遺産分割審判とは|審判の流れと有利に進めるポイント
当事者の話し合いでは決着がつかなければ、遺産分割審判により解決を図ります。遺産分割審判とは、どのようなものでどのよう…[続きを読む]
遺産調停は、家庭裁判所で遺産の分割方法について当事者が話し合い、合意に至れば成立します。調停が成立すれば、その結果に従って、遺産を分割することになります。
しかし、遺産分割調停が成立しないこともあります。
そこで、本記事では、遺産分割調停が不成立になる理由や、遺産分割調停後の審判、審判の注意点などについて解説します。
目次
最初に、遺産分割調停が不成立になる理由について考えてみましょう。
遺産分割調停は、あくまで当事者の話し合いが合意に至らない限り成立することはありません。
したがって、調停委員会が中立公正な立場で当事者それぞれから主張を聞いて調整に努め、具体的な調停案を提示するなどしても合意に至らなければ、成立する見込みがないと判断されて調停は不成立となります(家事事件手続法272条1項)。
また、合意が成立しても、相当でないと判断された場合には、調停は不成立とされることもあります(同法同条同項)。
前述した通り、遺産分割調停の成立には、当事者の合意を得ることが必要です。しかし、調停に出頭しない相続人や包括受遺者、相続分の譲受人といった当事者がいると、合意を得ることができません。
したがって、調停は不成立となってしまいます。
相続人や遺産の範囲、遺言書の有効性といった点を争う当事者がいる場合には、裁判所が調停の申立てを取り下げるように勧告をすることがあります。
こうした点は審判となっても、個人の権利の存否の問題となり、最終的な判断を下せないためです。
これらは、調停・審判の前提となる問題であり、訴訟により解決を図るべきものと考えられるからです。
遺産分割調停が不成立になると下図の通り、遺産分割審判へと移行します。
遺産分割調停が不成立になると、遺産分割調停の申し立て時に遺産分割審判の申し立てがあったものとみなされ自動的に審判へと移行します(家事事件手続法272条4項)。
遺産分割審判は、裁判所の判断により調停を行った家庭裁判所でそのまま行われるか、相続開始地を管轄する家庭裁判所に移送されることになります。
遺産分割調停が不成立になった場合には、審判期日が後日改めて指定されます。
遺産分割調停から審判への移行の際には、追加の証拠書類等の提出が必要なことがあります。
遺産分割審判は職権探知主義を採っているため、裁判所は期日に当事者の陳述を聞き、必要に応じて調査官による調査を行うことで心証を固めます。
審判では期日が1ヶ月に1回程度開かれ、審判が下されるまでに長ければ2~3年かかることもあります。
当事者の主張立証が尽くされ、家庭裁判所の心証が固まると、審判期日が開かれて遺産をどのように分割するか裁判所が審判を下します。審判は、審判書を交付することで行われます。
次に、遺産分割審判での注意点を2つ挙げておきましょう。
遺産分割審判では、家庭裁判所が、客観的に公平な立場から遺産分割について判断し、審判を下します。そのため、相続人の公平を図るために、法定相続分を踏まえた遺産分割が結論とならざるを得ません。
遺産の大半を不動産が占めていると、売却して換価分割を命じられることもあります。
遺産分割審判に移行させないためには、遺産分割調停で、ある程度の譲歩は必要になるのです。
遺産分割審判への不服申し立ては、審判を行った家庭裁判所に「抗告状」を提出して行う即時抗告のみが認められています。
審判書を受領した日の翌日から2週間以内に行わなければなりません(家事事件手続法86条1)。
抗告手続きは、弁護士が代理人になることを想定された制度になっており、ご自分で行うのは難しい手続きです。
遺産分割調停では、弁護士に依頼しなくても相続人自身が対応することも可能です。
しかし、司法統計によれば、2021年に成立・認容となった85%近くの遺産分割調停において、弁護士の関与があります(※)。そのため、高い確率で相手方が弁護士を付けてくるでしょう。
遺産分割調停は話し合いの場ではありますが、家庭裁判所で開かれるため、法律的な主張が優先されます。
調停だからといって弁護士を付けずに臨むと、形勢が不利になりかねません。
※ 「第53表 遺産分割事件のうち認容・調停成立件数―審理期間別代理 人弁護士の関与の有無及び遺産の価額別―全家庭裁判所」|裁判所
遺産分割審判では、訴訟に類似した手続きです。法律の素人が対処することは難しいと言わざるを得ません。
遺産分割調停や遺産分割審判を依頼すべき弁護士を一言で言えば、「相続に強い弁護士」です。
詳しくは、「遺産相続に強い弁護士とは?9つの選び方のポイント」に譲りますが、以下9つのポイントから相続に強い弁護士を選びます。
法律問題はすそ野が広く、弁護士の業務範囲は広大で、相続問題はその一部にすぎません。重要なポイントは、その中で相続に強い弁護士に依頼できるかどうかです。
ここまで、遺産分割調停が不成立になる理由や遺産分割調停が不成立となった後の遺産分割審判などについて解説してきました。
遺産分割調停・審判いずれにも、弁護士の関与が重要な役割を担います。遺産分割調停や審判には、相続に強い弁護士に依頼することを、強くお勧めします。