死亡後、銀行口座が凍結されたら?故人の貯金・預金引き出しの手続き
被相続人の死亡で銀行口座が凍結されると、葬儀費用などで資金が必要なとき困ってしまいます。この記事では、法改正で可能に…[続きを読む]
遺産分割協議書は、主に相続手続きに必要になります。
そこで、本記事では、相続手続きにおける遺産分割協議書の提出先や期限、コピーによる提出の可否などについて解説します。
目次
相続手続きでの遺産分割協議書の提出先は、主に以下の5箇所となります。
相続手続き名 | 提出先 | |
---|---|---|
相続登記 | 不動産所在地を管轄する法務局 | |
相続税申告 | 被相続人の最後の住所地を管轄する法務局 | |
銀行口座の相続手続き | 被相続人が口座を開いていた金融機関 | |
株式の相続手続き | 上場株式 | 被相続人が取引していた証券会社 |
非上場株式 | 株式の発行会社 | |
自動車の相続手続き | 普通自動車 | 車の使用の本拠地を管轄する運輸支局 |
軽自動車 | 遺産分割協議書の提出は不要 |
続いて、各相続手続の期限や管轄などを細かく解説していきます。
相続登記は、被相続人から相続によって不動産を取得した相続人への名義変更を行う手続きです。
被相続人の遺言書がない限り、原則として遺産分割協議書の提出が求められます。
現在相続登記には、期限がありません。しかし、2024年4月1日から、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権の取得をしたことを知った日から3年以内」に行うことが義務化されます。
期限内に登記がない場合には、10万円以下の過料の対象となります。
現在相続登記のない不動産にも適用されるので、まだ未登記の方は、期限までに行うようにしましょう。
不動産登記は法務局で行い、管轄は、相続した不動産所在を管轄する法務局となります。
相続税は、原則として基礎控除を超える場合に、相続人や受遺者に課税される税金です。
相続登記と同様に、基本的に被相続人の遺言書がなければ、遺産分割協議書の提出が求められます。
相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内(相続税法27条1項)に行う必要があります。
申告と同時に、納付もしなければなりません。
申告が必要なケースで期限内に申告がなければ、無申告加算税や延滞税、悪質なケースでは重加算税といったペナルティとしての税金が課されることになります。
相続税申告の管轄は、被相続人が亡くなる間際に住んでいた住所地を管轄する税務署となります。
被相続人が亡くなると、口座が凍結されてしまいます。凍結を解除するためには、一旦口座を解約して、各相続人の口座へ相続分に従った金額を移転させる必要があります。
この口座の相続手続きには、各銀行指定の用紙があり、相続人全員の署名・実印の押印あがれば、遺産分割協議書の提出は不要です。
しかし、被相続人が複数の銀行に口座を有しているとこの作業が煩わしいため、遺産分割協議書を用意するほうがいいでしょう。
銀行口座の相続手続きの請求先は、被相続人が有していた口座の銀行となります。
口座の相続手続きは各銀行により違いがあるため、被相続人の口座がある銀行にお問い合わせください。
被相続人が有する銀行への権利は、預貯金債権であるため、本来は、権利行使できることを知った時から5年または権利行使できる時から10年(民法166条1項1号・2号)で時効にかかり消滅します。
ただし現状ではほとんどの場合は、預金の存在が確認できる限り相続手続きは可能となっています。
株式も相続財産であり、遺産分割の対象となるため、遺産分割協議書への記載も必要になります。
被相続人が有していた上場株式は、被相続人が取引していた証券会社で相続手続きを行います。
上場株式の場合には、証券会社所定の用紙を入手し、相続人全員が署名・実印の押印をすると、銀行口座の相続手続きと同様に、遺産分割協議書を提出せずとも相続手続きは可能です。
一方、非上場株式の場合の相続手続きは、直接株式を発行している会社の株式名簿を株式を相続した者の名義に書き換えてもらうことによって行います。
非上場株式の相続手続きは発行会社によって異なりますが、遺産分割協議書は概ね必要となるでしょう。
株式の相続手続きに明確な期限は定められていません。
しかし、株式は、相続手続きをしないまま放置すると、次のような不利益が発生することになります。
まず、株式総会招集通知などの会社からの連絡が届きません。株主としての議決権が行使できないことになります。
さらに5年間放置すると、「株主所在不明」として会社への買取や競売による売却がなされる可能性があります。しかし、会社からの連絡が届かないため、買取や売却による売却益を請求することができません。
その後、さらに5年または10年経過すると、売却代金自体を受け取る権利が消滅時効によりなくなってしまいます。
株式の相続手続きも、早めに行うことをお勧めします。
被相続人の自動車にも、被相続人から自動車を取得した相続人への名義変更が必要となります。
遺産分割協議書が相続手続きに必要になるのは、被相続人の普通自動車の査定額が100万円を超える場合になります。
査定額が100万円以下の普通自動車では、遺産分割協議書または遺産分割協議成立申立書が必要となり、軽自動車では、いずれも不要です。
自動車の名義変更手続きを怠っても、今のところ罰則はありません。
しかし、廃車・売却ができない・車検をすることができないなどの不利益が発生します。
以上に挙げた提出先に遺産分割協議書を出す場合には、原本が原則であり、コピーは認められていません。
通常、遺産分割協議書は、相続人1人につき1通を作成しますが、相続手続きが多い場合には、余分を作成しておくか、提出先に還付請求するといいでしょう。
還付請求とは、相続手続きに添付した書類を返してもらう制度で、請求すると、提出先で遺産分割協議書をコピーして返却してもらうことができます。
事前に調べておくといいでしょう。
遺産分割協議書の提出が不要になるのは、以下のケースです。
ただし、遺産分割協議書は、遺産分割協議に相続人全員が合意したことの証明となります。
遺産分割協議後のトラブル予防のためにも、協議を行った際には、遺産分割協議書を作成しておくことをお勧めします。
遺産分割協議書の作成だけを依頼するなら、行政書士に頼むと、比較的安価で作成してもらうことができます。
一方で、遺産に不動産が含まれる場合には、司法書士に、遺産分割協議が紛糾する場合には、弁護士に依頼すると、費用はかかりますが、それぞれ相続登記や紛争の解決とともに遺産分割協議書の作成をお願いすることができます。