【図解】法定相続人の範囲と相続分|相続できる人が一目で分かる
親族の中で相続人になれる範囲や優先順位、その人がもらえる相続分は民法で決まっています。「結局誰がどれくらい相続できる…[続きを読む]
近年、子供を連れての再婚は珍しくありません。
しかし、
「実の子同然だけど、血のつながりはないから、遺産を相続させてあげられないのでは?」
と心配されている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、再婚相手の連れ子は、遺産を相続できるのかについて解説していきます。
目次
結論から申し上げて、連れ子はそのままでは相続できません。
再婚相手の連れ子は「生物的にも、法律的にも血縁関係が認められないから」です。
ただし、連れ子に財産を承継させる主な方法が2つあります。
この点については後述します。
連れ子に相続権がないとすると、誰に相続権があるのでしょうか?
民法で相続人として定められているのは、
「配偶者」および「法律上の血縁関係が認められる者」です。
なお、後者の「法律上の血縁関係が認められる者」とは特に、子・直系尊属(親や祖父など)・兄弟姉妹のことです。
では、どうすれば連れ子に財産を承継させることができるのでしょうか?
連れ子に財産を承継させる2つの主な方法のうちの1つめは養子縁組です。
養子縁組は「他人の子供に対して、法律上、実の子供としての資格を与える」手続きです。
さきほど、連れ子に相続権がないのは、「連れ子は生物的にも、法律的にも血縁関係が認められないから」だと述べました。
このうち、法律的な血縁関係を作り出してあげるのが「養子縁組」です。
養子縁組には、普通養子と特別養子の2種類があり、それぞれ条件や手続が異なります。
普通養子は、養親と養子が合意し、その届出をすることで養子縁組が成立します(民法799条、739条)。
もし養子が未成年者であっても、連れ子を普通養子に迎える場合は家庭裁判所の許可は必要ありません(※)。
※通常は、未成年者を普通養子にする場合、家庭裁判所の許可が必要です。赤の他人を養子にすると、虐待等の危険性が高まると考えられてきたためです。いっぽう、連れ子を養子にとる場合は、実親がそばにいる(赤の他人ではない)ので、許可はいりません。
なお、養子が15歳未満のときは、本人ではなく法定代理人である親権者が縁組の承諾をすることになります(797条1項)。
特別養子は、虐待・遺棄など「実の両親には養育を任せられない特別な事情」がある場合で、「特別養子縁組が子供の利益のために特に必要であると認められること」の両方が認められる場合に、家庭裁判所の審判で養子縁組を成立させる制度です(817条の7)。
連れ子を特別養子にすることは禁止されているわけではありませんが、上記のふたつの条件が認められるケースはほぼありません。
したがって、連れ子を養子とするには、普通養子の方法によることが通常です。
ところで、「連れ子を認知する」という文が散見されるので、解説しておきます。
父親は、お産をする母親とちがい、非嫡出子*が本当に自分の子供であるという確たる証拠を持っていません。
「認知」とは、父親の届出などによって、この血縁関係を正式に証明するための行為です。
そのため、「連れ子を認知する」というのは多くの場合、誤った使い方だといえます。
*非嫡出子…婚姻関係にない男女の間に生まれた子。
さて、2.では養子にも相続権があることをみてきましたが、いったいどのくらい相続することができるのでしょうか。
民法で定められている養子の相続分は、実子と同じです(727条)。
民法上、配偶者:子の相続分は1:1であり、子が複数人いる場合はさらにそれを人数割りします(900条)。養子もこれにのっとります。
相続の際、故人の財産の一部を「相続税」として国に納める必要があります。
いっぽう相続税に含まれず、一定分保障されている(相続人の手元に必ず残してもらえる)部分を「基礎控除」といいます。
「基礎控除」は「3000万円+600万円×相続人の人数」(相続税法15条1項)なので、相続人の人数が増えれば増えるほど、相続税を納めなくてよいことになります。
しかし、それだと、養子を次々にとって、不当に節税しようとする人が出てくるので、相続の場面においてのみ、基礎控除においてカウントできる養子の人数は制限を受けるのが通常です相続税法15条2項)。
ところが、ここで朗報です!
基礎控除においては、配偶者の連れ子で被相続人の養子となった者は、「実子」と取り扱われます。
ゆえに、人数制限を受けることはありません(相続税法15条3項1号)。
連れ子に財産を承継させる主な方法の2つめは「遺贈」です。
遺贈とは、遺言によって財産を他人に無償で与えることです(964条)。
被相続人は遺言によって、誰に何を遺贈するか自由に決めることができるので、連れ子に財産を譲ると有効に記すことができます。
ただし、遺贈については以下のような注意が必要です。
まず、遺贈を受けた人も相続税を払わなくてはなりません(相続税法1条の3第1項)。
また、受遺者が「被相続人の親子または配偶者以外の者」であるとき、受遺者の相続税額が20%加算されます(相続税法18条1項)。
これにより、遺贈を受けた連れ子(養子ではない)は20%増額した相続税を負担しなければならず、しかも養子のような「基礎控除」の恩恵も受けられないので、連れ子への遺贈は、節税の観点からは賢い方法ではないといえましょう。
さらに、遺贈をすると実子など法定相続人から、受遺者である連れ子に対して遺留分侵害額請求がなされ、金銭を支払わなくてはならない場合もあります(民法1046条)。
連れ子はそのままでは相続できませんが、養子縁組で相続が可能ですし、遺贈で財産を承継させることもできます。
ただし、節税の観点からすれば、養子縁組のほうが妥当といえましょう。
連れ子に財産を継がせたいけれど養子縁組の手続きがわからない方や、具体的にどの程度の節税効果があるのか知りたい方、遺言書を作成したいが書き方に不安のある方など、相続関係の専門家である弁護士にぜひご相談されることをおすすめします。