成年後見制度利用促進法とは

日本は近い将来「超高齢化社会」がやってくることが決定的な状況です。内閣府の統計データによると、日本の総人口は2010年を境に減少に転じ、2050年には1億人を割る見通しです。それに対し高齢者の人口比率はどんどん上昇し、2060年には75歳以上の人口比率が26.9%つまりは4人に1人が75歳以上となり、65歳以上となると2.5人に1人という驚異的な比率となることが予想されています。
このような人口構造の中、必ず問題となって浮上してくることが予想されているのが「成年後見」です。
このような超高齢化社会にむけて日本政府もついに動き出し、長年一部で検討されてきた「成年後見制度利用促進法」が2016年4月8日の衆院本会議で可決成立しました。
では、今回の改正で成年後見制度の何が変わるのでしょうか。
成年後見制度利用促進法の目的
成年後見制度利用促進法の目的としては、今後増えていく高齢者を支えられるだけの後見人の育成を促進するもので、施行によってすぐに現在の成年後見事務が具体的に変更するという内容ではありません。むしろこれと同時に成立した「成年後見の事務の円滑化を図るための民法および家事事件手続法の一部を改正する法律」のほうが重要となります。
「成年後見の事務の円滑化を図るための民法および家事事件手続法の一部を改正する法律」の目的
現在の法律では、以下のようなケースに対して、成年後見人にその権限が付与されていなかったことから、対処に問題が生じていました。
2:死後の葬儀手配など
これらについては正式に成年後見人の権限とされていなかったため、後見事務において適切な対応や処理ができなかったり、死後の葬儀手配などについては応急処分義務や事務管理などとして処理をせざるを得ませんでした。
これが今回の改正によってこの法律自体を根拠として、成年後見人が堂々とその権限に基づいて対応することができるようになります。
ただ一方でこのように成年後見人の権限が明確化されることによって、現在運用されている死後事務委任などの事務委託契約との調整が難しくなるのではとの懸念もあるようです。つまり、現行一定のメリットがあって運用している部分に悪影響を与えないよう新しい制度を運用していく必要があるのです。
これらの法律の制定は、将来の超高齢化社会に向けて非常に重要な一歩であることは確かですが、これらの法律を根拠として、具体的にどのような運用をするのかがとても重要となるでしょう。
成年後見制度利用支援事業とは
このような動きの中、各自治体も成年後見制度の利用促進のために成年後見制度利用支援事業を行っています。
成年後見制度利用支援事業とは、認知症や痴呆、知的障害者などで本来であれば成年後見制度が利用できる状態にあるにも関わらず、制度に対する理解が不十分だったり費用的な問題で利用ができずにいる人たちに対して、自治体レベルで成年後見制度の利用を支援していこうという試みです。
具体的な事業内容としては、成年後見制度の概要をわかりやすく解説したパンフレットなどの配布や、高齢者やその家族に向けた説明会、相談会の実施、後見事務を実施している団体等の紹介などがあります。
この他にも各自治体によって成年後見の申立てにかかる費用の一部や、後見人等に対して支払う報酬に助成金を支給しています。また、身寄りがない人や親族による成年後見の手続きが難しい人などについては、市長が代わって申し立てを行うこともできます。
このように自治体レベルでも成年後見制度の利用促進に向けて、さまざまな取り組みが行われているのです。