代襲相続とは?範囲や発生原因、法定相続分を分かりやすく解説!
相続が開始して、本来相続するはずの相続人が先に亡くなっていると、孫や甥姪が相続人になる「代襲相続」が発生することがあ…[続きを読む]
子供がおらず、ご自分の兄弟姉妹の子どもをかわいがっていると、甥・姪に自分の財産を遺したいというご希望もあるでしょう。
このような場合は、どのようにして甥・姪に対し財産を残せばよいのでしょうか。遺言書の書き方も含めて解説します。
目次
ここでは、まず甥・姪が相続人となるのはどんな場合なのか、甥・姪の法定相続分はどれくらいなのかについて解説します。
甥・姪が相続人となる場合とは以下の場合です。
被相続人に、相続開始時点で、相続人となる子供又は、その代襲者(被相続人からすると孫のことです)が存在せず、直系尊属(被相続人からすると父母のことです。)も存命でない場合で、被相続人の兄弟姉妹のうち、既に亡くなっている者がいるときに、その亡くなっている兄弟姉妹の子(被相続人の甥や姪)は代襲相続人として法定相続人となります。
なお、甥・姪の子は、甥・姪が死亡していても再代襲しません。
甥・姪が相続すると、法定相続分はどのような割合になるのでしょうか。
民法は、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合に、 配偶者の相続分を3/4 被相続人の兄弟姉妹の相続分を1/4としています。
兄弟姉妹は、この1/4を頭割りすることになります。さらに代襲相続人となる甥・姪が複数いる場合には、さらに親の相続分を代襲相続人の数で頭割りすることになります。
例えば、被相続をその配偶者と被相続人の兄・妹・既に亡くなった弟の子2人計4人で相続すると、兄弟妹の相続分は、1/4を3人で分けることになり、1/12づつとなります。
弟の相続分は1/12となり、弟の子2人はそれぞれ1/24づつ相続することになります。
配偶者のいる場合
- 配偶者:3/4
- 兄弟姉妹:1/4
被相続人に配偶者や子ども、子どもを代襲相続する直系卑属もおらず、直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹のみが相続人となります。
この場合相続分は、遺産すべてを兄弟姉妹で頭割りすることになり、代襲相続する甥・姪の相続分は、親の相続分を頭割りすることになります。
なお、兄弟姉妹には、遺留分がないため、甥・姪にも遺留分はありません。
甥・姪に相続財産として渡す方法です。したがって、遺留分の対象にもなり、他の相続人の遺留分を侵害しないように相続させる必要があります。
遺言書で遺産を甥・姪に遺産を遺す場合には、特定財産承継遺言、いわゆる「相続させる遺言」により、遺産分割の方法の指定という方式で遺産を遺す方法をお勧めします。遺産分割を経ずして当然に甥・姪に遺産を相続させることが可能になるからです。
以下、預貯金を相続させる場合と不動産を相続させる場合の特定財産承継遺言の記載例を挙げておきます。
【例1:預貯金の場合】
第1条
遺言者は、遺言者の有する次に預貯金を、遺言者の甥(姪)○○○○(生年月日)に相続させる。 (1) ○○銀行(○○支店)口座番号1234567の普通預金全部 (2) ゆうちょ銀行の通常貯金(記号123番号4567)全部 |
【例2:不動産の場合】
第1条
遺言者は、遺言者の有する次に不動産を、遺言者の甥(姪)○○○○(生年月日)に相続させる。 (1) 自宅建物 所 在 ○○市○○町○丁目 家屋番号 1番1 種 類 居宅 構 造 鉄筋コンクリート造屋根2階建 床面積 1階 76.54平方メートル 2階 43.21平方メートル (2) 敷地 所 在 ○○市○○町○丁目 地 番 1番2 地 目 宅地 地 積 ○○○.○○平方メートル |
甥・姪が相続人ではなく、遺産を遺したい場合には、以下の方法があります。
以下検討します。
なお、これらの方法は、甥・姪が相続人であっても採用することが可能です。
遺贈とは、遺言者が遺言書に記載することで、財産の全部又は一部を特定の人に譲渡することを指します。遺贈は、遺贈者の一方的な意思表示のみで可能なため、
ただし、甥・姪に対し、遺贈する場合には、決められた方式に則って遺言書を作成しなければなりません。また、遺贈は遺留分の対象となるため、十分に配慮した遺言書を作成する必要があります。
甥・姪に遺贈する際の遺言書への記載例が以下になります。
【例3:遺言書への遺贈の記載例】
第1条
遺言者は、遺言者の有する次に不動産を、遺言者の甥(姪)○○○○(生年月日)に遺贈する。 (1) 自宅建物 所 在 ○○市○○町○丁目 家屋番号 1番1 種 類 居宅 構 造 鉄筋コンクリート造屋根2階建 床面積 1階 76.54平方メートル 2階 43.21平方メートル (2) 敷地 所 在 ○○市○○町○丁目 地 番 1番2 地 目 宅地 地 積 ○○○.○○平方メートル |
贈与には、生前贈与と死因贈与の2つがあります。いずれも、贈与する側(贈与者)と贈与を受ける側(受贈者)との契約が必要ですが、贈与者と受贈者が合意する意思表示を示せば契約は成立します。
一方、甥や姪が未成年者であれば、親権者の同意がなければ契約をすることができません(民法5条1項本文)。ただし、未成年者であっても、贈与を受けるだけであれば、親権者の同意を得る必要はありません(同法同条同項但書)。
しかし、贈与財産の額によっては贈与税の申告をしなければならず、未成年者が申告する際にも親権者の同意が必要になり、「単に贈与を受ける」だけの行為とはなりません。このことからも、親権者の同意を得ておくに越したことはないことがお分かりいただけると思います。
また、口頭での契約では後々トラブルになる可能性があり、税務調査で贈与を証明するためにも贈与契約が必要となるため、契約書の作成が推奨されます。
死因贈与の契約書サンプルは、次の通りです。
また、他の相続人の遺留分を侵害しないように、贈与対象を調整する必要があります。
【例4:贈与契約書の記載例】
贈与契約書 贈与者(被相続人:以下「甲」という。)と受贈者(甥・姪:以下「乙」という。)は、下記のとおり死因贈与契約を締結する。 第1条 甲は、自己の財産のすべてを乙に贈与することを約し、乙はこれを受諾した(以下「本件贈与」という。)。 第2条 本件贈与は甲の死亡を停止条件として効力を生じ、かつ贈与物件の所有権は当然乙に移転する。 以下【略】 |
生命保険金は、相続財産ではありません。被相続人となる叔父・叔母が甥・姪を保険金受取人として指定しておけば、基本的には他の相続人の遺留分を侵害せずして甥・姪に相続財産相当の生命保険金を渡すことができるのです。
ただし、いくら受取人固有の財産とは言え、相続財産の総額と生命保険金の総額とを比較して、生命保険金の額が明らかに過大である場合には、相続財産とみなされてしまい、遺留分侵害額請求の対象となってしまいますので、ご留意ください。
民事信託は、財産を有する委託者が、生活費や介護に必要な資金を捻出するために財産を管理運用といった特定の目的のもと、当該財産の管理・運用・処分できる権限を付与する旨の契約を受託者と結び、受益者が信託財産からの利益を享受する仕組みです。
民事信託は、営利目的ではなく信託報酬の発生しない信託で、家族などの信頼できる方を受託者とする家族信託が代表例です。
家族信託では、受益者と契約する必要はなく、原則として未成年であっても受益者となることができ、甥や姪が未成年者であっても、複数人いても家族信託の設定は可能です。
一方で、生前にご自分が信頼できる方を受託者として信託契約を結ぶ必要があり、弁護士など家族信託に詳しい専門家への相談が必要になるでしょう。
ただし、弁護士などの専門家を受託者にすることはできません。
以上のとおり、甥・姪に自分の遺産を遺すためには、複雑な相続関係を把握・判断しなければならず、弁護士等の専門家の判断を要します。
また相続について、又は遺言書については法律上の要件や制約が少なからず存在することから、弁護士等の専門家の助言を受けることをお勧めします。