株式を相続させる遺言書の書き方

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株式を遺言により相続させるのは複雑そうな手続き必要で、本当に面倒ですよね。そんな株式を遺言により相続させるためにどのようなことが必要なのか、以下概説します。

1.相続と遺言

1‐1.相続について

相続とは、被相続人(亡くなった人)の財産(相続財産)を当然に相続人に相続分に従って移転させることをいいます(民法896条)。そして、相続財産の中には、現金や債務のように当然に相続分に従って分割される財産もありますが、株式は、当然に分割されません。

株式は遺言などがない限り相続人で「共有」されることになります。この場合の共有とは、相続人全員で1個の株式を保有する状態をいいます。

したがって、ある特定の相続人に対し株式を取得させようとすれば、遺産分割協議を経て、その被相続人からその相続人に対し名義書換を行う必要があります。そうでなければ、依然として相続人全員の共有の状態が継続することになります。

1‐2.遺言について

上記のとおり、株式を特定の相続人に取得させようとすれば、遺産分割協議を経る必要がありますが、相続が発生した後に被相続人が遺産分割協議に参加・指導することは不可能です。そこで、被相続人の意思にしたがった相続財産の配分を遺言により行うのです。

ただし、遺言は、厳格な要式行為です。この場合の要式行為とは、遺言の書き方について法律で厳格に定め、これに反する遺言には効力を認めないとされる法律行為です。

たとえば、遺言は、基本的には公正証書遺言を除き、自署(手書き)で行います。加えて、署名押印が必要です。

1‐3.自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは自筆証書という書式にしたがって、その全文、日付、氏名を自署し、押印を行った遺言をいいます。これらの要件が一つでも欠けていると遺言の効力が生じません。

そして、特に遺言作成過程に公証人等の関与が必要とされている公正証書遺言と異なり、自筆証書遺言は、これらの要件の充足が欠けている場合が多いのです。相続開始後に、要件が欠けていることが明らかになったときにはすでに手遅れですので、遺言作成時から弁護士等の専門家の関与のもとで要件の確認を慎重に行うことをお勧めします。

【関連】自筆証書遺言についてもっと知りたい→
失敗しない自筆証書遺言の書き方

1‐4.遺留分との関係

遺贈(遺言による贈与)であったとしても、遺留分(民法が相続人に対し保障した被相続財産からの最低限の取り分)を侵害することはできません。したがって遺言する場合であっても遺留分に対する配慮は最大限図るべきです。

たとえば、妻や子といった相続人が複数いる場合に、他の相続人に特別受益があるなどの事情がないにもかかわらず、すべての財産を特定の子などの相続させるなどの遺言をする例が、その子以外の相続人の遺留分を侵害する遺言の例であるといえるのでしょう。

とはいえ、遺留分を侵害しているかなどは複雑な検討が必要となりますので、弁護士等の専門家の関与の下で遺言を行うようにしましょう。

【関連】遺留分についてもっと知りたい→
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2.株式の相続

2-1. 株式の相続

先述した通り、ある特定の相続人に対し株式を取得させようとすれば、遺言がない限り、遺産分割協議を経て、その被相続人からその相続人に対し名義書換を行う必要があります。そうでなければ、依然として相続人全員の共有の状態が継続することになります。

では、上記のような「共有」状態を回避するために、どのような遺言を行っておけばよいでしょうか。以下具体的な例を見てみましょう。

【遺言の例】(自筆証書遺言)

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金の2分の1を、妻田中花子(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、第1条記載の預貯金を除くその他一切の財産を、子田中太郎(昭和○年○月○日生)に相続させる。

第3条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、子田中太郎を指定する。

第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として、子田中太郎を指定する。

第5条 遺言者は、遺言者の所有の株式を遺言者の妻田中花子(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

①ABC株式会社株式  1万株

②XYZ株式会社株式  2万株

平成○○年○○月○○日

住所 東京都新宿区新宿1丁目100番2

遺言者  田中一郎 ㊞

※自筆証書遺言の場合なので、全文、日付、氏名を自署し、押印します。保有する株式の会社名と株数を明記します。

なお、上場株式の評価額は取引残高報告書によって把握することができますが、非上場株式の場合は複雑な計算が必要になるので、弁護士や税理士等の専門家へ相談した方が良いでしょう。

2‐2.保有株式を相続させる方法

2‐2‐1.保有株式の全部を相続人に取得させる方法

【文例】

第○条

遺言者は、以下の株式の全部を長男田中太郎(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

ABC株式会社 普通株式 1万株

預託先 DEF証券会社

なお、相続手続の円滑化のために、預託先の証券会社の記載もあったがよいでしょう。

2‐2‐2.株式の一部を相続人の1人に、残りを他の相続人に取得させる方法

【文例】

第○条

遺言者は、以下の株式の6,000株を長男田中太郎(昭和○○年○○月○○日生)に、その余の株式を次男田中次郎(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる

ABC株式会社 普通株式

預託先 DEF証券会社

2‐3.上場株式の名義書換手続

株式は上場株式と非上場株式がありますが、上場株式とは、証券取引所に上場している会社の株式のことです。上場株式は、証券会社、信託銀行その他銀行などの金融商品取引業者等が管理をしています。

2‐3‐1.「ほふり」

上場株式は、従前は株券を証券会社に保護預かりしたり、現物を株主が保管する方法により保管されていましたが、平成21年1月5日から電子化され、株式保管振替機構(ほふり)により電子化されることになりました

とはいえ、その電子化の際に株主であった被相続人の対応により、以下の株式の保管方法は以下の3通りに区別されます。

2‐3‐2.保管方法による区別

  1. 証券会社に保護預かりにしていた株券についてほふりの預託に同意し、証券会社の口座でそのまま管理されている場合
  2. 証券会社に保護預かりにして、ほふりの預託に同意していなかった場合
  3. 被相続人が株券を保管していた場合

1.の場合については、証券会社に相続手続きを取ることになります。

具体的には

①相続届の提出(遺言書、被相続人の除籍謄本等を添付書類とともに。)→ ②相続手続依頼書への署名押印 → ③相続手続依頼書の提出

となります。

他方、2.および3.の場合には、株式発行会社が指定する金融機関に特別口座が開設され、株主名簿上の名義で記録されることになっております。そうすると、株主名簿上の名義が被相続人名義でない場合には、名義書換をしていない限りは他人の名義で記録されている可能性もあり、株主の権利を喪失するおそれもあります。

したがって、ご自身の所有する株式が上記2.および3.のような保管をされている場合には、自分名義で名義書換がなされているかを確認する必要があります。

いずれの場合でも被相続人の特別口座が開設されている場合には、その金融機関で相続手続を行うことになります。方法としては、特別口座の名義書換を行うか、その証券会社に相続人名義の口座がない場合は、口座を開設して、振替手続を行うことになります。

2-4.非上場株式の場合

非上場株式とは、証券取引所に上場等をしていない株式で、市場で取引されることはほとんどありません。そして、非上場株式の特徴は発行会社の定款で譲渡制限に付されていることです。相続人が株式を相続するには必要ないのですが、例えば、相続人以外の者に遺贈したいときに、名義書換をしようとしても、会社の承認がない場合には、名義書換ができません。そこで、会社に対し、譲渡承認請求をします。

【文例:譲渡承認請求書】

ABC株式会社 御中

株式譲渡承認請求書

平成○○年○○月○○日

住所 東京都新宿区新宿3丁目3番3

株主亡田中花子(遺言者の氏名)遺言執行者 執行三郎 印

貴社の株主である田中花子(遺言者の氏名)は、平成○○年○○月○○日付自筆遺言証書により、下記の者を受遺者と定めて、私を遺言執行者に指定しております。

平成○○年○○月○○日に、遺言者が死亡したことにより、当該遺言の効力が生じたため、受遺者に特定遺贈されました。したがいまして、会社法第136条に基づき貴社の譲渡制限株式について譲渡承認をすることを請求します。

1 株主 田中花子(遺言者の氏名)
住所 東京都新宿区新宿1丁目1番1

2 株式の種類 ABC株式会社普通株式

3 株式数 6,000株

4 譲渡の相手方 受遺五郎(受遺者の氏名)
住所 東京都新宿区新宿2丁目2番2

2-4-1.非上場株式の評価方法

非上場株式の評価方法は、株主の区分や会社の規模・状態によって大きく異なります。

原則的評価方式

評価対象となっている会社の業種に似た上場会社の数値を基準に算定する「類似業種比準方式」、課税時期に会社を清算すると仮定してその場合の株主1人あたりの分配額で評価する「純資産価額方式」、これら2つの方法を一定割合で折衷する「併用方式」のどれかの方法で判断されます。

大雑把にいえば、大きい会社には類似業種比準方式、小さい会社には純資産価額方式、中くらいの会社には併用方式での判断がなされることが多いでしょう。

配当還元方式

配当還元方式とは、その株式を所有することによって受け取る1年間の配当金額を、一定利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。この方法によって算出される株式の評価額を配当還元価額といい、(年配当金額÷10%)×(1株あたり資本金の額÷50円)で計算されることになります。

3.まとめ

以上のとおり、株式を遺言により相続させるにも複雑な法的判断を要することから弁護士等の専門家の関与を強くお勧めします。

また株式にも当然ながら相続税が発生しますが、上場株式と非上場株式は財産の評価基準が違ううえに計算も難しいので、多数の株式がある場合は迷わず専門家に相談することをお勧めします。

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