負担付遺贈とは?法律上のポイントや活用例をわかりやすく解説

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hutantuki izou

「遺言で財産を残してあげたいけど、心配ごともあるから財産をあげる条件として○○○をお願いしたい…。」
そんなときには、「負担付遺贈」を活用しましょう。

負担付遺贈は様々な形で利用することが可能です。
もし自分の死後に心配事があれば、受遺者にその対応をお願いすることができます。

受遺者としても、一定の負担で財産を受け取れるため、双方にとって有益な場合があります。

この記事では、負担付遺贈とは何か、どんな活用方法があるのか、法律上の問題や注意点についてわかりやすく解説します。

負担付遺贈とは?

負担付遺贈とは、遺贈者(遺言で財産を贈与する人)が受遺者(その財産を受け取る人)に対して財産を贈与する見返りに、受遺者に一定の義務を負担してもらう遺贈のことをいいます。

一般的な遺贈については、下記の記事を参照してください。

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負担付遺贈は、受遺者が一定の義務を負担するという点に特徴があります。
しかし、遺贈は遺贈者の一方的な意思表示により行われますので、受遺者は自分の意思によらずに義務を負担することになってしまいます。

そのため、民法は負担付遺贈の受遺者を保護するための一定のルールを定めています。
その詳しい内容は「3.負担付遺贈の受遺者を保護するための制度」で解説します。

なお、負担付遺贈と似た概念として「負担付死因贈与」というものもあります。
負担付死因贈与が贈与者と受贈者の間の契約により行われるのに対して、負担付遺贈は遺贈者の遺言により行われるという違いがあります。

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2.負担付遺贈の活用方法の具体例

負担付遺贈の活用例、どんな場合に使われるのかを具体的に見ていきましょう。

2-1.配偶者の生活費を支払うという条件付きで遺贈する

夫婦で老後を送っており、自分が死んでしまうと残された配偶者が収入不足で生活に困ってしまうということが心配になる場合は多いでしょう。

この場合、たとえば残された配偶者の生活費の面倒を見てもらうことを条件として負担付遺贈を行うことが考えられます。
受遺者は、子供や生活に余裕のある親族などを指定することが多いです。

2-2.ペットの世話をすることを条件として遺贈する

ペットと一緒に一人暮らしの老後を送っており、自分が死んでしまうとペットの面倒をみる人がいなくなってしまう場合、遺言で誰かにペットの世話をお願いすることができれば安心でしょう。

しかし、単に遺言書に「○○にペットの世話をお願いする」と記載したとしても、権利や義務の承継に関する事項ではないので法律的な効力はありません。

そこで、ペットの世話をすることを条件として財産を贈与するという負担付遺贈の形式にすることによって、有効な遺言とすることができます。

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このように、本来は遺言事項ではなく法律的効力を持たない内容について、負担付遺贈の形を取ることで、一定の効力をもたせることが可能になります。
とはいえ、受遺者は遺贈を放棄することができますので、それほど絶対的なものではありません。

2-3.残りの住宅ローン支払いを条件として自宅の土地と建物を遺贈する

住宅ローンを組む際に団体信用生命保険に加入していれば、債務者が死亡した際には住宅ローンは一括で保険から支払われることになります。
しかし、団体信用生命保険に加入していない場合には、債務者の死後も住宅ローンが残ってしまいます。

自宅の土地や建物には住宅ローンを担保する抵当権が設定されています。
したがって、自宅の土地や建物を残していくためには、死後も誰かに住宅ローンを払い続けてもらわなければなりません

その場合に、住宅ローンを支払うことを条件として自宅の土地と建物を贈与するという負担付遺贈が行われることがあります。

遺言で指定する場合との違い

住宅ローン債務を相続人に引き継がせることは、遺言でも負担付遺贈でも可能です。

それでは、単に「○○に自宅の土地および建物、ならびに住宅ローン債務を相続させる」という内容の遺言を残す場合と、負担付遺贈とでは何が違うのでしょうか。

たしかにどちらの場合も自宅の土地と建物、さらに住宅ローン債務を承継するという点に差はありません。

しかし、単に相続させるという内容の遺言の場合とは異なり、負担付遺贈の場合には「負担付遺贈に係る遺言の取消し」(民法1027条)という制度が認められています。

この制度は後で解説しますが、住宅ローンが支払われなくなった場合、他の相続人が受遺者に対して支払いの催告を行うことができます。
そして、催告で定めた期間内に住宅ローンの支払いがされない場合には、家庭裁判所に対して遺言の取消しを請求することができます。

この制度により、他の相続人が自宅の土地および建物、ならびに住宅ローン債務を引き継ぐ可能性を残すことができる点に、負担付遺贈を利用するメリットがあるといえます。

2-4.孫に毎月一定の金額を仕送りすることを条件として財産を遺贈する

孫をたいへん可愛がっている方であれば、孫にも財産を残してあげたいと思うかもしれません。
しかし、孫はまだ幼いので財産を管理してくれる人がほしいという場合もあるでしょう。

このような場合の手段の一つとして、負担付遺贈を活用する方法があります。

たとえば、孫に毎月一定の金額を仕送りすることを条件として財産を遺贈することを遺言で定めておけば、受遺者は実質的に孫の財産の管理者としての役割を果たすことになります。

3.負担付遺贈の受遺者を保護するための制度

最初にご説明したように、負担付遺贈が行われた場合、遺贈者が一方的に受遺者に義務を課すことになります。
そのため、民法では負担付遺贈の受遺者を保護するための制度がいくつか定められています。

3-1.負担付遺贈の負担には上限がある

受遺者の負担する義務が受け取る財産を上回ってしまう場合、それでも義務を果たすことを要求するのは受遺者にとって酷でしょう。

そのため、負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度でのみ、負担した義務を履行する責任を負うものとされています(民法1002条1項)。

なお、受遺者自身が相続の限定承認をしたり、他の相続人から遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)を受けたりした場合には、負担付遺贈の目的の価額が減少する場合があります。
この場合には、受遺者は、その減少の割合に応じて、負担付遺贈により負担した義務を免れるものとされています(民法1003条)。

3-2.負担付遺贈は放棄することが可能

負担付遺贈は、通常の遺贈と同様に、遺贈者の死後いつでも放棄することが可能です(民法986条)。

たとえば以下のような場合には、受遺者は負担付遺贈を放棄することにより、義務を免れることができます。

  • 負担の内容が重い場合
  • 負担付遺贈の目的となっている財産がいらない場合
  • 負担付遺贈の目的となっている財産の維持管理が大変な場合

3-3.放棄された遺贈の財産は?

受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者は、自ら受遺者となることができるものとされています(民法1002条2項本文)。

たとえば、「配偶者の生活費を支払うことを条件として財産を遺贈する」という負担付遺贈を受遺者が放棄したとしましょう。
この場合、放棄された財産は配偶者が代わりに受遺者となって受け取ることができます

ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従うものとされています(同条2項ただし書)。

たとえば上記の例に、追加で「受遺者が負担付遺贈を放棄した場合には、代わりに次男Aに同様の条件の下で財産を遺贈する」という内容の遺言があったとします。
その場合は、次男Aが配偶者の生活費を支払うことを条件として、受遺者として財産を受け取ることになります。

3-4.負担付遺贈の負担が実現されるとは限らない

負担付遺贈の放棄が可能ということは、遺贈者が遺言として残した意思が必ずしも実現されるとは限らないということを意味します。

義務の内容が

「残された配偶者のために生活費を払ってもらう」
「孫に毎月仕送りをしてもらう」

などの場合には、上記のように負担の受益者が代わりに受遺者となることである程度の代替手段になります。

しかし、義務の内容が「ペットの世話をしてもらう」などの場合には、負担の受益者が存在しません(ペットは受益「者」ではありません)。
したがって、負担付遺贈を引き継ぐ人がいなくなってしまい、遺贈者の意思は実現されないことになります。

このような場合に備えて、遺言の中で負担付遺贈が放棄された場合についての取扱いを何段階かに分けて定めておくことが有効でしょう。

4.負担付遺贈の受遺者が負担を履行しない場合

負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めて履行の催告をすることができます。

そして、定められた期間内に義務が履行されない場合には、相続人は家庭裁判所に対して、負担付遺贈に係る遺言の取消しを請求することができます(民法1027条)。

負担付遺贈に係る遺言が取り消された場合、負担付遺贈の目的物である財産についての遺言はなかったことになります。
したがって、遺贈対象の財産は相続人全体に帰属し、改めて遺産分割の対象となります。

5.まとめ

以上に解説したように、負担付遺贈は様々な場面で活用可能です。
その一方で、民法に規定されるルールが適用された場合の結論などを踏まえて、できる限り遺贈者の生前の意思が実現されるように遺言作成段階から準備しておく必要があります。

負担付遺贈を行うことを検討している場合には、弁護士に相談してどのようなポイントに注意すれば良いかのアドバイスをもらうことがおすすめです。
まずは気軽に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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