オウム真理教の四女が、父母を相続廃除!「相続廃除」徹底解説

★ お気に入りに追加

1.相続廃除の関連ニュース

オウム真理教が起こした複数の事件は、日本を震撼させた稀に見る凶悪事件です。彼らの行いにより、多くの人が犠牲になったことは紛れもない事実。しかし、事件には関与していない彼らの身内も同様に被害者といえます。

2017年11月、オウム真理教の教祖であった父母が娘の推定相続人から廃除されることがわかりました。四女である娘からの申立てであり、親の非行を考えると当然のことだといえるでしょう。

この事件の概要から、身内を相続人から廃除する方法についてまで解説したいと思います。

2.オウム真理教の四女が父母の「相続廃除」を申し立て

はじめに、オウム真理教の娘の「相続廃除」申し立ての概要と、「相続廃除」の基本についてご説明いたします。

2-1.審判概要

2017年11月31日、2015年12月に申し立てられた1つの審判の認容判決が確定しました。それは、オウム真理教の教祖の娘(四女)が申し立てた父母の相続廃除の申立てに対する審判です。父母が犯した殺人罪などの刑が、相続廃除要件である「著しい非行」にあたると認定されました。

また、四女は、父である松本死刑囚から虐待も受けていたこと、事件後も母から信仰を続けるよう強要されていたことなどを認定し、四女にとって「重大な不利益」があったことも認定しています。

審判の間、父母は反論せず、2017年8月9月に行われた審問にも姿を見せませんでした。四女自身、「父母と縁を切りたかった」ことを語っており、父親の死刑についても「当然執行されるべき」と語っています。 これらが、事件の概要となります。

娘としては耐え難い苦痛を味わったという点が審判の判断において考慮されたのでしょう。相続廃除によって親子の縁が切れることを望んでいたことが彼女自身の言葉から伺い知れます。

2-2.「相続廃除」ってなに?

次は、「相続廃除」について少し理解していきましょう。そもそも「相続廃除」とはどんな法的手続きを指すのでしょうか。

「相続廃除」については、民法892条に定めがあります。具体的には、「遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる」と規定されています。

簡単に説明すると、相続される側の請求あるいは、遺言によって推定相続人の相続権を取り上げてしまう手続きのことをいいます。

2-2-1.「相続廃除」できる者・できない者

相続人であれば誰でも廃除できるわけではなく、遺留分を有している相続人のみ廃除が可能となります。具体的には、配偶者、子、直系尊属(祖父母)となります。兄弟姉妹は、廃除の対象にはなりません。仮に、兄弟姉妹を廃除したいのであれば、相続財産を渡さない旨の遺言を作成する必要があります。

また、廃除が行われても、直系卑属(廃除者の子ども)への代襲相続は行われます。 このように、「相続廃除」とは被相続人に相続を受けさせない法的手続きのことを指します。

2-2-2.【参考】「相続排除」ではなく「相続廃除」

ところで、「相続排除」と漢字を間違われる方がおりますが、正しくは「相続廃除」です。

辞書を調べるとわかりますが、「廃除」は法律の専門用語であり、推定相続人の相続権を取り上げるという意味で利用されます。
一方で「排除」とは一般的に利用される用語で、不要な人や物を取り除くことです。2017年10月の衆院選の際に、当時の希望の党の代表であった小池百合子氏が「排除いたします」と言って物議を醸したのは記憶に新しいところです。

2-3.「相続廃除」の年間件数

では、「相続廃除」は年間でどのくらいの件数が申立てられているのでしょうか?

司法統計によると、平成28年度の「相続廃除」に関わる家事審判事件の受理件数は、全体で310件でした。このうち、既済総数は210件、認容件数は、48件となっています。受理件数の約15%が認容となっています

平成21年度の同様の統計では、受理件数は、全体で157件、このうち既済総数は164件、認容件数は32件となっており、約20%の認容率となっています。

過去の統計と比較してみると、受理件数は上がっているものの、認容件数は減っていることがわかります。相続廃除によって家族の縁を切りたいと考える人が増えている一方で、安易な廃除は認めない方向に判断が向いているのかもしれません。

このように、「相続廃除」の件数は、近年増加しています。家族の縁は、切っても切れないと言われますが、法律上切ってしまいたいという方は意外と多いのかもしれません。

2-4.「相続廃除」の要件

では、「相続廃除」はどのような要件を充たす必要があるのでしょうか。

これは、上記で示した民法892条の規定を見ると知ることができます。具体的には、「被相続人に対して虐待あるいは重大な侮辱」行為があった場合、「推定相続人にその他の著しい非行があった」場合に、相続廃除が認められます。

2-4-1.「虐待」・「重大な侮辱」

「虐待」とは、被相続人に対する身体的・精神的暴力を指します。

「重大な侮辱」とは、被相続人の名誉あるいは感情を侵害するような行為を指します。これらの判断の基礎となる事情としては、当該暴力行為や言動の理由、責任の所在、継続的・一時的なものかなどが考慮されることになります。

2-4-2.「著しい非行」

「推定相続人にその他の著しい非行があった」場合とは、虐待や侮辱と同程度の精神的苦痛や損害を与える行為を指し、被相続人に対して行われたものに限りません。

具体的には、被相続人の財産を勝手に処分することや、重大な犯罪行為で有罪判決を受けたこと、浪費などで借金を繰り返したこと、実親子の場合は家族間の共同生活を破壊する程度の言動があったこと、配偶者の場合は婚姻を継続し難い重大な自由があること、養子の場合は養子縁組を継続し難い重大な事由があることなどが理由となります。

もっとも、これらの事由が認定されたとしても、必ず相続人廃除が決定されるわけではなく、これらの事情を考慮した上で審判が下されることになります。

このように、相続廃除が認められるためには、いくつかの要件をクリアしなければいけません。「嫌いである」という感情のみでは認められないため、相続廃除手続きをお考えの方は、具体的な理由を考えるようにしましょう。

3.相続廃除の方法

次に、「相続廃除」の方法について見ていきましょう。「相続廃除」の方法には、

  1. 家庭裁判所に請求する方法
  2. 遺言による廃除

の2種類があります。以下、詳しく説明します。

3-1.家庭裁判所に請求する

「相続廃除」の方法 では、家庭裁判所に対する請求はどのように行うのでしょうか。

まず、相続廃除の手続きですが、基本的には審判手続きによって行われます(調停もありますが、基本的な請求方法をお伝えします)。

審判を申し立てられるのは、生前廃除の場合は、被相続人(相続される側)ですが、死亡している場合は遺言執行者が申し立てることになります。

3-1-1.審判の手続き

裁判所は、被相続人の住所地が管轄裁判所です。裁判所には、推定相続人廃除審判の申立書を提出して、審判の申し立てを行います。 審判では、上記で説明した民法892条記載の廃除事由があるとかどうかについて審理されます。審問では、推定相続人と被相続人両者から陳述を聞くことになります。

審判の結果は、廃除を認める認容審判、廃除を認めない却下審判となります。推定相続人としては、廃除の認容審判に対し即時抗告ができ、被相続人は却下審判に対し即時抗告をすることができます。

3-1-2.審判後に廃除の届出

相続人廃除を認める審判が確定したら、これで終わりというわけではなく、届け出の手続きが必要となります。具体的には、被相続人の戸籍がある市町村役場へ審判書を提出して、廃除の届け出を行います。これにより、認容審判の結果が戸籍に記載され、無事、廃除の手続きが終了します。

認容の効果は、審判が確定したときから生じますが、遺言執行者が廃除請求を行うケースでは、被相続人の死亡時にさかのぼって効力が生じることになります。

このように、家庭裁判所に請求する場合は、相続人自ら申し立てる必要があります。自分で行うのは厳しいという場合は、弁護士などの専門家にお任せすることをおすすめします。

3-2.遺言による「相続廃除」の方法

では、遺言による「相続廃除」はどのように行われるのでしょうか。

まず、遺言による相続人の廃除は法律上「遺言廃除」といわれています。遺言ですので、被相続人が死亡した後に相続廃除の手続きがとられることになります。

そのため、遺言を確実に履行してくれる遺言執行者の選任が必要となります。遺言で指定することができますが、仮に指定がなかった場合は利害関係人(推定相続人など)から選任の申し立てを行うことも可能です。

3-2-1.遺言の作成

遺言の作成ですが、内容としては、

  1. 廃除したい遺留分を有する推定相続人
  2. 廃除を希望すること
  3. 廃除理由
  4. 遺言執行者の氏名

を明記します。

自筆による遺言の場合は、遺言所の作成年月日、氏名、押印が必要になります(民法966条1項)。全文自筆すること(手書き)にも注意が必要です。

自筆証書遺言について詳しく知りたい →
【関連】失敗しない自筆証書遺言の書き方

遺言廃除の場合、申立てができるのは遺言執行者です。相続開始後、遺言執行者が被相続人の最後の住所地にある裁判所に申し立てを行います(民法893条)。その後は、通常の相続廃除と同様の手続きとなります。

このように、相続廃除の手続きは2種類あります。自分自身の死亡後に、財産を渡したくない子どもや親がいる場合には、自分の意思が明確に実行されるよう生前中にどちらかの手続きを行っておきましょう。

4.相続廃除の取り消し

決定後にやっぱり取り消したい。取消しは可能? 「相続廃除」審判を行ったあと、「子どもが改心したので相続廃除を取り消したい」。そういう気持ちになる方もいらっしゃいます。相続廃除の取り消しについては、以下で解説します。

4-1.「相続廃除」の取消は可能なのか

まず、「相続廃除」の取消は可能なのでしょうか。

これについては、民法894条に規定があります。同条は、「被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。」と規定し、廃除審判が確定した後でも、取消しを認めています

また、取消し理由が制限されるのではないのか不安に思う方もいらっしゃいますが、基本的に取消し理由は不要です。

これは、相続人の意思を最大限尊重するために認められているものです。のちに、気持ちが変わることは、人間なので十分ありえます。非行事由があっても、改心する方もいらっしゃるため、家族の気持ちを考慮して、このような法律が規定されています。

以上から、相続廃除の審判後でも取消しは可能です。相続廃除に迷われている方も、取消ができるのであれば安心して行えることでしょう。

4-2.取消し手続き

では、「相続廃除」の取消し手続きはどのようにして行うのでしょうか。

まず、家庭裁判所に申し立てる形で請求を行った場合、取消しを行うために、被相続人が家庭裁判所に申し立てする必要があります。家庭裁判所で取消しの審判が認められたら、無事終了です。

次に、遺言廃除のケースですが、この場合は遺言執行人が家庭裁判所に請求を行います。認めれれば、取消されます。 取消しが行われると、廃除された相続人は相続権を回復します。遺言廃除の場合でも、相続開始時にさかのぼって効力が発生します。

このように、相続廃除の手続きは家庭裁判所の審判が必要になります。もっとも、これをクリアすれば相続人はいつでも取消しを行うことができるため、この点を考慮して相続廃除を検討してください。

5.相続廃除をお考えの方は、弁護士に相談を

ご自身が亡くなった後、相続の処理が心配という方はたくさんいらっしゃいます。親や子どもの非行を理由に、推定相続人から廃除したいという方は年々増えています。家庭裁判所の審判については、ご説明した以外にもいろんな疑問をお持ちだと思います。

まずは、相続問題を取り扱う弁護士や法律事務所にご相談ください。相続に関する疑問などを伺ったあとに、あなた自身の状況に応じて問題解決のお手伝いさせていただきます。

google ad 記事下

この記事が役に立ったらシェアしてください!