遺産分割調停や審判の管轄裁判所は?相手が複数の場合はどうする?

遺産分割協議が合意に至らなければ、舞台を裁判所に移し調停委員の仲介の下で相続人が話し合いを続けることになります。

では、遺産分割協議が合意に至らない場合には、どこの裁判所に調停を申し立てを行えばいいのでしょうか?

今回は、遺産分割協議の調停や審判の裁判所管轄について解説します。

なお、遺産分割調停や審判の内容については、次の記事を参考にしてください。

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1.裁判所の管轄

最初に、裁判所の管轄について簡単に触れておきましょう。

1-1.裁判所の管轄

裁判所の管轄とは、特定の事件をどこの裁判所が審理・裁判できるのかという裁判所の権限を指します。

裁判所の管轄は法定されているため、自分の好きな裁判所に申し立てをしても、正しい管轄裁判所に「移送」されてしまいます。

すべての事件は、いずれかの裁判所の管轄に帰属することになります。

1-2.裁判所の種類

日本には、「簡易裁判所」、「家庭裁判所」、「地方裁判所」、「高等裁判所」、「最高裁判所」の5つの裁判所が存在します。

5つの裁判所

このうち、「簡易裁判所」や「家庭裁判所」、「地方裁判所」が三審制のうち第一審を担当し、相続問題は、「家庭裁判所」が担当します。

「家庭裁判所」は、相続問題の他に後見、養子縁組などの家事事件、離婚や親子関係の存否といった人事事件を扱います。遺産分割調停は、この家庭裁判所に申し立てを行います。

2.遺産分割調停の管轄

では、遺産分割調停の管轄裁判所は具体的にどこになるのでしょうか?

2-1.遺産分割調停の管轄裁判所

遺産分割調停の管轄裁判所は次のいずれかになります。

遺産分割調停の管轄裁判所

相手方住所地」とは、現在相手方が居住する住所を指し、この住所地を管轄する家庭裁判所が原則として管轄となります。

当事者が合意した家庭裁判所があれば、そこが「合意管轄」となるため、その家庭裁判所にも遺産分割調停の申し立てが可能になります。

具体的な調停の管轄については、以下のサイトから調べることができます。

【参考外部サイト】「裁判所の管轄区域」|裁判所

2-2.合意管轄について

合意管轄は、単に当事者が合意をすればいいというものではありません。

合意管轄に基づいて申し立てを行う場合には、当事者が合意したことを示し、署名・押印した「管轄合意書」を申立書に添付して提出する必要があります。

管轄合意書の書式については、以下を参考にしてください。

【参考外部サイト】「管轄合意書」|裁判所

2-3.自庁処理について

間違った管轄の裁判所に申し立てをすると、正しい管轄の裁判所に移送されることは前述しましたが、法定された管轄裁判所では、審審理を行うことが著しく不合理であるなど特殊な状況が発生することがあります。

そうした場合には、裁判所が職権で自ら事件を処理する自庁処理」を行うこともあります。自庁処理は、「事件を処理するために特に必要があると認めるとき」のみ認められます(家事事件手続法9条1項但書)。

2-4.相手方が複数名の場合の管轄裁判所

遺産分割調停で相手方が複数の場合には、複数の相手方のうち誰の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをしても構いません。

ただし、調停には原則として出頭しなければならないため、交通費を抑えることができ、ご自分が通うのに無理がない、できるだけご自宅から距離の近い家庭裁判所を選んだほうがいいでしょう。

3.遺産分割審判の管轄

遺産分割調停が不成立になると、調停は審判に移行します。

一方で、一般に、訴訟を提起する前には、調停を経なければならない「調停前置主義」が取られますが(家事事件手続法257条1項)、遺産分割では、直接最初から「遺産分割審判」を申し立てることも可能です。

ただし、実務上は最初から審判を申し立てたとしても裁判所に調停に付されることが多くなります

遺産分割調停から審判に移行した場合と、直接遺産分割審判を申し立てた場合とでは、管轄裁判所が異なる場合があります。

3-1.最初から遺産分割審判を申し立てた場合の管轄

遺産分割調停を申し立てずに、最初から遺産分割審判を申し立てた場合の管轄は次の通りです。

遺産分割審判の管轄裁判所

「相続開始地」とは、被相続人が住所を置いていた最後の居住地を指します。

3-2.調停から審判移行した場合の管轄

相続開始地が、審判の管轄となるため、相続開始地を管轄する家庭裁判所に事件が移送されるケースがあります。

また、調停が不成立となり審判に移行した場合には、調停を行った家庭裁判所がそのまま審判を行うこともあります。

審判を移送するか否かの判断は、裁判所が行います。

4.遺産分割調停・審判の管轄についてよくある質問(FAQ)

相手方の住所地が遠方な場合はどうすればいい?

こうしたケースでは、「電話会議システム」の使用が考えられます。調停の申し立て時に、「電話会議システム」の使用を希望するのです。

電話会議システムは、自宅の最寄りの家庭裁判所に出頭し、家庭裁判所の電話会議システムを使用して調停を行うことができます。

ただし、使用が認められるのは、家庭裁判所が、「当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるとき」(家事事件手続法54条1項)であり、希望すれば必ず使用できるというものではありません。

遺産分割調停や審判の管轄裁判所は?

遺産分割調停の管轄裁判所は、次の通りです。

  • 相手方住所地を管轄する家庭裁判所
  • 当事者が合意で定めた家庭裁判所

次に、遺産分割審判の管轄裁判所は、以下の通りです。

  • 相続開始地を管轄する家庭裁判所
  • 当事者が合意で定めた家庭裁判所

まとめ

ここまで遺産分割調停や審判の管轄裁判所についてご紹介してまいりました。

遺産分割調停には、原則として当事者の出頭が求められます。こんな時、弁護士に依頼すると、管轄についてもしっかりと相談することができます。

また、弁護士は依頼者の代理人として一緒に裁判所に同席し、裁判所に対して当事者の考えを法的な主張として伝えることが可能となります。

もし、遺産分割でお困りの方がいらっしゃいましたら、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
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