戸籍の氏名に読み仮名の届け出が必要に!改正戸籍法施行はいつから?

戸籍には、これまで氏名の読み仮名の記載がありませんでした。
しかし、2023年の通常国会で戸籍に氏名の読み仮名を記載することが決まり、2024年には法律が施行されて1年以内に戸籍に記載された名前の読み仮名を届け出なければなりません。
本記事では、名前の読み仮名を届け出る理由や方法、届け出ない場合の自治体の対応などについて解説します。
目次
1.戸籍に載っている氏名の読み仮名に届け出が必要な理由
相続手続きでは、お馴染みの戸籍ですが、どのようなことが記載され、何を目的に国が管理しているかをはっきりと理解している方は少ないかもしれません。
そこで最初に戸籍とはどのようなものかについて触れた後に、戸籍に記載されている氏名の読み仮名を届け出させる理由についてご説明します。
1-1.戸籍ってどんなもの?
戸籍は、日本国民である国籍と、日本国民の出生、婚姻、死亡などの身分関係の変遷を登録し、公に証明することができる公簿です。
戸籍の筆頭者以外の者が婚姻届を提出すると、新たな戸籍が編製されることになります。
戸籍には、次の事項が記載されています。
- 本籍
- 筆頭者の氏名(戸籍の一番最初に記載される者)
婚姻後に夫の氏を名乗る場合は夫、妻の氏を名乗る場合は妻の氏名が記載される - 同じ戸籍内に記載される全員の以下の事項
名前
生年月日
父母の氏名と続柄
出生地
婚姻日
出生事項
婚姻事項 など
以下は、東村山市の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)のサンプルです。
ご覧いただいてお分かりの通り、戸籍には、氏名の「読み仮名」は記載されません。
そもそも、読み仮名は、戸籍の記載事項には含まれていません。したがって、名前の読み仮名については、国の証明が働かないということになります。
【出典】「戸籍の電算化について 電算化後の戸籍(見本)」より|東村山市
1-2.戸籍に記載された氏名の読み仮名を届け出る理由
氏名の読み仮名の法制化に関する研究会によると、氏名の読み仮名の法制化が必要な理由について、次の2つを挙げています。
- 氏名の読み仮名を一意のものとして、これを官民の手続において利用可能とすることにより、氏名の読み仮名が個人を特定する情報の一部であるということを明確にし、情報システムにおける検索及び管理等の能率、更には各種サービスの質を向上させ、社会生活における国民の利便性を向上させるため。
- 氏名の読み仮名をマイナンバーカードなどの公的な身分証に記載し、本人確認資料として広く利用させ,これを客観的に明白にすることにより、正確に氏名を呼称することが可能となる場面が多くなり、国民の利便に資する上、氏名の読み仮名を本人確認事項の一つとすることを可能とすることによって、各種手続における不正防止を補完することが可能となるため。
【出典】「氏名の読み仮名の法制化に関する研究会取りまとめ 令和3年8月」|法務省
一読しただけではよくわからない理由です。
しかし、政府が2020年に閣議決定した「デジタルガバメント実行計画」(※1)には既に「読み仮名の法制化の検討」が含まれており、2021年にはマイナンバーカードの海外利用が可能となる2024年に合わせて、カードにローマ字で氏名を表記できるように、読み仮名を戸籍の記載事項に加えることを検討し始めています(※2)。
いずれも、データベースやシステム処理、検索がしやすいようにしたい政府によるデジタル化推進のための方策の一部です。また、マイナンバーカードに読み仮名を表記する目的もあります。
※1 「デジタルガバメント実行計画」|政府CIOポータブル
※2 「戸籍に読み仮名、法制化へ マイナンバーカード海外利用前に」|産経新聞
2.全国民に氏名の読み仮名を登録させる方法
では、どのように全国民に読み仮名を登録させるのでしょうか?届け出は以下の方法で、法律の施行後、本籍地の市区町村へ1年以内に行わなければなりません(※)。
- 郵送による方法
- マイナポータルを使った届け出
新生児の出生届には、名前の「よみかた」の記入欄が設けてあります。新生児の氏名の読み仮名は、この出生届を使って、戸籍に登録されることになります。
氏名の読み仮名は、戸籍にカタカナで登録される予定です。
【参考外部サイト】「氏名の読み仮名の届出手続(案)」|法務省
2-1.届け出のない氏名の読み仮名はどうなる?
しかし、全国民約1億2,000万人全員に届け出をさせるのは、至難の業でしょう。届け出をしなかった人の読み仮名は、どのように処理されるのでしょうか。
住民基本台帳には、出生届を使って読み仮名が記載されている自治体があります(ただし、住民基本台帳法7条には、読み仮名が記載事項とはされていません)。
また、パスポートには、氏名のローマ字表記が記載されています。
そこで、これらの情報を参考に、市区町村長が職権で記載することになります。
2-2.市区町村への届け出時に想定される問題
法務省は、現在戸籍があり、既に使用されている氏名の読み仮名は認める予定です。
しかし、中には住民基本台帳やパスポートと異なる読み仮名を届け出る人が出てくる可能性もあります。また、家族で同じ氏を異なる読み仮名で届け出ないとも限りません。
各自治体の担当者が、対応に苦慮するようなことがないように、事前に十分な準備・説明が望まれます。
2-3.新生児の読み仮名には登録できるものとできないものがある
新生児の場合には、戸籍に登録できる読み仮名とできない読み仮名とがあります。
戸籍に記載できる読み仮名として、「氏名に用いる文字の読み方として一般に認められているもの」という基準が示されています。
この基準について、詳しくは今後法務省が通達によって示すことになっています。
次のようなケースでは、戸籍への登録が認められない可能性があります。
- 漢字の意味と読み仮名が反対:「高」を「ヒクシ」と読むケース
- 漢字に対して読み違いかどうかが判然としない:「太郎」を「ジロウ」と読むケース
- 漢字の意味や読み方との関連性をおよそ認めることができない:「加藤」を「スズキ」と読むケース
漢字の読み方も多様化の一途をたどり、「キラキラネーム」が話題になっていますが、法務省では、「「行きすぎた『キラキラネーム』など、社会に混乱を招く極端なものは記載されない。そのうえで、辞書に載っている読み方だけではなく、載っていなくても、社会に一定程度受け入れられる読み方であれば認められる方向だ」としています。
戸籍に登録された読み仮名の変更をしたい場合には、家庭裁判所での許可を得て、その旨を届け出る手続きが必要になる予定です。
まとめ
ご自分の名前に愛着を持つ方も多く、氏名の読み仮名が戸籍に登録できるのは、嬉しいニュースです。
しかし、マイナンバーカードの混乱を目の当たりにすると、読み仮名を戸籍に登録するために、十分に準備していただきたいと思います。