正しい遺言の書き方|自筆証書遺言の要件と書き方の5つのポイント
この記事では、有効な自筆証書遺言の書き方と、遺言を書く上で重要なポイントを解説します。記入例(サンプル)や、なぜその…[続きを読む]
被相続人の死後への思いが託された「遺言書」。
遺言書は1通とは限りません。2通以上出てくることもあります。
本記事では、複数の遺言書が見つかった場合に、どれを有効とすればいいのか解説します。
目次
そもそも、遺言書を複数作成するなんて有効なのか、という問題があります。
結論からいって、遺言書を複数作成すること自体は可能です。
ただ、複数の遺言書で、内容がそれぞれ微妙に矛盾する可能性もありますよね。
そういった場合はどうすればよいのでしょうか。
A.内容の違う遺言書が2通以上出てきた場合は、新しい日付の遺言書の文言が優先されます。
抵触する部分については、新しい遺言書が古い遺言書の内容を撤回したものとみなされます。
ただし、ここで誤解しやすいポイントがあります。
古い日付の遺言書であっても、最新の遺言書に内容が抵触していない部分については有効ということです。
例えば、最新の遺言に「不動産Aについては長男○○△△に相続させる」という記載があり、古い遺言に「B銀行の預金については次男○○□□に相続させる」という記載があった場合、そのどちらもが有効です。この2つは両立する内容だからです。
他方、最新の遺言は先程のとおりで、古い遺言に「不動産Aについては妻○○◇◇に相続させる」という記載があった場合、古い遺言の当該部分は原則として無効です。
不動産Aは1つしかなく、両者は矛盾抵触する内容だからです。
繰り返しになりますが、遺言書は最新の日付のものが最優先です。
公正証書遺言は作成するのに公証人の同席が必要となるなど、特に厳格なので、一見無効にはなりにくそうですが、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言、それぞれ遺言書の種類による優先はありません。
遺言書が複数ある場合、もしくはこれから作成しようとしている場合の注意点を説明します。
そもそも遺言書の方式が誤っている等、不備がある場合は無効なので、まずは正しい書き方に則っているのかチェックします。
遺言書は、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言と3種類ありますが、それぞれ作成方法が厳密に法律で定められているのです。
「こっちの遺言書ではこう書いてあるけど、こっちの遺言書にはこう書いてある…。」
複数の遺言書がある場合、解釈が微妙になるケースも多いです。
曖昧な文言などは、素人の方だけで無理に解釈してはいけません。
そもそも遺言は、遺言者の意思を尊重する制度なので、遺言書に記載された内容だけでなく、諸事情を総合考慮したうえで、遺言者の真意を明らかにしなくてはなりません。
この点を明らかにした最高裁判例は、次のように述べています。
そして裁判例では、2通の遺言書が作成され、その文言が明確でないケースでも、この判断方法が採用されています(東京高裁平成14年8月29日判決)。
このような判断は、相続をめぐる法律と過去の裁判例に精通した法律家であって、初めてなし得ることです。
一般の方だけでの判断は、遺言書の内容をめぐって話がもつれたり、あるいは親族間で発言力のある人の都合でいいように解釈されてしまったりするおそれがあります。
プロである弁護士に相談するようにしましょう。
また、いくら複数の遺言書が有効とはいっても、できるだけ相続人の混乱を防ぐためには、古いものは破棄し、統一したほうがよいです。
たくさん作っても、全て発見してもらえるとは限りませんし、紛失・偽造などのリスクが上がります。
もし、1度遺言書を作成した後に変更や追加をしたい内容が出てきたら、新しく作り直すか、法律で決められた方法に従って訂正します。
【関連記事】遺言書種類別に解説|遺言書の訂正方法は法律で決まっている!
本記事の内容をまとめます。
方式が正しければ、遺言書が2通以上あっても、それぞれの内容が抵触しない限り全て有効になります。
もしも複数の遺言書の内容が抵触する場合は、最も新しい日付の遺言書に書かれていることが有効です。
あくまで判断の基準は「日付」であり、種類は関係ありません。
ただ、遺言書は複数あると、相続人の混乱・トラブルを招きますから、被相続人となられる方はできるだけ一つに統一することを心がけましょう。
一方、すでに複数の遺言書がのこされていて、それを発見したという相続人の方は、相続について少しでも疑問のある場合は気軽に弁護士に相談してみましょう。