遺産分割調停とは?|流れや有利に進めるポイントを分かりやすく解説
被相続人の遺言書がなければ、遺産を分割するために遺産分割協議を行うことになります。しかし、遺産の分割は、相続の中でも…[続きを読む]
稀に遺産分割協議書が偽造されることがあります。
ここでは、遺産分割協議書が偽造されると、遺産分割協議書はどのように扱われるのか、偽造した相続人にはどのような責任を問えるのか、偽造された場合の対処法などについて解説します。
目次
偽造された遺産分割協議書はどのような扱いになるのでしょうか?
偽造された遺産分割協議書は、もちろん無効として扱われます。悪気なく遠方の相続人に代わって勝手に遺産分割協議書に署名したり、押印したりしても、本人の同意がなければ遺産分割協議書が無効になってしまいます。
では、遺産分割協議書を偽造するとどのような責任を問えるのでしょうか?
例えば、偽造した遺産分割協議書で相続登記がなされたり、被相続人の銀行口座の残高を引き出して自分の口座に入金したりした場合には、原状回復にかかった費用の他に、発生した損害について請求することができます。
遺産分割協議書を偽造すると、民事上の責任の他に、刑事上の責任を問える可能性もあります。
本物だと誤信させる目的で遺産分割協議書を偽造すれば、刑法上の「私文書偽造罪」に該当します(刑法159条)。偽造に誤信させる目的があれば、実際に誤信させたか否かは問いません。
刑が確定すれば、3ヶ月以上5年以下の懲役に処せられます。
偽造した相続人だけでなく、偽造された遺産分割協議書だと知りながら使用した者も、偽造文書行使罪に該当し、有罪が確定すると3ヶ月以上5年以下の懲役となります(刑法161条)。
偽造した遺産分割協議書を添付して相続登記をすると、公正証書原本不実記載罪に該当する可能性があり、刑が確定すると5年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(刑法157条)。
偽造した遺産分割協議書で被相続人の銀行口座を解約し預金を引き出すと、詐欺罪が成立する可能性もあり、有罪が確定すると10年以下の懲役になります(刑法246条)。
遺産分割協議書の偽造が確実である場合には、以下の対応を取ることが可能です。
まず、遺産分割協議書を偽造した相続人が交渉に応じる場合には、再度遺産分割協議書を行うことができます。
また、遺産分割協議書が偽造されたことを理由に、遺産分割調停を申し立て、遺産分割調停の場で話し合うこともできます。
しかし、偽造を認めていない相続人が偽造した遺産分割協議を基に、遺産分割協議は合意の基に終了したと裁判所に主張すると、裁判所から調停の申立ての取り下げを促されてしまう可能性は高くなります。
遺産分割協議書が偽造されていた場合には、遺産分割不存在確認訴訟を提起することもできます。ただし、調停前置主義により遺産分割不存在調停を経なければなりません。
また、遺産分割の不存在が裁判所によって確認された後には、改めて遺産分割を行わなければなりません。そのため、訴訟の中で和解が図られることもあります。
証書真否確認請求訴訟は、遺産分割協議書など事実を証する書面が、作成者によって真正に作成されたか否かを裁判所の判決を通して確定してもらう裁判です。
偽造した相続人が遺産分割協議書を本物と主張している場合には、この裁判によってその主張を覆す必要があります。
偽造された遺産分割協議を使って権利を侵害された相続人は、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟や、不当利得返還請求訴訟により、現状回復の他に、損害賠償の請求が可能です。
遺産分割協議書の偽造が発覚すると、上記4つの対応をすることができます。しかし、いずれの対応も、専門家抜きに行うことは難しいでしょう。また、どのような対応をするのがベストかは、個別に検討しなければなりません。
遺産分割協議書の偽造が疑われる場合には、早急に弁護士に相談することをお勧めします。
遺産分割協議書には、通常相続人が署名の他、実印を押すことになります。また、相続登記などの相続手続きには、印鑑証明書の添付が必要になることが多くなります。
したがって、実印や印鑑証明書の管理をご自分でしっかり行うことが重要となります。
また、遺産分割協議書の内容が書き換えられた場合に備えて、遺産分割協議の経緯を示したメールや書類をしっかりと保管することも必要です。
該当すると相続権を失ってしまう「相続欠格事由」は以下の5つです。
残念ながら遺産分割協議書の偽造は、相続欠格事由に入っていません。したがって、遺産分割協議書を偽造したからといって相続権を失うわけではありません。
遺産分割協議書を偽造された場合に取れる裁判所における対処法には、次のものがあります。
これらの対処法を進めるためにも、どの対処法を選択すべきかを決めるためにも弁護士への相談は欠かせないでしょう。
ここまでご紹介した通り、遺産分割協議書を偽造された相続人が、偽造した相続人に対処する際には、複数の裁判所の手続きが存在し、相続人だけで対応することは難しいでしょう。
遺産分割協議書を偽造された場合には、お早めに弁護士に相談することをお勧めします。