不動産と預貯金を別々に相続した場合の遺産分割協議書の書き方

被相続人の遺言書がない場合などには、相続人全員で遺産をどのように分けるかについて遺産分割協議をすることになります。
相続人の同意ができれば、遺産はどのように分割してもかまいません。民法900条には、目安として相続人ごとに法定相続分が定めれていますが、法定相続分に準じて分割しなければならないわけでもありません。
そのため、遺産ごとに取得する相続人が異なる分割方法も可能です。
そこで、ここでは、遺産分割協議によって、不動産と預貯金を別々の相続人が取得した場合の遺産分割協議書の書き方についてご説明します。
目次
1.預貯金を相続人の1人が取得した場合の遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議によって、預貯金すべてを相続人の1人が取得した場合の遺産分割協議書の書き方は次の通りです。
1.次の預貯金は、相続人甲が取得する。
〇〇銀行〇〇支店 口座名義人 〇〇〇〇 普通預金 口座番号******
ゆうちょ銀行 通常貯金 記号 ○○ 番号 ○○○○○○
2.不動産を相続人の1人が取得した場合の遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議によって不動産を相続人の1人がすべて取得した場合の遺産分割協議書の書き方は次の通りです。
2-1.不動産を別々に相続した場合
不動産を取得した場合の遺産分割協議書の書き方は、土地・家屋であっても、マンションであっても基本的に変わることはありません。
土地・建物を1人の相続人が取得した場合
2.相続人乙は、以下の遺産を取得する。
(1)土地
所在 東京都○○区△△町□□丁目
地番 ○○番〇
土地の種類 宅地
地積 ○○平方メートル(2)建物
所在 東京都○○区△△町□□丁目○○番地
地番 ○○番
種類 居宅
構造 木造スレート葺2階建
床面積 1階○○平方メートル、2階○○平方メートル
マンションを相続人の1人が取得した場合
3.相続人丙は、以下の遺産を取得する。
(1)建物
一棟の建物の表示
所在 東京都渋谷区恵比寿3丁目31番地12
建物の名称 ○○マンション専有部分の建物の表示
家屋番号 渋谷区恵比寿3丁目31番地12の301
建物の名称 301
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造15階建
床 面 積 10階部分 〇〇.〇〇㎡敷地権の目的たる土地の表示
符 号 1
所在及び地番 東京都渋谷区恵比寿3丁目31番地12
地 目 宅地
地 積 〇〇〇.〇〇㎡
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 〇〇〇〇〇〇分の〇〇〇〇
3.不動産と預貯金を別々に相続した場合の遺産分割協議書の書き方
例えば、相続人花子が預貯金を、相続一郎が土地・家屋を、相続花江がマンションを遺産分割協議によってそれぞれ取得したとすると、上記3つを組み合わせれば、次のような預貯金と不動産を別々に相続した場合の遺産分割協議書が出来上がります。
被相続人 相続太郎
本籍地 鹿児島県○○市○○
死亡時の住所 東京都○○区○○
生年月日 昭和○○年〇月〇日
死亡年月日 令和〇年〇月〇日被相続人相続太郎の遺産について、被相続人の妻相続花子、被相続人の長男相続一郎、被相続人の長女相続花江によって遺産分割協議を行った結果、次のとおり合意が成立した。
1.相続人相続花子は、以下の遺産を取得する。
(1)預貯金
〇〇銀行〇〇支店
口座名義人 〇〇〇〇
普通預金 口座番号******
残高〇〇円および相続開始後に生じた利息とその他の果実2.相続人相続一郎は、以下の遺産を取得する。
(1)土地
所在 東京都○○区△△町□□丁目
地番 ○○番〇
土地の種類 宅地
地積 ○○平方メートル(2)建物
所在 東京都○○区△△町□□丁目○○番地
地番 ○○番
種類 居宅
構造 木造スレート葺2階建
床面積 1階○○平方メートル、2階○○平方メートル3.相続人相続花江は、以下の遺産を取得する。
(1)建物
一棟の建物の表示
所在 東京都渋谷区恵比寿3丁目31番地12
建物の名称 ○○マンション専有部分の建物の表示
家屋番号 渋谷区恵比寿3丁目31番地12の301
建物の名称 301
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造15階建
床 面 積 10階部分 〇〇.〇〇㎡敷地権の目的たる土地の表示
符 号 1
所在及び地番 東京都渋谷区恵比寿3丁目31番地12
地 目 宅地
地 積 〇〇〇.〇〇㎡
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 〇〇〇〇〇〇分の〇〇〇〇上記協議の成立を証するために本書面3通を作成し、各署名捺印して各自1通を保管する。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人 相続花子 ㊞住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続人 相続一郎 ㊞住所 東京都○○区○○丁○○番○○号
相続花江 ㊞
なお、こちらの記載例は、下のボタンからword形式、PDF形式でダウンロードしていただけます。しかし、この通りに記載しなければならないというわけではありません。
wordをダウンロード | PDFをダウンロード |
遺産分割協議書についてのよくある質問(FAQ)
遺産分割協議書にはすべての遺産を1通にまとめて記載しなければならないの?
遺産分割協議書には、法律上定められた様式はありません。
したがって、遺産分割協議書は、預貯金ごとや不動産ごとに複数作成してもかまいません。遺産分割協議がまとまった財産ごとに作成してもOKです。
例えば、銀行に遺産分割協議書を提出する際に、被相続人の所有していた不動産を知られたくなければ、預貯金のみの遺産分割をまとめた遺産分割協議書を提出してもかまいません。
遺産分割協議書の提出先は?
遺産分割協議書の主な提出先は、以下の5つです。
- 金融機関:預貯金の相続手続き
- 証券会社:株式などの名義変更
- 運輸支局:自動車の相続手続き
- 法務局:不動産の相続登記
- 税務署:相続税申告
遺産分割協議書の作成は専門家に依頼すべき?
遺産分割協議書は、相続人自身が作成することが可能です。
しかし、前述した通り遺産分割協議書は、相続登記や相続税申告など公的機関に提出することもあり、記載ミスや記載漏れといった不備があると受け付けてもらえない可能性もあります。
一方で、相続に強い弁護士であれば、遺産分割協議書の作成だけでなく、遺産分割協議の交渉から依頼することができます。
ご自分で遺産分割協議書を作成することに不安がある場合には、一度弁護士に相談してはいかがでしょうか。