自筆証書遺言保管制度の利用方法をわかりやすく解説

igonsho homukyoku

自筆証書遺言保管制度は、民法改正によってできたまだ新しい制度です。

そこで、この制度を利用したい方のために、利用方法や費用からメリット・デメリットまでを解説します。

1.法務局で保管できる自筆証書遺言保管制度

まず、自筆証書遺言保管制度の概要に触れておきましょう。

1-1.自筆証書遺言保管制度ができた背景

従来、自宅に自筆証書遺言を保管していると、次のような問題がありました。

  • 遺言書の紛失・亡失の可能性
  • 相続人等による遺言書の破棄、改ざん、隠匿の可能性
  • これらによる相続問題の発生、激化
  • 相続開始後、相続人が遺言書に気づかなかい
    など

実際に、遺言書の改ざんや隠匿に起因する争いは少なくありません。

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1-2.自筆証書遺言保管制度の概要

自筆証書遺言保管制度は、法務局が自筆証書遺言を適正に長期間保管してくれる制度です。これにより、遺言者は、自筆証書遺言の保管方法について頭を悩ませる必要がなくなりました。

原本だけでなく、画像データとして保存してもらうことも可能です。

  • 原本:遺言者死亡後50年
  • 画像データ:遺言者死亡後150年

自筆証書遺言保管制度を利用すると、以下のことが可能になります。

遺言者自身ができること

  • 原本・画像データの閲覧
  • 保管申請の撤回が可能
  • 相続開始時の通知
    など

相続人などが相続開始後できること

  • 原本・画像データの閲覧
  • 自分が相続人や受遺者、遺言執行者となる遺言書が保管されているかの確認
  • 遺言内容の証明書(遺言書情報証明書)の取得
    など

【参考外部サイト】「自筆証書遺言保管制度のご案内」|法務省民事局

2.自筆証書遺言保管制度のメリット・デメリット

では、自筆証書遺言保管制度には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

2-1.自筆証書遺言保管制度のメリット

自筆証書遺言保管制度を利用すると、次のようなメリットがあります。

  • 紛失・防湿・破棄・改竄といった心配がない
  • データ化されるため長期保存が可能
  • 遺言書の検認が不要になる
  • 相続開始時に、遺言者の希望する通知対象者に遺言が保管されている旨の通知ができる
  • モニターでの閲覧や遺言内容の証明書(遺言書情報証明書)の取得が全国どの法務局出も可能

この他にも、自筆証書遺言制度を利用すると、公正証書遺言よりも安く作成・保管してもらうことができるといったメリットもあります。

2-2.自筆証書遺言保管制度のデメリット

法務局に遺言書を保管してもらう際に、事務官は、自筆証書遺言として法律上の様式を満たしているかをチェックします(遺言書保管法4条2項)。

ただし、法務局が受理してからといって必ずしも遺言書が有効とは限りません例えば、遺言者に遺言能力がなかったことが証明されれば、無効になってしまうケースも考えられます。

確実に有効といえる遺言書をのこすためには、遺言書作成の段階から弁護士と相談するのがベストです。

3.自筆証書遺言保管制度の利用方法

最後に、自筆証書遺言保管制度の利用方法についてご説明します。

3-1.自筆証書遺言を保管してもらえる法務局を探す

法務局とは、不動産登記や法人登記のほか、供託や外国人が帰化する際の相談窓口となったり、国が訴訟当事者となった場合に法定代理人となる法務省が管轄する役所の1つです。

遺言書の保管は全国の法務局で行われていますが、どの法務局でも保管してもらえるというわけではありません。

自筆証書遺言保管制度の利用を申請できるのは、以下いずれかの法務局となります(法務局における遺言書の保管等に関する法律4条3項)。

  • 遺言者の住所地(住んでいる場所)
  • 遺言者の本籍地
  • 遺言者が所有している不動産のある場所

ご自分が自筆証書遺言をどの法務局に持参すればいいかは、次のサイトでご確認いただけます。

【関連外部サイト】「07 管轄/遺言書保管所一覧」自筆証書遺言保管制度|法務省

また、既に遺言書を保管してもらっている場合には、同じ法務局に追加で遺言書を保管してもらうことが可能です。

3-2.自筆証書遺言保管制度の申請書を作成

自筆証書遺言を保管してもらうには、遺言書とともに申請書を提出しなければなりません(同法4条4項)。

申請書に記載する事項は、以下になります。

  1. 遺言書に記載されている作成の年月日
  2. 遺言者の氏名、生年月日、住所及び本籍(外国人は国籍)
  3. 遺言書に次の者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
    ・受遺者
    ・遺言執行者

以下のサイトには、そのまま申請書として使えるフォーマットの他、記載例が載った見本もあるので、参考にしてください。

【参考外部サイト】「06 申請書/届出書/請求書等」自筆証書遺言保管制度|

「死亡時の通知の対象者欄」への記入で相続開始次の通知

遺言者がお亡くなりになった際に、遺言書を保管している旨を法務局から通知してほしい場合には、「死亡時の通知の対象者欄」に記入します。

ただし、通知を受けることができるのは、受遺者や、遺言執行者、推定相続人などのうち1人に限られます。

3-3.遺言書と申請書を法務局に提出

法務局に保管を申請するためには、まず法務局にそのための予約をしなければなりません。

また保管の申請には、遺言者がご自分で持参する必要があり、遺言書はホチキス止めなどはせずに、バラバラのまま持参します。封筒なども必要ありません。

  • 申請できる法務局に、本人が持参する(同法4条1項)
  • 持参する時点では封をしていないこと(同法4条2項)

必要書類

保管申請当日は、次の書類を持参することも忘れないでください。

  • 本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し
  • 本人確認書類:運転免許証・マイナンバーカードなど(※)

※本人確認書類に有効期限がある場合は、有効期限内のものに限る。

3-4.自筆証書遺言保管制度にかかる費用

自筆証書遺言保管制度を利用するには、手数料が発生します。手数料は、収入印紙を手数料納付用紙に貼って提出します。

  • 法務局に収める手数料:3,900円/遺言書1通

遺言者の氏名や出生の年月日、遺言書保管所の名称保管番号が記載された保管証を受け取り、保管の手続きは終了します。

4.まとめ

民法の改正で、自筆証書遺言であっても、財産目録の作成はパソコンでも可能になり、今回の法務局での保管と併せて、遺言書が身近なものになってきました。

制度自体は、使いやすいように変わってきています。相続人間の争いを避けるためにも、遺言書を遺し、自分の意思をしっかり伝えることを検討してみてもいいタイミングではないでしょうか。

しかし、実際に書いてみると遺言書には、意外と難しい点が多々あります。試しに一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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