遺産分割協議書の書き方と記載例(サンプル)
遺産分割協議書は書き方のポイントを押さえれば、決して難しいものではありません。この記事では、遺産分割協議書の記載例と…[続きを読む]
父親や母親が亡くなり遺産分割の際に、配偶者がその遺産を全て相続するというケースは珍しくありません。
協議もまとまり、あとは遺産分割協議書を作成するだけだという方に向けて、本記事では協議書の記載例や、作成上の注意点について解説します。
目次
遺産分割協議書に記載が必要な内容は、基本的に下記の通りです。
これらを文章に起こすとどのようになるのでしょうか。
早速、配偶者が全て相続する場合の遺産分割協議書について、実際の記載例をご紹介します。
なお、記載例は、word・PDF形式でダウンロードが可能です。
一番簡単な書き方は、「被相続人の一切の財産を〇〇が相続する」と書いてしまう方法です。
次項でご説明する通り、財産を全て列挙して、相続人ごとに一つずつ書くこともできます。しかし、書く側にとっては、「一切の財産」としてしまったほうが楽でしょう。
遺産分割協議書
被相続人
××××(令和×年×月×日 死亡)
最後の本籍地 〇〇県〇〇市○○区×-×-×
最後の住所地 〇〇県○○市〇〇区×-×-×
上記被相続人の死亡により発生した相続について、甲(被相続人の妻)、乙(長男)、丙(長女)の相続人全員により、以下の内容で遺産分割協議が成立した。
1.被相続人の一切の財産は、甲が相続する。
2.今回の協議時点で判明していない遺産が後日発見された場合には、その一切を甲が相続する。
以上の通り、相続人全員が合意したことを証明するため、本書を作成し、各自署名押印する。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人 甲 ㊞
住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人 乙 ㊞
住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人 丙 ㊞
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ここで注目したいポイントは、「2.今回の協議時点で判明していない遺産が後日発見された場合には、その一切を妻××××が相続する」という文言です。
この文言がないと、後から被相続人の新しい遺産が見つかった際には、改めてその遺産についてのみ遺産分割協議が必要になります。余計な遺産分割協議を避けるためにも、こうした文言を入れておくべきでしょう。
もちろん、被相続人の財産の内容を詳しく列挙できるのであれば、その方法も有効です。
むしろ、後から新しい遺産が見つかった場合を考えると、「遺産分割協議時点で相続人が把握している遺産」と「後から発覚した遺産」の線引きが明確にできるので、よりよいといえるでしょう。
遺産分割協議書
被相続人
××××(令和×年×月×日 死亡)
最後の本籍地
最後の住所地
上記被相続人の死亡により発生した相続について、甲(被相続人の妻)、乙(長男)、丙(長女)の相続人全員により、以下の内容で遺産分割協議が成立した。
1.下記の被相続人の財産は、甲が相続する。
預貯金
〇〇銀行〇〇支店
普通預金 口座番号*******
口座名義人〇〇〇〇〇
〇〇万円
不動産
(1)土地
所在 ○○県〇〇市〇〇区
地番 ××番××号
地目 宅地
地積 〇〇.〇㎡
(2)建物
所在 〇〇県○○市〇〇区
地番 ××番××号
種類 居宅
構造 木造造2階建
床面積 1階部分 〇〇.〇〇〇㎡
2階部分 〇〇.〇〇㎡
2.上記以外の被相続人の財産が後日発見された場合には、新しく見つかった財産の取り扱いについてのみ、相続人全員で再協議する。
以上の通り、相続人全員が合意したことを証明するため、本書を作成し、各自署名押印する。
住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人 甲 ㊞
住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人 乙 ㊞
住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人 丙 ㊞
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この場合も、新しい遺産が発見されたときのことを考慮した文言を明確に記載します。
また、上記では預金や不動産についてのみ、記載例を示していますが、その他の種類の遺産でも、できるだけ特定しやすい情報を書いておきましょう。
たとえば株式であれば「〇〇株式会社、普通株式、5000株」というように、会社名・株式の種類・株式数などを書きます。預貯金・不動産以外の遺産分割協議書の書き方については、以下の記事を参考にしてください。
協議の結果、一人の相続人がすべての遺産を承継することになるのは、なにも配偶者に限ったことではありません。
こうした場合でも、「××が被相続人の有する一切の財産を相続する」とシンプルに記載する方法か、「××が相続する」旨を書いたうえで遺産の内容を列挙する方法のいずれかを採ることになります。
続いて、遺産分割協議作成する上での注意点をご紹介します。
遺産分割協議書には、相続人全員分の署名押印が必要になります。
遺産分割協議は全員が参加しないと無効になってしまうため、署名押印は全員参加の証拠になります。
もしも、相続人同士が遠く離れて住んでいて、対面や回覧による署名押印が難しいときには、遺産分割協議証明書の利用も検討しましょう。
文面は協議書と変わりませんが、全員で1枚の書類に相続人全員分の署名押印を集める「協議書」に対して、1人1枚の書類にそれぞれが自分の署名押印をした後に全員分回収するのが「協議証明書」です。
押印は実印でなくてはなりません。相続税申告や相続登記などの手続きには、印鑑証明書を必要書類として提出し、遺産分割協議書に押印された印鑑が本人の印鑑であることの証明が求められるからです。
印鑑証明書は、お住まいの市区町村役場で取得するか、コンビニでの発行に対応している地域であればマイナンバーカードを使ってコンビニでも発行することができます。
もしも、配偶者以外の相続人全員が相続放棄をしたのであれば、相続放棄=はじめから相続人ではなかったとみなされます。
相続人が1人であれば、遺産分割協議書の作成は不要です。
しかし、相続放棄をすると、相続放棄した本人より後順位の相続人に相続権が移転します。
たとえば、母親に全ての遺産を相続させるために、被相続人の子供たちが全員相続放棄をしたとしても、相続権は存命であれば被相続人の親に、亡くなっていれば被相続人の兄弟姉妹に移転します。
もし相続放棄によって被相続人の配偶者に財産を集中させたい場合には、後順位の相続人がいないことを確認してからにしましょう。
「配偶者が被相続人の全ての財産を相続する」ということは、被相続人のローンなどの借金である債務までを全て相続することを意味します。
その場合配偶者は、差権者に請求されても、他の相続人に対して一切求償できません。つまり、「一切の財産」と書く以上、「債務だけはみんなで負担しようね」とはならないのです。
もし債務だけは分担したければ、「一切の財産」と書かずに、一つずつ列挙する形式で記載し、債務の項目には、割合や金額などで分担を記載しましょう。
ただし、遺産分割協議で債務を相続人間でどのように分担したとしても、債権者は、各相続人に対して法定相続分に応じた債務の弁済を請求できます。
請求を受けた相続人は、相続人同士の合意を理由に支払いを拒否できません。
一方、債権者に支払いをした相続人は、遺産分割協議の合意では負担しないことになっている額について「被相続人の債権者から〇〇万円を請求されて支払ったので、△△万円を渡して」と他の相続人に求償することができます。
しかし、相続人間の債務の負担について債権者の合意を得ておけば、債権者に対してその旨を主張することが可能になります。
なお、ローン・借金といった債務についての遺産分割協議書の書き方については、「遺産分割協議書を自分で作成する方法|ひな形付きで分かりやすく解説」をご一読ください。
遺産分割協議書の作成ご自分で作成できるだけでなく、行政書士や司法書士、弁護士といった専門家に依頼することもできます。
遺産分割協議書の作成だけを依頼するのであれば、行政書士に依頼すると費用は比較的に安価で済むでしょう。
もし、遺産分割協議自体に紛糾するおそれがある場合には、遺産分割協議書の作成も含めて弁護士に依頼するといいでしょう。