相続放棄照会書と回答書の書き方のサンプル
被相続人の借金を引き継ぎたくないときは、相続放棄をします。 相続放棄の手続きでは、家庭裁判所に相続放棄の申述をした後…[続きを読む]
相続放棄は、相続人本人が手続きを行えば費用を節約することはできます。しかし、その分手間は増えてしまい、失敗する可能性も高くなります。
確実に相続放棄をするには、司法書士または弁護士、どちらかの専門家に相談することになります。
では、司法書士と弁護士の、どちらを選べばいいのでしょうか?
結論からいえば、費用を抑えたいのなら司法書士に、全部まるごとお任せしたいのなら弁護士に相談するのがおすすめです。
本記事では、司法書士に依頼する場合と弁護士に依頼する場合を比較しながら、弁護士に依頼するメリットと、その手続きや費用について解説します。
目次
相続放棄は、自分でできない手続きではありません。それでも、多くの方が、相続放棄を専門家に依頼する理由を以下に挙げてみましょう。
相続放棄を選択するのは、「大きな借金がある」「不要な土地があり、相続してしまうと無視できない出費がかかってしまう」など、そのまま相続すると大きな不利益を被るケースです。
しかし、万が一相続放棄の申述書や相続放棄照会書・回答書等に不用意な記載や不適切な記載をすると、家庭裁判所に相続放棄の申述を認めてもらえない可能性があり、正確に作成することが求められます。
知識が曖昧なまま自力で相続放棄をすると、「これで大丈夫だろうか」と不安を抱えたまま手続きをすることになってしまいます。相続人が相続放棄を自己判断するにはリスクが伴い、手続きをする際にも正確性が求められ、熟慮期間内に必要書類を収集する手間もかかります。
他方、専門家に任せれば、相続放棄をすべきかどうかを客観的に判断し、相続放棄が確実に認められるよう着実に手続きを進めてくれるので安心です。
相続放棄の申述をするには、管轄の家庭裁判所を調べて相続放棄申述書を作成し、必要書類を集めて申述書の提出を行い、その後相続放棄回答書に必要事項を記入して返送する、という一連の手続きが必要です。
このような書類の作成や収集、提出などの手続きは非常に面倒です。忙しい日々を送られている相続人にとっては、大きな負担になるでしょう。
専門家であれば、面倒な作業をすべて代行してくれるので、依頼者の負担が軽減されます。
相続放棄は、「被相続人が亡くなったことと、自分が相続人であること」を知ってから3ヶ月以内という「熟慮期間」内に申述しなければなりません(民法915条1項)。
この熟慮期間というタイムリミットは意外に短く、準備や調査が間に合わないというケースは珍しくありません。しかし、法律上も、この熟慮期間の伸長は認められており(民法915条1項但書)、次の通り、やむを得ない事情があれば、3ヶ月を過ぎても相続放棄が認められるべきであること判示する判例も存在します(最高裁昭和59年4月27日判決)。
判例では、熟慮期間内に相続放棄等をしなかったのが、相続財産が全くないと信じたためであり、かつ、様々な事情からみて相続財産の調査も期待できず、相続財産が全くないと信じる相当な理由があるときは、熟慮期間の起算点が変わるとされています。
このような場合には、「相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算」するとしています。
相続に強い専門家に依頼すれば、「上申書(事情説明書)」と呼ばれる書類を作成することで、相続人側の「やむを得ない事情」を家庭裁判所に説明してくれます。
もちろん、ご自分で申請しても期限の伸長が認められないわけではなく、専門家に依頼しても熟慮期間を過ぎた相続放棄がすべての事案で認められるわけではありません。
しかし、相続に強い専門家に依頼すれば、熟慮期間を過ぎた相続放棄も認めてもらえる可能性は高くなり、「上申書(事情説明書)」の書き方を工夫するなどご自分では難しいところまでしっかりフォローしてくれるので、不安が解消されるでしょう。
相続放棄の手続きは、ご自分で行うよりも、専門家に相談・依頼するほうがおすすめである理由がお分かりいただけたでしょうか。
続いて、弁護士と司法書士どっちに相談・依頼すべきか比較してみましょう。
相続放棄の申述を依頼できる専門家として、弁護士と司法書士が考えられますが、どちらが相談窓口としてふさわしいのでしょうか。
本記事では、以下の事情から、弁護士に相談することを推奨します。
司法書士は、書類作成を代理する権限のみを有します(認定司法書士を除く)。一方で、弁護士は、訴訟を代理する権限を含む「完全な代理権」を持っており、依頼者を代理できる範囲が司法書士と比べて広いのです。
相続放棄を弁護士に依頼した場合と、司法書士に依頼した場合の具体的な違いは以下の通りです。
前述した通り、司法書士に依頼できるのは、書類作成の代行のみになります。したがって、書類にはすべて依頼者本人の署名押印が必要となり、申述手続きは本人が申立てたことになります。
当然、相続放棄照会書や回答書の送付先も依頼者(申述人)の自宅になり、これら書類の作成名義人は依頼者本人となり、司法書士が依頼者の代わりに回答などをすることはできません。
他方、弁護士には完全な代理権があるので、弁護士名で申述ができるため、依頼者を代理して弁護士が申立てたことになります。
そのため、相続放棄照会書や回答書などの書類は弁護士事務所に送付されることになり、弁護士が依頼者を代理して回答するため、依頼者が対応する必要はありません。
このように、司法書士に代行を依頼しても、ある程度ご自分の手を煩わせる必要がありますが、弁護士は、依頼者を代理して手続きを進めることが可能です。
専門家に依頼することでご自身の労力を省くためには、弁護士に相談し、基本的には一任してしまうことがおすすめです。
弁護士に相続放棄を依頼すると、高額な費用がかかるのではないかと不安になる方も多いかと思います。
料金については、以前は弁護士のほうが少し高めの相場でしたが、実最近では差が縮まっています。
相続放棄の一般的な費用相場は、弁護士のほうが司法書士より依頼者に対する代理権の幅が広いため、司法書士は、「2万円~5万円前後」程度、弁護士は、「5万円~10万円」程度と弁護士のほうが、高めに設定されている印象です。
ただし、費用の設定方法は、司法書士も弁護士も事務所によって異なります。
完全に書類の代行だけを低額で行い、戸籍の収集等を別料金で行うところもあれば、相続放棄をする依頼人の数に応じて料金が変わるところ、すべて一括でサポートするところもあり、料金の決め方は事務所によって様々です。
費用はその事務所でサポートする内容と比較しながら考えたほうがいいでしょう。価格だけ比較して安い事務所を選んだら失敗した、ということだけにはならないようにすべきです。
なお、当サイトでご紹介している全国の法律事務所には、「初回無料相談可能」「初回30分は相談無料」など、法律相談について特典を設けている事務所も数多くあります。
まずはご相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。
なお、相続に強い弁護士の選び方については、次の記事を参考にしてみてください。
相続放棄をするか悩んでいるとしても、既に相続放棄を決めているとしても、相続には相続放棄以外にも、すべての相続財産を把握できているのかといった問題や、他の相続人との関係といった問題など様々な問題がつきまといます。
こうした相続や相続放棄に関する様々な問題を相談するには弁護士がおすすめです。相談するうちに他の選択肢が見えてくることや、思わぬリスクに気づくことも少なくありません。
最後に、弁護士と司法書士に相続放棄を依頼した場合の違いについてまとめておきます。
本記事では、相続放棄の申述手続きを弁護士に依頼すべき理由について解説しました。
相続放棄は自力で行うこともできますが、手続きを確実に、手間なく進めるためには、専門家、特に弁護士に依頼することがおすすめです。
相続放棄をしたい方は、ぜひ一度、お近くの相続放棄に強い弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。