貫して遺言者に寄り添うことができるところでしょう。
遺言書作成のお手伝いに始まり、実際に相続が発生した後も、思わぬ相続人間のトラブルから遺言者の意思を守り抜くことができます。
後世に不測の事態が発生しても安心できるのは、法律のプロならではです。
また、専門家への依頼を検討されている方の中には、司法書士と迷っている方もいるのではないでしょうか。
司法書士については、たとえば遺言作成を依頼したら費用相場は7~15万円、遺言執行を依頼したら30万~50万円で、最終的には経済的利益の1%くらいに落ち着くといわれています。
費用だけみれば司法書士のほうが低額な印象を受けるかもしれませんが、それでも弁護士のほうがおすすめです。
たとえば、万が一後から遺言について訴訟などのトラブルが発生した場合は、原則として訴訟代理人になれるのは弁護士だけですので、相続人が弁護士に依頼することで二度手間になるおそれがあります。
初めから弁護士に依頼しておけば、後々出てくる問題についても、法的知識をもって速やかに対処してもらうことが期待できます。
本記事では、遺言の作成や執行について弁護士に依頼した場合にどんなことをしてもらえるか、その費用などについて解説してきました。
遺言書作成は法的知識のない方がご自分だけで行うと、内容が漏れていたり、方式を誤ったりして無効になるそれがあります。
また、遺言の執行についても、遺言執行者を選任しなかったり、あるいは専門的知識を有さない身近な人に依頼してしまうと、トラブルが起きた際に対処できない・最後まで責任を持って活動してくれないという可能性があります。
多少の費用はかかりますが、遺言書の作成・保管から遺言の執行まで全て弁護士に依頼すれば安心できるといえるでしょう。
なお、今回ご紹介した依頼費用はあくまで一般的な目安です。
まずはご自分が相談しやすいと思う弁護士に相談し、具体的な費用を見積もってもらうことをおすすめします。