遺産分割協議書には署名すべき?それとも記名でいい?

遺産分割協議書の書き方は、法律に決まりがあるわけではありません。

そのため遺産分割協議書によって、被相続人や相続人、相続財産が特定でき、遺産分割内容について相続人全員が合意したことが客観的に分かれば、基本的にはどのように記載しても無効になることはありません。

そこで相続人全員が遺産分割協議に合意したことを証明するために、署名捺印すべきなのか、記名押印するだけでいいのかが問題となります。

ここでは、遺産分割協議には相続人が自分の名前を署名するほうがいいのか、記名でいいのかについて解説します。

1.署名捺印と記名押印とはどう違う?

署名捺印は、自分の名前を自署して印鑑を押します。記名押印は、ゴム印や印刷によって名前が記された横に印鑑を押印します。パソコンで遺産分割協議書を作成し、相続人の氏名を印字した場合も記名となります。

前述した通り、遺産分割協議書には法律上決まった様式はありません。したがって、遺産分割協議書に記名押印しても、署名捺印しても効力には変わりありません。署名捺印した遺産分割協議書を添付しても、記名押印した遺産分割協議書を添付しても、相続登記の申請や相続税申告で受領を拒否されることはないでしょう。

しかし結論から言えば、遺産分割協議には、相続人全員が名前を自署し、実印で捺印をすることをお勧めします。

2.遺産分割協議書には署名捺印すべき理由

ではなぜ、遺産分割協議書には署名捺印したほうがいいのでしょうか?

2-1.署名捺印で紛争防止の効果がアップ

遺産分割協議書に相続人全員が署名することで、本人が遺産分割協議に合意したことを客観的に証明することができ、紛争防止の効果がアップします。

万一、遺産分割を蒸し返したい相続人によって審判になったとしても、遺産分割協議書に署名があれば、重要な証拠になるでしょう。

2-2.遺産分割協議書に実印を押す理由

実印は、通常第三者が持ち出すことはできないと考えられます。

したがって、署名の横に実印が押されていると、遺産分割協議に本人が合意したことを二重に証明することができます。

また、相続税申告や相続登記を行う場合には、遺産分割協議書を提出する際に、印鑑証明書を一緒に添付しなければならないという実務上の要請もあります。

3.遺産分割協議の署名についてのよくある質問(FAQ)

相続人が自分で遺産分割協議書に署名できない場合はどうする?

原則として遺産分割協議の署名を代筆することは認められません。

ご高齢や、怪我・病気などの理由から相続人に署名が難しい場合であっても、基本的にはご自分で自署すべきです。

しかし、文字を書くのが不可能な相続人の代わりに、遺産分割協議書に代筆をしたとしても、遺産分割協議書が直ちに無効になることはありません。

もし代筆が必要だと思われる場合には、弁護士など専門家に相談するといいでしょう。

一方で、認知症などで判断能力のない相続人や、未成年の相続人が遺産分割協議はそもそも遺産分割協議に参加することができません。

こうしたケースでは、成年後見人や親権者が代理して遺産分割協議に参加する必要があり、成年後見人や親権者が同時に相続人となる場合には、特別代理人が代わりに遺産分割協議に参加する必要があります。代筆だけでは済みません。

遺産分割協議書に署名すると遺産分割協議はやり直せない?

相続人全員が参加した遺産分割協議がまとまって、一度遺産分割協議書に署名してしまうと、再度相続人全員がやり直しに合意しない限り、遺産分割協議を覆すことは非常に難しくなります。

また、相続人全員が遺産分割協議のやり直しに合意できたとしても、いくつかの注意点があります。

詳しくは、「遺産分割協議のやり直しはできる?やり直しに時効はあるの?」をご一読ください。

まとめ

ここまでご説明した通り、遺産分割協議書には署名し、実印を捺印することをお勧めします。

銀行口座の相続手続きでも、遺産分割協議書に相続人の署名を求められることがあるため、最初から署名捺印したほうが実務上も得策です。

弁護士に依頼すれば、遺産分割協議のとりまとめから、遺産分割協議書作成の代行まで行ってもらうことができます。遺産分割協議についてお困りの方は、一度相談してみてはいかがでしょうか。

相続に強い弁護士が問題を解決します

相続に関し、下記のようなお悩みを抱えている方は、相続に強い弁護士にご相談ください。

  1. 遺産の分割方法で揉めている
  2. 遺言の内容や、遺産分割協議の結果に納得がいかない
  3. 不動産をどう分けるか、折り合いがつかない
  4. 遺留分を侵害されている
  5. 相続関連の色々な手続きが上手くいかず、困っている

相続発生前後を問わず、相続に関連する問題に対して、弁護士があなたの味方になります。 まずは気軽に相談されることをオススメいたします。

この記事が役に立ったらシェアしてください!
監修
弁護士相談Cafe編集部
弁護士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続に関する記事を250以上作成(2022年1月時点)。
プロフィール この監修者の記事一覧