成年被後見人死亡後の対応と相続の流れ

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介護をする手

成年後見人は、被後見人のために財産管理や身の回りのサポートをしますが、もちろん月日が経てば成年被後見人ご本人が死亡してしまうこともあります。

本記事をご覧くださっている皆さまの中にも、被後見人の方がお亡くなりになってどうすればよいか困っている方もいるのではないでしょうか。まずは、これまで成年後見人としてのお仕事、大変お疲れさまでした。

今回は、成年被後見人の死亡後、後見人としてどのような対応が必要になるかについて解説していきます。

1.成年被後見人本人が死亡したらすべきこと

まず、成年被後見人が死亡した場合には、成年後見の関係は必ず終了し、後見人は代理する権利を失います(※)。

具体的な手続きとしては、家庭裁判所に対して成年被後見人が死亡した旨の報告を行い後見終了の登記申請を法務局にて行うこととなります。
この他、管理の計算や相続人への引き継ぎを行う必要もあります。

終了の登記には主に以下の添付書類が必要となります。

  • 本人死亡の記載のある戸籍謄本
  • 死亡診断書等

(※)成年被後見人が死亡したり失踪宣告を受けたりするなど、必ず後見制度が終了するような出来事は「絶対的終了原因」と呼ばれます。それに対して、被後見人ではなく後見人の死亡あるいは辞任など、後見自体は今後も必要ながら、もとの後見人との関係は終了するという出来事は「相対的終了原因」です。

2.成年被後見人本人死亡後の成年後見人の3つの義務

成年被後見人が死亡すると、その成年後見人は以下の3つの義務を果たさなければなりません。

①管理計算義務

まず、成年後見人は成年被後見人が死亡してから2ヶ月以内に「管理の計算」を行う義務があります(民法870条本文)。
もし期限内に管理の計算を終えられない場合は、家庭裁判所で伸長(延長)してもらえる場合があります(民法870条ただし書)。

管理の計算は、以下の手順で行います。

  1. 後見期間中の収支の決算を明らかにする
  2. 後見終了時点での後見財産を確定させる(財産目録の作成)
  3. これらの結果を相続人に報告する(複数いる場合は代表者)

成年後見人による不正な使い込みなどの疑いをかけられないためにも、後見監督人がいる場合にはその立ち合いのもと行わなければなりません(民法871条)。

ちなみに、管理計算が終わる前に成年後見人が死亡してしまった場合は、成年後見人の相続人が管理の計算の義務を引き継ぐことになります。

②引き継ぎ義務

成年被後見人が死亡すると、その財産は被後見人の相続人に相続されます。
成年後見人はそれまで管理していた財産を相続人に対して引き継がなくてはなりません。

銀行の相続手続きや不動産の相続登記申請等を行うとトラブルの原因にもなりますので、あとのことが心配なお気持ちは分かりますが、現状のまま引き継ぐようにしましょう

なお、遺言書が残されている場合には、遺言執行者に対して引き継ぐこととなります。

③応急処分義務と死後事務

応急処分義務

従来から、成年被後見人の死亡後、急を要する事情に関しては対応しなくてはならないとする「応急処分義務」があります(民法874条)。
しかし、何が応急処置義務にあたるのか具体的な基準が設けられていなかったため、後見人が対応に苦慮するという問題がありました。

そこで新たに「死後事務」が平成28年の民法改正によって規定されました。

死後事務

死後事務は、成年被後見人の死亡後に後見人が行うことができる事務です(民法873条の2本文)。
これは正確には義務ではなく「することができる」事務ですが、あわせてここでご紹介します。

死後事務の例としては、成年被後見人の生前にかかった医療費や入院費、公共料金の支払い、遺体の引き取り・火葬などがあります。
【参考】法務省

成年後見人が行うことができる死後事務の「種類」は以下の3つです。

  1. 個々の相続財産の保存に必要な行為
  2. 弁済期が到来した債務の返済
  3. 被後見人の火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産全体の保存に必要な行為
    ただし、3については家庭裁判所の許可が必要です(民法873条の2ただし書)。

また、上記の死後事務を行うために成年後見人が満たすべき「条件」は以下の3つです。

  • 成年後見人がその事務を行う必要があること
  • 成年被後見人の相続人が相続財産を管理できる状態にはないこと
  • 成年後見人がその事務を行うことが、成年被後見人の相続人の意思に反していないこと

3.成年被後見人の死亡後の注意点

3-1.成年後見人が被後見人の相続人でもある場合

成年後見人が、死亡した被後見人の法定相続人の一人である場合、財産の引き継ぎ業務などでトラブルが発生することがあります。
成年後見人を被後見人ご本人の親族が務めるのは、よくあるケースですよね。

成年後見人が相続人でもある場合、被後見人本人の死亡後は、財産の所在を明確にするとともに、すべての相続人から疑いがかけられないようクリアな引き継ぎが求められます

このように、死亡後に争いに発展するリスクを考えると、成年後見人選びの段階で身内よりも専門家である弁護士などに依頼をしたほうが賢明です。

3-2.相続人が認知症や痴呆の場合

最近増えているのが、成年被後見人の相続人が認知症や痴呆などによって更に成年後見が必要な状態になっているケースです。

例えば夫が死亡し、本人の法定相続人として妻と子供2人がいると仮定します。
このようなケースで妻もすでに高齢で認知症であるというパターンはよくあります。

しかし、たとえ判断能力のない妻であっても、差し置いて勝手に遺産分割協議を進めることはできません。
この際は、まず相続人である妻の成年後見の申し立てから始めなければならないのです。

4.成年後見の申立てから相続までの具体的な流れ

4-1.成年後見の申立て

認知症や痴呆の法定相続人に対して成年後見人をつけるために、家庭裁判所に対して後見開始の審判の申し立てを行います。

この際の管轄裁判所は、認知症や痴呆である本人の住所地の家庭裁判所です。
申し立ては本人のほか、配偶者、四親等以内の親族、検察官などが行えます。

【申立てにかかる費用】
・申立手数料:収入印紙800円
・郵送用切手代:数千円
・登記手数料:収入印紙2,600円

なお、場合によっては鑑定料として数万円かかることもあります。

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4-2.遺産分割協議

成年後見人が家庭裁判所から選任されたら、成年後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加することとなります。

なお、成年被後見人にとって不利益となるような内容の遺産分割協議は認められません。
最低でも成年被後見人の法定相続分程度を確保できるような内容でなければ、後見監督人や家庭裁判所から注意されるでしょう。

相続人に成年後見人をつける際の注意点

相続人に成年後見人をつける場合、同じ相続人が成年後見人となるケースがあります。
先ほどの例のように妻と子が相続人になり、子が妻(母)の後見人となるような場合です。

ただ、そうなると妻の遺産分割協議を同じ法定相続人である息子が代理でき、利益相反関係になってしまいます(民法860条、826条)。
つまり、この息子は自分自身の相続人としての立場と、妻(母)の相続人としての立場の両方がありますが、自分を有利にしようとすれば、妻(母親)を不利にすることになってしまいます。

そこで、このようなケースで息子が成年後見人となるような場合は、以下のような対策が必要になります。

後見監督人を選任する

後見監督人は利益相反行為について被後見人を代表(代理)することができます(民法851条4号)。
そのため、後見監督人を選任して先ほどの例の妻(母)を代理してもらうことで、後見人になる息子は自分自身の立場で遺産分割が可能になります。

特別代理人を選任する

利益相反となるケースが遺産分割協議だけの場合は、「特別代理人」の選任を家庭裁判所に対して申し立ててもいいでしょう。

相続放棄する

後見人になる息子が相続放棄していれば、被後見人になる妻(母)との利益相反関係は解消されます。

4-3.名義変更手続き

遺産分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。

そして、分割した財産を遺産分割協議書の内容に沿って一つずつ名義変更していきます。
この際、成年後見人は本人に代理して手続きに必要な署名なども行うこととなります。

5.まとめ

成年被後見人が亡くなった場合の後見人の事務と、相続人にも成年後見が必要な場合の手続きと注意点をご説明してきました。

被後見人が亡くなったときの後見人としては、大きく分けると①管理の計算、②相続人への引き継ぎ、③死後事務・応急処分義務の3つがあります。
長い間後見人を務め、様々な想いがあると思いますが、後見人としての最後の仕事として、もう一息頑張ってください。

また、もし相続人に認知症の方がいるなどでさらに新たな成年後見が必要な場合、申し立て自体は通常の流れで行うことができます。
ただし、相続人同士で被後見人と後見人の関係になると、利益相反が問題になります。

後見監督人を選任するなどの方法もありますが、この場合は最初から弁護士などの専門家に後見人を依頼したほうが無難でしょう。

成年後見についてお悩みのことがあれば、まずはご自分の状況を弁護士に相談してみることをおすすめします。

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